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第四章 死んだ原因?

88 フベルト救済ストーリー完結1/3

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俺は、少しの間床しかない村長宅…俺の家になる予定の玄関ロビーで正座させられて説教された。
そして俺の目には今太陽が仰角…25度ぐらいかなぁ…山の稜線から少し上の辺りに見える。
正座させられている方向がたぶん東側なんだろうな。

とっても眩しい。

「キヨシは聞いてるの?!まったく…それにニナもだよ?なんで夜中に戻ってきてキヨシの寝床に潜り込んだりするのよ。私もココちゃんもジェシカも昨日はわざわざキヨシを一人で寝させてあげる為に別の場所で寝たって言うのに!」
「あれっ?なぁ、おふリンは俺と一緒に居たかったから昨日あっちの仮眠場所に居たって言ってたよな?」
「えっ?…あぁ…うん。そうだよ?」
俺がソフィーに説教されている間にも周囲ではいろんな奴が勝手に話をしていた。
ちなみにジェシカは俺の尻尾を握ったまま俺の傍に座ってるんだけど…さっきのマルセル君とジェシカの受け答えは俺にはなんとなくだが嘘を言ってるように聞こえた。

「だって昨日夜中にキヨシがタイヘンだったんだもん♡だから奥さんのニナが体を張ってキヨシを安心させるのはとーぜんなんだよ?他の人に任せたらだめな事だか…ふあぁ~…あっふぅ…だもん?」
ニナはジェシカの反対側に座って俺の腕を胸元に抱いて少し眠そうな顔をしながら頬をスリスリしてる。

「ねぇソフィーさ~ん、そろそろバイオ・ギガノトサウルスのステーキが焼きあがりますからこちらへ来てお手伝いして下さいな~。」
「…キヨシ?まだ話は終わってないんだからね?ご飯の後でもう一回話をするから忘れたらダメだよ?」
「ジェシカちゃんもニナ様もこっちに来て手伝って下さい!」
少し遠くから声をかけてきた…確かユージアの奥さんの…あぁサリーナさんだ、彼女がタマーラちゃんの焼いてる肉を見ながらニナとソフィーとジェシカを呼んでくれたおかげで、なんとか正座説教状態から解放された俺だった。

少し痺れた足を引き摺りつつ立ち上がって床から降り、振り返って見ると少し遠くに真っ黒い筒の様な何かが空の上遥かな高さまで続いているのが見える。
上の先端部分は霞んで見えない。
そして下の部分は森の少し奥の辺りに下りて、筒の中は何も見えない。

これは俺の知ってる皆既日食ではないな。

俺の知識にある皆既日食とは、太陽と月が観察者と一直線に並ぶ状態でしか発生しない現象なのだが…たぶんテラスちゃんが作った皆既日食エリアって言うのは、その中に入ると太陽の光が一切届かないって感じの筒状の場所が作られているらしい。

台本でもテラスちゃんとの会話でもそうだったのだが、特に皆既日食という言葉を使う時に何も詳しく説明してなかった状態で会話が滞りなく進んでいたので、俺は今日の昼ぐらいまで太陽がまったく出ない暗闇状態になっていると思っていたのだが、どうもテラスちゃんの認識と俺の認識には大きな違いが有る様だ。

昨日テラスちゃんが『これからフベルト村の太陽を隠します』って言って何か呪文と強い光を発生させた時に期待しつつ太陽を視界に入れて待っていた俺だったのだが、いつまで経っても太陽が陰り始めなかった。
そもそも俺はテラスちゃんが星の動きを変えたりする様なトンデモ魔法を使うと思っていたので、『日食が始まるまでに少し時間がかかるのかな?』程度に思っていたのだが、フベルトさんと一緒に来ていた戦士風な姿の連中の内の誰かが言ったらしき『おい…あれ…』って震える声が聞こえてきて、声の聞こえてきた方に振り向いたら黒い円筒状の何かを発見したって訳なんだが…

この世界って前世の日本と違って、PM2.5もほとんど飛んで来てない感じだし、車とか工場の排気ガスで遠くが霞んで見えると言った事も無いから、あの真っ黒い筒は相当遠くから見えているはずなんだ。

