楽園・ゲーム

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第三章 フベルト?

63 親の感覚ってこんな感じなのかなぁ…1/4

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目を瞑ったのか視覚が機能を失ったのかよく判らない。
俺は椅子に座ってフベルトさんとレテーナの話を聞いていたはずなのだが、ふと気付いたら背中と尻から椅子に触れてる触感が消えた様な気がした。
そして少しの間浮遊感を感じたと思ったら、こっちの世界に来る時に案内されたドアがたくさん立っている部屋の中に立っていた。

深く思考をしていた時に思考に全てのリソースを使ってしまい周囲の情報が途絶した様な感覚に襲われる事がある。
そして何かの拍子に目に見えている物や聞こえていた音に気付く事があるが、そんな瞬間の感覚に襲われた気がした。

「や~んキヨシぃ~♡あれちょうだい♡」

目に見えていた情報が自分の脳みそに届くのが少し遅いって感じだろうか?
それか、見えている情報は脳に届いているのだがそれを理解するまでに少しタイムラグがあるって感じか?
俺から2mほど離れた所にテラスちゃんが静かに立っていて、その少し後ろの辺りに浮かんでいたメルが俺と視線が合ったと同時に近づいてきておねだりを始めた。

「あっ、メル、久しぶり。」「メルクリウス?」
俺とテラスちゃんの声がほぼ同時に聞こえてきたけど2人の声の温度差がひどかった。
俺の肩に座っておねだりするメルがテラスちゃんの声で空中に直立不動の姿になりそのまま俺からゆっくり距離とってテラスちゃんの後ろの辺りの初期位置に戻った。

「あぁ、フベルトも来てたのか。…ってその人誰?」
「あぁ。俺はあの人に会った事は無いが、もしかしたら…レテーナ様では?」
左肩に乗っていたメルが戻って行く姿を見ながら右側に視線を向けるとフベルトさんが居たのに気付いて話しかけたのだが、よく見たらフベルトさんの後ろにテラスちゃんみたいなトーガ風の服を着た背中にそこそこ大きな羽根を持った人が立っていた。
顔の感じは欧米系でロングな髪の色が栗色で少し柔らかくウェーブしてる。
天使っぽいイメージか?

それにしても…自分の体のどこかに変な感じに遅延が発生してる気がしてちょっと嫌な気がする。

「お久しぶりですねきよし、フベルト。」
慈母の微笑みを浮かべて今までの事を無かったかの様に話を始めるテラスちゃん。
「お久しぶりにございますテラス様。」
俺の横で片ひざを突いて頭を下げるフベルトさん。

これって俺も同じ様にした方が良いのかなぁ…

「フベルト、ここではそんなに硬くならずに居ても良いわ。」
「了解致しました。」
テラスちゃんに言われるまま立ち上がり腰の後ろの辺りで腕を組み軍人の待機状態みたいな姿で微動だにしなくなったフベルトさんだが…
俺の中では、大人指数が『フベルトさん>>>テラスちゃん』な訳なんだが…
でもフベルトさんの中ではテラスちゃんってすっごく上の人?それこそ神様みたいな扱いになってそうなんだが…

この温度差…すごくやり辛いなぁ。

「フベルト、あなたはこの世界の禁忌の理に触れたそうですね、残念です。」
とても残念そうな顔で腕を組みこめかみの辺りをツンツンしてるテラスちゃんなのだが…
「この様な状態を放置する事は…その…出来ない……ので…………」
なんでこんな張り詰めた空気の中、俺の顔をチラチラ見ながら何かアイコンタクトでも送ってそうな感じに何度もウインクしてるの?

「キヨシ、インベントリを開いてみて。」
何か焦りだしたテラスちゃんがフベルトさんの俺から反対側に少し離れた所に立って目を閉じていた羽根女性に視線を向けるとその女性がツツーと床の上を滑る様に移動してきて俺の耳元でそっと声をかけてきた。
声の感じがなんとなくレテーナだった♪

それにしてもさぁ、インベントリとか急に言われても…ここってゲームかよ。
…あっ、そう言えばこの世界ってゲームか。
テラスちゃんの大人になる為の勉強兼ゲームの中だったね。

大人になる為の勉強♡…………コホン。
まぁ、今はそんな事を考えてる場合じゃないな♡

とりあえず自問自答でスッキリしつつ自分の中でインベントリに対応してそうな部分を開くとしたらあの脳内収納だと思ったのでそれを開いてみた。
そしたら目の前にいきなりいっぱい文字が広がった。

『なんで気付かないの?!清!!ちょっとぉ!!!』
『えっ?マジ?ちょっ…このままだとまずいんだけど…』
『ねぇ、清、あんたまさかマジで気付いてないの???』
『チョッ…あっ…そう言えば清の種族って心話って使えない奴らだ…もうっ!!』
『………これで聞こえてるはず。ねぇ清、早く止めて。台本は収納の中に入れてたでしょ?早くそのとおりにやって。』
『………あれっ?…えっ?…ちょっと??本当に聞こえないの??マジ???』
『キヨシ達って音が聞こえてるはず…あっ!…うっそ…可聴域がこんだけなの?!なんてポンコ…コホン』
『……………………もう大丈夫だよね?これなら絶対に伝わる。それにしても…あぁ、そっか。レテーナ、ちょっと、清に伝えてちょうだい。』
『畏まりましたテラス様』

