楽園・ゲーム

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第四章 死んだ原因?

102 時間を繰り返す1/4

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俺は気付いたら俺の命日の前日の朝に戻っていた。
あの事故が起きたのが確かAM0:00以降だったはずなので、日付が変わっていたと考えるなら命日の2日前だな。
だが、0時を基準に日付を移動させて考えると表現と理解がそこそこめんどくさいので、朝起きてから寝るまでを1日として考える事とする。

『戻る』という言葉のチョイスで間違いないのかイマイチ判断が難しい所ではあるが、繰り返しているという状態からも、『戻る』と言う言葉を使って表現するのは間違いではないのだろう。
でも、俺が死ぬ日の朝方に戻って来た時の1日に起きた事は俺の知っている過去のソレとはまったく違っていた。
違っているのは当然だよな、俺はその日起きる事をもう経験しているのだから、その日に右往左往しながらやった事の最適解を求めて動く。
その結果、時間効率も最高の状態で動ける。

それらの状況から、まったく同じ時間を繰り返すのであれば『戻ってきた』という表現も間違いではない気がするのだが、この場合は違う経過時間を過ごしたので、『移動してきた』が適切なのかもしれない。

どうでも良い事を考えつつ車を運転していつもの会社に指定されている自分の駐車場に車を停め、時間を見るとAM7:49の表示が見えた。

ここに到着した時間はあまり気にしてなかったので、生前の時間の中でもこの時間だったかどうかは定かではないが、道中特に違和感が無かった事を思うに、たぶん似た様な時間を繰り返しているのだろう。
そう言えば前日の日を…今、俺がなぜこの時間をもう一度繰り返しているのか、理由が分からないのだが、原因として考えられるのは…今の所、圧倒的に可能性が高いのはテラスちゃんの介入ではないかと思う。

でも、なぜこんな事をしてきたのかが分からない。

もしかしたら俺がしてきた事が問題だったのでやり直しをさせられているという事も考えられるが、それはテラスちゃんが介入していた場合の話だ。
可能性としてはテラスちゃん以外、似た様な存在の介入も可能性が無い訳ではないが…そこまで考えるのはさすがに今は無理があるか?

一応テラスちゃんが勉強してる遊んでる?と説明してくれた楽園エデンゲームを作った者が存在しているのが確定しているとしても、テラスちゃんみたいに同じ様に勉強している奴が居るかどうかに関しては、まだ何も言及されていない。
だから居ないとは確定してないが、居る事を前提に考えるとしても、ではそいつの考えてる事を想像するにはまだ何も情報が無いので俺には無理。

とりあえず俺の考える方向としては、テラスちゃんか、もしくは、テラスちゃんの勉強している楽園エデンゲームのシステム的何か、更には楽園エデンゲームを作った奴、この3者の内の誰かからの介入でこの繰り返しの状態がもたらされたとして検討をしてみるしかない訳だ。

「そう言えば…あぁ、この時間にはもうこのメッセージは在るのか…」
運転席側のサンバイザーを開くと、あの時見つけたメッセージがもう存在していた。
と、言う事は、俺が今以降に再度今日以前に戻る可能性があるか、もしくは最初…昨日?明日?考えていた様に記憶に無い状態に、居なかった事にされた俺が戻っていたのか…
でも、自分が自分に影響を与えるのはループする可能性があってなんだか怖いよなぁ…
影響を与えるようなことをした結果俺の人生が分岐する…

んっ?それは…あまり関係ないのか?

そもそもあのメッセージを残した俺…俺らしき奴は間違い無く俺の記憶にある様な事をしてきてるはず。
少なくともテラスちゃんに楽園エデンゲームに召喚されて時間を戻ると言う行為をした奴のはず…
これもテラスちゃんかもしくはそれに近い奴の仕業で誘導されているとかの可能性の話をしだすと、収集が着かなくなるのでここでは無視するしかないのだが、このメッセージを残した奴の分岐先は俺の居る今の時間からは違う場所に向かって行ったと思われるが、そこを想像しても今後会えるかどうかはまったく分からない…

もし叶うならばこのメッセージを残した奴と話をしてみたかったのだが…

っと、そろそろ出社時間か。
俺は車のエンジンを止め、音楽を止めてからスマホの端子を外してスーツの内ポケットに入れ、荷物を持って歩いて会社に向かった。



…今日は特に何か気になる様な事は無かった。

業務に関しては思い返してみればそんな事をしたなぁって感じの仕事をしただけで、少しばかり効率的に動けた結果、いつもより少し早い時間に退社できたぐらいだろう。
俺のいつもの退社時間は、ぱっと思い出せるのがPM10:00以降なので、それを考慮するならばかなり早い時間と言えそうではあるのだが。