何か変なのが集まって来なければ良いけどなぁ…

少しの間フベルト村の在りそうな辺りを見ていた俺だったが、ニナが準備が出来たと呼んでくれたのでそちらに行って朝食を食べる事にした。

「思ったよりも長屋ができてるな。」
「あぁ、俺らは夜中作業をしていたからな。それにあいつ…マスター君って言ったか?あいつがかなり使えるからたぶん午前中の内に俺達の長屋は完成するはずだ。」
ヴォルトーがいつも通り萎びた浅漬けらしき物を大量に口に運びながら答えてくれた。
「そう言えばココちゃんさぁ、あのマスター君ってソーラー充電で動いてるって昨日言ってたと思うんだけど、夜中動いても大丈夫ってさすがに変じゃない?」
充電タイプのツールってあっという間に動かなくなるよね?
「そうですか?でも昨日昼頃から夕方までずっと日に当たってましたから1日程度は普通であれば動けると思いますけど?」
ココちゃんは俺の席から少し離れた場所に座って、3cm位の厚さのステーキ肉を優雅にカトラリーを使って食べてる。
食器が木製の皿とかなので若干ちぐはぐしてる感じがあるが、彼女のテーブルマナー自体は、お呼ばれしてドレスコードとかがある様なお高いレストランに行ったとしても問題ないレベルだったりする。
そんな優雅さを感じさせる食事姿が更に異質感を大きくさせていると思うのだが、それ以前にその他の一緒に食事を摂っている全員が木製のフォークとスプーンを使って食べている所で金属製のマイカトラリーを出してくる辺り、彼女はなかなかの空気読まない感を発揮していた。
食べている場所が野っ原じゃなければ恥ずかしい思いをしていたのは俺達だったかもしれないな。

「50年のテクノロジーの差なのかねぇ。」
視線を長屋の方に向けると、今現在もフベルト村からお手伝いに来ている男達に混ざってマスター君が『チュイィーン』みたいなドリルみたいな音とか『キュゥ~~ガガガガガガガッ』って感じのインパクトドライバーっぽい音とかをさせている姿が見える。

「そうそうキヨシ、あのバイオ・ギガノトサウルスの骨とか腱とか他にも色々の素材って勝手に使っても良いのか?」
ナイフ代わりに自分のインベントリから出したBosc○製プロフェッショナル・カッターを使って肉を食べやすいサイズに切っていたら、周囲の女性達の皿がそっと俺の前に寄せられていたので黙々と食べやすいサイズに切って戻してといった作業をしていたらユージアが聞いてきた。
「一応あの恐竜に関しては俺の好きにして良いって了承を得てるから必要なら使っても良いけど…」
「けど?」
女性達の肉を切り終えて自分の肉を食べ始めた俺に手を出して来る男3人。
ちなみにマルセル君はジェシカの横で自分のマイナイフを使って寂しそうに肉を切って食べていた。
「昨日のランフォクスって言ったか?あれもなんだが、どこにどんな感じに素材を使って最後にどの程度の素材が手元に残ったかとかの報告書って用意できる?」
とりあえず話をしていたついでにユージアにカッターを渡したらヴォルトーとユッカーが自分の皿をユージアの前にそっと寄せていた。
「報告書かぁ…一応ヴォルトーの所に木札に書いたのを集めてるけど…」
「そこらの報告書をまとめるのはまだ先になるぞ。今は家を作るのにわしも走り回っとるから手が取れん。」
ユージアがヴォルトーを見るとそこからヴォルトーが答えてくれた。

なんとなくだが、レテーナの獲ってきてくれた物を扱うヴォルトー達のやり方がどんぶり勘定みたいな感じがして…少しばかり着服とかをだれでも出来てしまう状態を許している様に見えてしまうのは、日本の会社員としての認識故なんだろうか?
この辺りではここまでガバガバな状態で物を扱うのって普通なのかなぁ…