…どんだけ焦ってるんだよ。
…って言うかこいつ俺の事ポンコツって言ったか?
…このまま無視してやったら面白くなりそうだなぁ~♡
『絶対やめて!!早く台本どおりやってよ!!』
おっと。

そう言えばテラスちゃんもレテーナもメルも俺の心を読めるんだったか。
でも台本…

とりあえず脳内収納を意識したらテラスちゃんとレテーナの会話チャットの上半分が消えて新しい文字列だけが10行ぐらい見えてる状態で収納が見えた。

そして一番下の所にそれらしき項目が増えていた。

○ 軽自動車┬車体…
      ├積載物…
      └その他…
○ 服(装備品一覧)
○ スマホ
○ テラス様のフベルト救済ストーリー♡


…これ読むの?
『まだ読んでないのが信じられない…あんたなんで読んでないのよ。』
イヤだって、俺の収納って階層構造に変わってたからさぁ、ジェシカとあれこれやった後で階層構造を開いた状態で色々組み直ししてたから一番下の『テラス様のフベルト救済ストーリー♡』とか今初めて見たし…
『まぁそれでもまだ間に合うからすぐに読んで!!』

なんだかすごく焦ってる感じのテラスちゃんのチャット文字…文字でなぜ焦ってる感じが伝わって来るのかはイマイチ理解不能なんだが、それと一緒に俺の横で顔色をなくしてるフベルトさんの為と思って重い腰を上げつつ『テラス様のフベルト救済ストーリー♡』を選択してみたんだが、いきなり前の前にとある映画のオープニングみたいな感じにあの音楽と一緒に文字が現れた。

ぴやぁ~
じゃ~んじゃがじゃじゃ~ん♪じゃがじゃがじゃがじゃじゃじゃ~
『A Long time ago in a galaxy far, far away...』
…ここって銀河系だったの?

『っていうかぁ!!あんたなんでそんなどうでもいい所をじっくり見てるの?!さっさと全部読みなさいよ!!!なんでこんなに時間かけて見てるの?!?!そこは大事な所じゃないでしょ?!?!?!』

んっ?

でも俺の頭の中には、とある銀河を舞台にした戦争というか親子喧嘩?『フォ~っす?』とかって不思議な力を使って戦う映画のオープニングテロップっぽい感じに文字が奥の方から流れてくるからそれを目で追うしかないのだが?

『あっ…もしかしたらだけど……清って多重演算とか平行思考とかって出来ない感じ?』
そもそもパソコン以外で多重演算とか出来る事を初めて知ったって感じ?

『あっ…そう…でも清達以外の連中ってけっこう普通に脳内に演算領域をいくつも持ってたりするんだけど…えっ?じゃぁもう間に合わないじゃない…』
あっ、テラスちゃんがなんとなく泣きそう?

「こうなったら…しょうがないわね、アブソリュート・ゼロ・フベルト!」
テラスちゃんが声を出して何か呪文っぽい事を言ったと同時にいままで被っていた神秘的な雰囲気をぺいっと放り捨てた。
「ねぇ清?あんたもう少しさぁ、私の事を神様みたいに扱っても良いんじゃないの?なんであんなに私の扱いが雑なの??」
「そうですよキヨシ、テラス様は下々の者達に侮られてはやって行けないのです。もう少しだけテラス様に対する態度を改めて下さい。」
「あっという間に重たい猫の被り物を捨ててるお前らに言われたくない所ではあるが、とりあえずお前はレテーナって事でいいの?」
「そうよ、この場所でのレテーナの姿がこれ。」
「挨拶は何度もしてますが一応この姿でお会いするのは初めてでしたね。キヨシ。」
…ブロンドヘアーな欧米女性が胸の谷間とか見せてくれながらお辞儀してる姿ってすごくエロいよね?
「そう?」
「そうですか?」
俺が何も言ってないのにテラスちゃんとレテーナ(天使風)が2人で胸元の布を引っ張って見せ合いっこしてる♡
「そうだったね。お前らって俺の考えてる事、普通に聞こえてたんだったね。悪かったからそんなに胸元広げて見せ合いっことかやめて。」
「テラス様~もういいよね?キ~ヨ~シ~♡ちょうだい♡」
2人の雰囲気が一気に変わった事を察知したメルが、テラスちゃんに確認してからではあったが速攻で俺の肩まで飛んできておねだり再開した。
「あー…ちょっと待ってメル。チョコは確かスーツの…」
脳内収納からスーツの上着だけ引っ張り出してポケットに入ったままの状態に戻ってる口の中だけで溶けるチョコレートをメルに剥いて渡した。
「やぁ~~ん♡これ大好き~~♡」
顔サイズのチョコレートの塊を口いっぱいに頬張ってもごもご口を動かしてるメルを見てなんとなく緊張していた体が解れてきた気がした。

「なぁテラスちゃん、フベルトってなんとなく固まってるみたいなんだけど大丈夫なのか?」
俺の横で動かなくなったフベルトさんを指差しつつ聞いてみた。
髪とかもまったく動かない感じなので、ちょっと近づき難い感じがある。

「あっ、フベルトは一応時間を止めておいたから清は触らない様にしておいてね。もし触れると同じ状態になるからね。」
「そういう事は最初に言っておいてくれな。」
もう少しで触るところだったし。

「さぁテラス様、キヨシ、こんな所で立ち話もなんですから移動しましょう。」
笑顔を見せながらレテーナが言ってきた。

そして、確かにレテーナの言う通りだったので、俺達は一先ず前回ここに来た時に話をした部屋に移動する事になった。
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