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Ⅰ 健康診断 ⅱ
しおりを挟む五辻に連れられて最初に来たのは、耳鼻科検診。
何人か並んでいるので、わたしも椅子に座り順番を待つ。
が、わたしの身体は早くも震え始めた。
五辻「お嬢様」
傍に立つ五辻が、すかさず声をかけてくる。
五辻「大丈夫ですよ」
背中をさすってくれるけれど、順番が近づくにつれ震えは大きくなるばかり。
「次の方どうぞ」
あっという間に順番がきて、五辻の腕にしがみつき、診察室に入って椅子に座る。
五辻「エトワール寮第3学年、須藤さらです。お願いいたします」
当たり前のように五辻が言い、
「お願いします」
聞こえた声に顔を上げると、女性の先生でほんの少しだけ安心したはずが、
女医「左向いてね」
額のライトを付けた先生は椅子ごとわたしに迫り、
五辻「お嬢様、失礼いたします」
さら「ビクッ!」
後ろから五辻に頭を押さえられ、右耳に冷たい何かを入れられて、
女医「はい、反対ね」
さら「ビクッ!」
今度は左耳も同じように見られ、
女医「最後ね。動かないでね~」
さら「やっ、ん……っ」
また冷たい何かで、今度は鼻の穴を交互に広げながら見られた。
女医「はい、おしまい」
五辻「ありがとうございました」
わたしの頭から手を離した五辻は、
五辻「お嬢様」
右手をわたしの前に、左手をわたしの背中に添えて、
五辻「ありがとうございました」
わたしを立ち上がらせ、先生に再度一礼してから部屋を出た。
五辻「頑張りましたね、お嬢様。次は身体測定です」
次の場所へ向かう廊下で、身体を震わすわたしに五辻が言う。
さら「い、行きたくない……」
言いながらも、五辻の手が背中にあるのでなかなか足を止められず。
身体測定が行われる部屋に着き、
五辻「エトワール寮第3学年、須藤さらです」
また五辻が言って、看護師さんに誘導され、身長、体重、血圧、視力、聴力、肺活量の測定が終わり、
Ns「次は採血ですね。あちらのブースへお願いします」
と、案内される。
さら「い、五辻……」
五辻の腕をギュッとして、足を止めたわたし。
ここまでなんとかクリアしてきたが、採血の恐怖に耐え切れず涙を溢してしまった。
五辻「お嬢様、少し座りましょうか」
ベンチに五辻と腰掛ける。
さら「……グスン、グスッ……」
五辻「大丈夫ですよ。一旦落ち着きましょう」
わたしにハンカチを渡し、
さら「グスッ……ヒック、グスッ……」
五辻「ゆっくり呼吸しましょう。焦らなくて大丈夫ですから」
背中を優しく撫でてくれる五辻。
ここまで頑張らせてはいたが、極度の緊張や恐怖心は身体に障ることを、わたし以上にわかっている。
五辻「順番、変えていただきますか?」
さら「コクッ」
去年の健康診断は、寮を出る前からパニックを起こしたので、五辻が校医に相談し、全ての項目を最後に受診させてもらった。
五辻「その代わり、頑張らないとダメですよ?」
さら「コクッ」
頷いて、五辻に交渉してもらい、わたしは残りの検診を全校生徒の最後に受診することに。
***
さら「グスッ、グスッ、いつつじ……」
五辻「お嬢様、大丈夫です」
Ns「少しチクッとするだけだからね。大きく息吸って~」
さら「すぅ~」
Ns「吐いて~」
さら「ふぅ~」
チクッ……
さら「ビクッ!! ゔっ……」
最後に回ったとはいえ、1学年20人程度の学校なので、少し庭園を歩いたくらいで大した時間稼ぎにはならず。
五辻「手の力抜きましょうか。順調ですからね、すぐ終わります」
Ns「もう終わりますよ~。針抜きますね」
さら「ん"っ……」
五辻「終わりましたよ。よく頑張りました」
採血を終え、いよいよ内科と婦人科検診へ。
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