「キヨシ様、もしアレでしたら私の方で資材管理をしておきましょうか?」
少しの間考えながら食べていた俺にココちゃんが聞いてきた。
「そんな仕事とかさせても良いのか?」
「私のメモリー内にはご主人様の体調管理に役立つ様なデータベースが用意されています。今の所キヨシ様の管理に使っているメモリー占有率は0.12%程度ですので特に問題ありませんよ?」
どこから持ってきたのか分からないが、ココちゃん布ナプキンを使って口元を拭いて食事をそろそろ終えそうな感じ。
「じゃぁそこらをお願いしても良いかな?」
「はい。では…そう言えばキヨシ様は情報端末…ずいぶんと旧式ではありますがお持ちと伺いましたがそちらをお貸しいただけますか?」
もしかしたらソフィーから聞いたのかな?
「あぁ、食べたら渡すよ。」

とりあえず素材管理及び資産などの情報に関してはココちゃんに管理してもらうので良さそうだな。

食事を終えて少しした頃にヴォルトー達の長屋がひとまず完成した。
内装に関してはこれから個々の趣味で変えていく事になるが、一応生活するのに問題無いレベルの家が出来たらしい。
少しの間休憩時間を取り、作業をしていたフベルト村からのお手伝いに来てる男達に食事が振舞われて村長宅が作られ始めたのだが、皆あまり近づきたがらないおかげで作業の進みがそれまでと比べて遅かった。

「やっぱりレテーナの事を怖がってる奴が多いな。」
「それもだろうが、あの洞窟からまだ少しだけ音が聞こえてくるからな。…俺もできればこれ以上近づくのは勘弁して欲しいし…」
一応フベルト村から資材が届いた時に、最初に洞窟の入り口の所に運んで来た木を使って壁を作りドアを設けておいたのだが、少し静かにしているとまだ音が聞こえるらしく、皆近づきたがらなかった。
一応バイオ・ギガノトサウルスをレテーナが倒してくれているので大丈夫との説明を死体の前でしたのだが、やっぱり音が完全に消えてないのがまずかったらしい。
ちなみに俺の横に立って受け答えをしているのはマルセル君なのだが…彼の髪型は一分の隙も無い完全無欠な辮髪べんぱつになっていた。
元々のアセルマン種族の男の髪型が若干ロングのストレートであった為に、後頭部にだけ残った髪をそのまま下ろしていたら少しばかり見苦しい感じがあったのでジェシカに言って三つ編みにさせたのだが…現れたマルセル君はラーメンマ○80%ぐらいになっていた。

「とりあえず俺の家に関してはゆっくり作っていくしかないか。」
「まぁそうなんだが…なぁキヨシ?お前少しぐらいその、今にも爆笑しそうな顔を止められないのか?」
マルセル君のこめかみ辺りに青筋が浮いてるけどそんな小さな変化も今の俺には劇薬レベルの効果を及ぼすのでやめて欲しい。

とりあえずマルセル君を視界に入れない様にして深呼吸を3回ほどしておいてから振り向いたのだが…
「まぁ…もう好きにしろ。」
「アリガトウマルセル君ブプッ…」
こらえきれない俺は悪くないんじゃないかなぁ(笑)

そんな事をしながら家作りをしていると約束の時間になったらしくフベルト村の住人が来たとの報告が届いた。
そして、俺と共に作業をしてくれているフベルト村からのお手伝い人も全員揃って黒い石の道から少し北に移動した辺りでフベルトさん達を出迎えたのだが…ここに来ている人数を見る限り…フベルト村のほぼ全員がここに揃ってるんじゃないかな?
ざっくり目視でカウントしてみた感じだと、こっちで作業をしてくれてる人達も合わせると…大体130人ぐらい居る。
集団の先頭にフベルトさんとレーヌさん、他にもマリナさんとフィラーネさんが近くを歩いているのが見えた。

さてと、そろそろテラスちゃんが再度降臨してきてフベルト救済ストーリの最終局面が始まる訳だな。


あいつ本当に失敗しないだろうな?
本当になんとなくなんだが、テラスちゃんが何か失敗しそうで不安になった俺だった。
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