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可愛い幼馴染
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「ーー玲央、一生のお願い!! 明日の数学の小テスト、本当にヤバそうだから教えて!!」
放課後の教室、帰り支度をしていた俺の元に、隣のクラスから“彼”が迎えにきて。
両手でぎゅっと包み込むように左手を握られて、俺の心臓はギュンッと跳ねた。
透き通るような白い肌、ほんのりと桃色に血色付いた頬、ぱっちりとした二重に長い睫毛。
さらさらとした黒髪は光を反射して天使の輪を作り、形の綺麗な眉は優しく弧を描いている。
この可憐で愛らしい美少女ーー否、美少年は、隣家に住む幼馴染の須川由紀だ。
「ゆ、由紀ッ……お前なぁ、俺が教えなくたってやれば出来るタイプだろ。何でいつも俺に教わりにくるんだよ」
「だって玲央の方が理系科目得意じゃん。教えるの上手だし。ね、お願い!! お礼に英語の課題手伝うから!!」
ぐっと詰め寄られて、甘いミルクのような香りがふわりと香るのに、俺は頭がクラクラしてくる。
そのクリクリとした子犬のような目できゅるんと見つめられると、どうにも断れなくなるのだ。
由紀は、そういう自分の可愛さを自覚していて、わざとあざとく“お願い”してくるからタチが悪い。
……でも、そういう小悪魔でずるいところも、堪らなく好きなのだ。
ーー俺は、もう10年以上……この可愛い幼馴染に密かに恋心を抱いていた。
「わ、分かったッ……教える、教えるから!! 近すぎるって!! パーソナルスペースってもんがあるだろ!!」
嫌な感じにならない程度にパッと手を振り払うと、ぐいっと彼の肩を押し返す。
ちょっと手を握られただけでも心臓が暴れてうるさいのに、これ以上引っ付かれたら、俺はもう自分の恋心を隠し通せる自信がない。
この恋心は、絶対に由紀に知られず墓まで持っていくと決めているのに。
……俺は臆病だった。由紀に告白して、気まずくなって友達でいられなくなるくらいなら、好きな気持ちを押し殺してでも幼馴染のポジションに甘んじていたかったのだ。
「パーソナルスペースぅ~~?? 変なの、子供の頃はお互いの家に泊まって一緒に風呂入ったりしたじゃん。最近の玲央は冷たいな~、寂しいなぁ」
拗ねたように頬を膨らませ、唇を窄ませる由紀。コロコロと変わる表情がまた愛らしくて、目が離せない。
ーーあぁ、好きだ。可愛くて、愛おしくて、堪らない気持ちになる。
そんな自分の心を無理やり押さえ込むようにして、俺はふっと由紀から目を逸らして言った。
「……高校生にもなって、友達同士ででベタベタしてたらおかしいだろ。ほら、準備できたからもう帰るぞ」
数学やるなら俺ん家寄ってけよ、と言いながらカバンを背負って立ち上がる。
由紀は、一瞬傷ついたような、曇った表情を浮かべたように見えたが、すぐにパッと笑顔になって、元気よく頷くのだった。
放課後の教室、帰り支度をしていた俺の元に、隣のクラスから“彼”が迎えにきて。
両手でぎゅっと包み込むように左手を握られて、俺の心臓はギュンッと跳ねた。
透き通るような白い肌、ほんのりと桃色に血色付いた頬、ぱっちりとした二重に長い睫毛。
さらさらとした黒髪は光を反射して天使の輪を作り、形の綺麗な眉は優しく弧を描いている。
この可憐で愛らしい美少女ーー否、美少年は、隣家に住む幼馴染の須川由紀だ。
「ゆ、由紀ッ……お前なぁ、俺が教えなくたってやれば出来るタイプだろ。何でいつも俺に教わりにくるんだよ」
「だって玲央の方が理系科目得意じゃん。教えるの上手だし。ね、お願い!! お礼に英語の課題手伝うから!!」
ぐっと詰め寄られて、甘いミルクのような香りがふわりと香るのに、俺は頭がクラクラしてくる。
そのクリクリとした子犬のような目できゅるんと見つめられると、どうにも断れなくなるのだ。
由紀は、そういう自分の可愛さを自覚していて、わざとあざとく“お願い”してくるからタチが悪い。
……でも、そういう小悪魔でずるいところも、堪らなく好きなのだ。
ーー俺は、もう10年以上……この可愛い幼馴染に密かに恋心を抱いていた。
「わ、分かったッ……教える、教えるから!! 近すぎるって!! パーソナルスペースってもんがあるだろ!!」
嫌な感じにならない程度にパッと手を振り払うと、ぐいっと彼の肩を押し返す。
ちょっと手を握られただけでも心臓が暴れてうるさいのに、これ以上引っ付かれたら、俺はもう自分の恋心を隠し通せる自信がない。
この恋心は、絶対に由紀に知られず墓まで持っていくと決めているのに。
……俺は臆病だった。由紀に告白して、気まずくなって友達でいられなくなるくらいなら、好きな気持ちを押し殺してでも幼馴染のポジションに甘んじていたかったのだ。
「パーソナルスペースぅ~~?? 変なの、子供の頃はお互いの家に泊まって一緒に風呂入ったりしたじゃん。最近の玲央は冷たいな~、寂しいなぁ」
拗ねたように頬を膨らませ、唇を窄ませる由紀。コロコロと変わる表情がまた愛らしくて、目が離せない。
ーーあぁ、好きだ。可愛くて、愛おしくて、堪らない気持ちになる。
そんな自分の心を無理やり押さえ込むようにして、俺はふっと由紀から目を逸らして言った。
「……高校生にもなって、友達同士ででベタベタしてたらおかしいだろ。ほら、準備できたからもう帰るぞ」
数学やるなら俺ん家寄ってけよ、と言いながらカバンを背負って立ち上がる。
由紀は、一瞬傷ついたような、曇った表情を浮かべたように見えたが、すぐにパッと笑顔になって、元気よく頷くのだった。
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