PM6:51

さて、ここからどう動くのが俺の正解だ?
今現在俺の選択肢は幾つかある。

一つはニナ達の元に戻る事を優先する様な選択と、もう一つは俺が生き延びる事を選ぶような選択…又は、それ以外の選択肢として、テラスちゃんの影響下からの脱出ってのも一応ある。
…生き延びる事とそれ以外の選択肢は同じ意味では無い。
死なずにあの世界エデンゲームに戻る事と、死なずにニナ達の事を忘れて生きていく事の違いがあるのだが…まぁでもニナ達の事はほっとけないよなぁ…

俺、完全にニナとソフィーの事…ジェシカの事も、だな、3人とも自分の家族として認識してるみたいだな。
やれやれ…困ったものだ♡

これはもしかしたらだが、あの世界に戻る選択が、テラスちゃん、もしくは今回のループの原因を作った奴の意志に沿った行動になるかもしれないのだが…ニナ達の元に戻る事を優先すると言う事は、今の俺の考えの中ではあの時間に事故で死ぬ事ではないかと…なんとなくではあるが考えていたりする。
そしてあの事故で死ななければまたもう一回ループしてしまうのではないかと思うのだが…さすがにそれは考え過ぎだろうか?

何にしても、今の状態ではまだどちらでも死ぬのも死なないのも選べると考えて良いはずなので、今できる事をしてみるのも手だよな。
とりあえず今気になる事…あの後どうなったのかが一番気になるか。
あぁ、それともう1個、俺がつかさちゃんと2人でトイレに入ってした事をあいつが知ってるのかどうかも気になる。
あの時こうなる事が分かっていたならカメラの設置場所を知る事を優先させたのだが、さすがに真実を知るのが怖かったのもあり、とりあえずカメラの事の優先順位を下げた結果、社長と湯島ゆしま部長のやった事の真偽に焦点を向けてしまった俺だが…そこらを確認してみるのもありか?

…あっ、そうだ。

カメラに関してはどうせこのまま明日を過ごせば同じ様につかさちゃんの元に連れて行ってもらえるのだから、その時に注意して楽しんだら良い訳だ♡
ではそれ以外を優先するのも手か…だとすれば、気になるのは二つ。
社長と湯島部長の悪事の確認か、あの後俺が寝てからどうなったのかを想像する為に必要な情報収集か…

…よっし、今日は危険の少ない方を優先してみよう♡
3秒ほどの思考で俺の今日の行動は決まった♡

そして今俺は鉄道とバスを乗り継いであのマンションの近くまで来た♡
「確かこの辺りで霧生きりゅうって名前の病院…あれっ?」
スマホで検索してみたのだが、霧生病院もしくはそれに近い名称の病院が見つからなかった。
「そう言えば病院の名前とか聞いてなかったなぁ…」
俺は検索すれば簡単に病院の場所が見つかると思っていたのだが、完全に当てが外れてしまった。
こうなったらちょっとリスキーではあるが、ここらで知り合いの人の所に凸するしかないよな?

マンションのエントランスに入り込み、インターフォンの所のタッチキーを使って、つかさの使っていた部屋の番号を押してみた♡

…が、反応が無い。
さすがにそこらは黒田が対応してるか。
外に出さない様にしているのだから、インターフォンが繋がらない事はとりあえず想像できていた。
気分的にウキウキ♡していたのは否定できないがな。
と言う訳で、ここでの選択肢としては無理矢理入るとコッソリ入るがあるのだが…俺の身体能力で入れる場所…
自動ドアのガラス程度であれば簡単に割れるが、それをして入ってもセキュリティーがかかって追いかけられて捕まるのが簡単に想像できる。
だとすれば、こっそり入るしかないのだが、問題になるのは部屋の前まで行けたとしてもつかさちゃんに開けてもらえるかどうかだよなぁ…

エントランスの中でインターフォンの所を見ながら考えていたらエレベーターホール側から人が出てきた。
「あっ、霧生さんと三園みそのさん。」
やべっ…そう言えば俺、今現在彼女達の事は知らなかったんだ。
普通に街中で知り合いに会った感じに言ってしまった俺の声は他に誰も居ないエントランスの中ではそこそこ大きく聞こえていたらしく2人はお互いに視線で何か確認しあって俺に近づいて来た。

「もしかしたらどこかでお会いした事がありましたか?」
霧生さんが声をかけてきた。

非常にまずいのだが…

「あっ、あぁ…あっ、いえ、知り合いの人に話を聞いた事が有っただけでして。」
「もしかして黒田さんからこに居る子の事をお聞きになったのですか?」
焦ってつい言い訳を探しながらしゃべっていた俺だったが、思わず言葉にしてしまいそれを耳で聞いて脳内で自分がしゃべった事を理解した時には遅かった。
そう言えば霧生さんと黒田は学生の頃からの知り合いで、つかさちゃんの主治医として仕事をしている。
こんな言い方をすれば当然そっちからの紹介を受けたと彼女は考えるはず。

