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氾濫する想い
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フランの唇が、俺の唇にふわりと触れる。頬に添えられていた手がゆっくりと滑り落ちるように体の線をなぞり、そのまま背中に回されて。
優しく抱きしめられると、俺は心が震えるような切なさを覚えた。
「悠馬……」
角度を変えて再び唇を重ねられる。フランの全てが、俺に対する恋情を伝えてくる。
俺が父親によってリリーシアと引き合わされ、婚約を結ばれるよりもずっと前から、フランは俺のことを好きでいてくれたのだ。
こんなに一途に俺のことを愛してくれる人が、他にいるだろうか……いや、いないだろう。
(……彼は、王太子だ。俺なんかとじゃなくて、どこかのご令嬢と結婚して後継を作らなければならないのに)
立場を考えれば、俺はフランの思いを拒否しなければいけないのだと、頭では分かっているのに……抱きしめられる心地よさと、口付けの快感を手放すことが出来なかった。
俺をこんなにも求めてくれるフランに、全てを捧げてしまいたい。
フランが妃を娶って、俺に見せてくれるようなふわりとした笑顔をその妃にほとんど奪われて仕舞うのかも知れないと思うと、胸の辺りがつっかえたように苦しくなる。
彼にとって俺以上に特別な人間が出来るなんて、想像したくもない。
この数ヶ月ずっと側にいて、常にフランに一番近い存在でいることが当たり前になっていた俺は、自身のこんな感情に気づくことも出来なかった。
もっと深く触れ合いたい、どこまでも深く……そんな欲望がふつふつと湧いてきて、俺は半ば無意識のうちにフランの身体を抱きしめ返していた。
「ッ……悠馬、んっ……!?」
目を丸く見開いて驚くフランの唇を、今度はこちらから奪う。もっと、と求めるようにフランの衣服の背中側をぎゅっと掴むと、フランの頬が淡く色づいた。
「ーー私も、今気がつきました、自分の気持ちに」
至近距離で見つめあいながら、囁くように告げる。視線の混じり合ったところから熱く溶け出してしまいそうなほど、蕩けて熱の籠もった眼差しだった。
「……フラン様の、特別でいたい……ずっと、お側にいたい。こんな風に触れ合いたいと、心から思っています」
「……ッ、ほ、本当に……?」
まさか告白を受け入れてもらえるとは思っていなかった、と言いたげな半信半疑の表情を浮かべるフランに、俺は自分の頬がどんどん熱くなるのを感じながら、ふっと微笑んで見せた。
「もう一回キスしたら……信じていただけますか?」
ーーーーー
フランと深く抱きしめ合い、唇を触れ合わせる。後頭部に手を添えられ、それと同時に唇の隙間に舌を入れられて、俺は快感に背筋を震わせた。
「ん、む、ふッ……んぅ、……ッ♡♡♡」
熱い口内を舌で蹂躙されると、息がうまく出来なくて、頭がぼうっとする。
敏感な上顎の辺りを舌先でくすぐられると、脳髄が蕩けてしまいそうな程に気持ちよくて。
自分ばかり感じすぎているような気がして、俺はつい目に涙をにじませてしまった。
「あ、ふ、フランさま……俺っ……じゃな、私……♡」
「……ふふ、いいよ”俺”で。そっちの方が自然体の悠馬らしくて好きだな……」
再び唇を塞がれ、深い口付けで快感を与えられる。だんだん力が入らなくなって、フランに身を委ねるように縋り付いていると、やがてベッドの上に仰向けに押し倒され、フランが覆い被さってきた。
ーーギラギラと光る赤い瞳に見下ろされると、全身がゾクゾクして堪らない。
騎士団でトップ2の強さを誇り、力と剣の腕で生きてきたのに……今、口付けだけで気持ちよくなって骨抜きにされ、自分よりもやや細身の男に組み敷かれている。
そんな事実が、余計に俺の興奮を煽っていた。こんな風にされて悦ぶような癖が自分の中にあったなんて、今まで知らなかったのに。
フランが俺の胸元に手を伸ばし、上から一つ、二つとボタンを外していく。
首元を晒すことは初めてではないのに、どうしようもなく恥ずかしくて、俺はつい顔を横に逸らして、しおらしく黙り込んでしまった。
「ねえ悠馬、血、飲ませて……大好きな悠馬の血、いっぱい欲しい……♡」
「ッ……♡」
鎖骨が露わになるくらいまで胸元をはだけさせられて、そのまま首筋に口づけられる。