「あ~…その話はその…一応聞いてますが…ただ、ここの事は絶対に誰にも言うなって厳命されているので、出来ればここに俺が居た事はその…」
「そうなのですか?…確かにあの子の事を考えるならばあまり多くの人に吹聴して良い訳では無いのですけど…その…実は今日私がここに来た事もできれば内密にしておいて欲しいのですけど…どうでしょうか?」
おっ?もしかしたらいい感じに逃げられるかも?
「あっ♡はい♪俺と霧生さんはお互いにこの場所には来てない。と言う事にしましょう♡ではでは~♪」
「ちょっと待ってください。あなたは…失礼しますがお名前をお聞きしても?」
そう言えば俺の名前って自分で霧生さん達には言ってなかったか…って言うかこの場所では自己紹介もまだだったな。
「あぁ、こちらこそ失礼しました。私は佐藤さとう言うものです。」
何も考えずに名刺交換をしてしまった俺は会社戦士としての行動が完全に染み付いてしまってるんだろうなぁ…
ここで証拠になる様な物を渡してどうするんだよ…ハァ~…

「黒田さんの会社のお方なんですね。なるほど…」
何がなるほどなのか気になるが、今は早くここから脱出しなければならない。
この場所で長居をしてしまい、第2第3の霧生さんみたいな人と出会ってしまったら言い訳を考えるのが更に難しくなる。
最悪は黒田にこの場所で会う事だ。ここでもし会ったりしたら、もしかしたらだが俺も湯島部長の傘下に居ると勘違いされかねない。
その結果は『今回運悪く湯島部長がお亡くなりになってしまった結果空いた部長の席が…』の言葉が物語っているだろう。
その、お亡くなりになった方達のリストに俺の名前が並びかねないって訳だ。

「では、ここらでそろそろ失礼し…」「だから少し待ってくださいってば!名刺交換がしたかった訳ではありません!」
俺がこの場からさっさと退散しようと思い振り返って歩き始めようとしたら、霧生さんと三園さんが俺の両手を持って止めた。
「でも普通に交換に応じてくれましたよね?」
「それはお互い様です。確認ですが、インターホンで彼女の部屋を呼び出したりしましたか?」
俺は名刺交換までしてしまったせいで、ここで逃げても証拠を残してしまっているので意味は無いと思い、とりあえず逃げずに向き合い話を聞く事にした。
「一応彼女に会えるかと思いコレで呼び出しはしてみたけど、まったく反応が無かったので帰ろうとしていた所ですが?」
インターホンのパネルを指差しながら答えた。
「そうですか…だとすれば、映像が残るのでそれを消さなければならないので1回上に行きましょう。」
霧生さんはそう言いながら黒田が自動ドアを開けるのに使ったカードと同じ物を胸元の内ポケットから出してエレベーターホールに繋がる自動ドアを開けて俺と三園さんを入れてくれた。
「なんで俺の証拠隠滅に手を貸してくれるのですか?」
彼女にはそんな事をしなければならない様な理由があるのか?
「あなたがここに来た事がばれたら私が今ここに居る事も芋づる式にばれるかもしれません。だから確実な状態にしておかなければならないと思っただけです。」
エレベーターのドアを見ながら俺に視線を向けずに答えてくれた霧生さんだった。

なるほどね、俺と一緒に居たいから理由を探してくれたって訳では無いらしい。

エレベーターに乗って19階まで移動すると、霧生さんは俺が昨日…明日か?つかさに連れてこられる部屋の、隣の部屋のドアを鍵を使って開けて俺を入れてくれた。

部屋の中はつかさちゃんの部屋と大体同じ間取りだが、2ヶ所ほどつかさちゃんの部屋に無かった部屋が存在している様に見える。
霧生さんがその2ヶ所の部屋の片方の部屋に入って行き、俺を呼んだ。
「佐藤さん、こっちに来てください。」

呼ばれたのでそのまま部屋に入るとそこには少し大きなパソコンとモニターが8面壁に並んで設置してあり、少ししてパソコンが起動し、霧生さんが何かのアプリケーションを立ち上げたら、モニター画面がそれぞれ4分割されて部屋の中らしき映像が映った。

その映像の中の一つにリビングでソファーに座って携帯ゲームらしき物を弄っているつかさの姿があり、昨日…明日ね?俺とつかさが痴態の限りを尽くした部屋の全ての場所が映っていたのが確認できた。
「あっ…ベッドルームとトイレの映像もある…」

俺の記憶にあるその映像の場所は俺がモースタイルで舐められつつしてもらった状態で顔がドアップで見える方向の映像と、トイレの中で俺がつかさちゃんにしてもらった行為が100%ばっちり映る角度の映像。

明日、気をつけなければならないな…
俺は気合を入れてカメラの有る場所を頭の中に詰め込む作業に取り掛かった。
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