ちゅ、ちゅ……と音をたててキスされ、舌先でつうっ……となぞられると、くすぐったさに肌が粟立った。
「……じゃあ、噛むよ……」
優しく抱きしめられると、俺は心が震えるような切なさを覚えた。
「悠馬……」
角度を変えて再び唇を重ねられる。フランの全てが、俺に対する恋情を伝えてくる。
俺が父親によってリリーシアと引き合わされ、婚約を結ばれるよりもずっと前から、フランは俺のことを好きでいてくれたのだ。
こんなに一途に俺のことを愛してくれる人が、他にいるだろうか……いや、いないだろう。
(……彼は、王太子だ。俺なんかとじゃなくて、どこかのご令嬢と結婚して後継を作らなければならないのに)
立場を考えれば、俺はフランの思いを拒否しなければいけないのだと、頭では分かっているのに……抱きしめられる心地よさと、口付けの快感を手放すことが出来なかった。
俺をこんなにも求めてくれるフランに、全てを捧げてしまいたい。
フランが妃を娶って、俺に見せてくれるようなふわりとした笑顔をその妃にほとんど奪われて仕舞うのかも知れないと思うと、胸の辺りがつっかえたように苦しくなる。
彼にとって俺以上に特別な人間が出来るなんて、想像したくもない。
この数ヶ月ずっと側にいて、常にフランに一番近い存在でいることが当たり前になっていた俺は、自身のこんな感情に気づくことも出来なかった。
もっと深く触れ合いたい、どこまでも深く……そんな欲望がふつふつと湧いてきて、俺は半ば無意識のうちにフランの身体を抱きしめ返していた。
「ッ……悠馬、んっ……!?」
目を丸く見開いて驚くフランの唇を、今度はこちらから奪う。もっと、と求めるようにフランの衣服の背中側をぎゅっと掴むと、フランの頬が淡く色づいた。
「ーー私も、今気がつきました、自分の気持ちに」
至近距離で見つめあいながら、囁くように告げる。視線の混じり合ったところから熱く溶け出してしまいそうなほど、蕩けて熱の籠もった眼差しだった。
「……フラン様の、特別でいたい……ずっと、お側にいたい。こんな風に触れ合いたいと、心から思っています」
「……ッ、ほ、本当に……?」
まさか告白を受け入れてもらえるとは思っていなかった、と言いたげな半信半疑の表情を浮かべるフランに、俺は自分の頬がどんどん熱くなるのを感じながら、ふっと微笑んで見せた。
「もう一回キスしたら……信じていただけますか?」
ーーーーー
フランと深く抱きしめ合い、唇を触れ合わせる。後頭部に手を添えられ、それと同時に唇の隙間に舌を入れられて、俺は快感に背筋を震わせた。
「ん、む、ふッ……んぅ、……ッ♡♡♡」
熱い口内を舌で蹂躙されると、息がうまく出来なくて、頭がぼうっとする。
敏感な上顎の辺りを舌先でくすぐられると、脳髄が蕩けてしまいそうな程に気持ちよくて。
自分ばかり感じすぎているような気がして、俺はつい目に涙をにじませてしまった。
「あ、ふ、フランさま……俺っ……じゃな、私……♡」
「……ふふ、いいよ”俺”で。そっちの方が自然体の悠馬らしくて好きだな……」
再び唇を塞がれ、深い口付けで快感を与えられる。だんだん力が入らなくなって、フランに身を委ねるように縋り付いていると、やがてベッドの上に仰向けに押し倒され、フランが覆い被さってきた。
ーーギラギラと光る赤い瞳に見下ろされると、全身がゾクゾクして堪らない。
騎士団でトップ2の強さを誇り、力と剣の腕で生きてきたのに……今、口付けだけで気持ちよくなって骨抜きにされ、自分よりもやや細身の男に組み敷かれている。
そんな事実が、余計に俺の興奮を煽っていた。こんな風にされて悦ぶような癖が自分の中にあったなんて、今まで知らなかったのに。
フランが俺の胸元に手を伸ばし、上から一つ、二つとボタンを外していく。
首元を晒すことは初めてではないのに、どうしようもなく恥ずかしくて、俺はつい顔を横に逸らして、しおらしく黙り込んでしまった。
「ねえ悠馬、血、飲ませて……大好きな悠馬の血、いっぱい欲しい……♡」
「ッ……♡」
鎖骨が露わになるくらいまで胸元をはだけさせられて、そのまま首筋に口づけられる。
ちゅ、ちゅ……と音をたててキスされ、舌先でつうっ……となぞられると、くすぐったさに肌が粟立った。
「……じゃあ、噛むよ……」
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