ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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妊娠

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それからわたしは、





藤堂「血液検査で見た結果だから、正式には産婦人科できちんと診てもらってね。おめでとうも、それからにするから」


ひな「はい……」


神崎「とりあえず明日も休むようにってりさ先生が。今日は点滴が終わったら帰っていいよ。仕事は調整済みだから。身体、大事にね」


ひな「すみません、ありがとうございます……」





と、悠仁さんも早退してくれて、一緒に家に帰った。



そして翌日、多忙な院長業務の合間を縫って、宇髄先生が診てくれることになり、





宇髄「胎嚢、確認できるよ。それに心拍も。まだ僅かにだけど確認できる。生理が不順だから正確には出せないけど、妊娠6週で見ていいと思う。おめでとう、ひなちゃん。五条」





心拍も確認できるということで、わたしの妊娠は確かになった。










***



本当に、お腹にいるんだ。

悠仁さんとの赤ちゃん……。





診察帰り、その足で役所に行って、母子手帳をもらってきた。

宇髄先生にもらったエコー写真を見ながら、そっとお腹に手を当てる。





五条「大丈夫か。疲れただろ」





悠仁さんが隣に座り、





ひな「今は大丈夫です。なんか、まだ気持ちがふわふわしていて。スムーズにできるとは正直思っていなかったので」





実は子どものことは、結婚を決めた時に悠仁さんときちんと話し合っていた。










***



五条「ちゃんと話しておきたい。ひなは、子どもは欲しいか?」


ひな「子ども……」


五条「俺の気持ちから伝えていいか?俺は、ひなとの子どもがいる生活を送れたら嬉しいと思ってる。もちろん、ひなとずっと2人で、ひなを独り占めして生きていくのも悪くないと思ってる。どっちでもいいって適当なこと言うようだけど、本当にどっちの人生も俺は幸せだから。ただ、子どもを持つことを選んだら、産むのはひなだ。それは絶対だから、ひなの気持ちに添いたいけど、ひなはどう考えてる?」


ひな「わたしは……欲しいか欲しくないかで言うと、五条先生との子どもが欲しいです。でも、こんな身体だから、正直産めるのかなとか……育てられるかなって不安もあります」


五条「身体のことは、いろんな先生と相談しながら、いろんなことに気をつけながらになると思うが、決して妊娠出産ができないわけじゃないぞ。子育てのことは、2人で一緒に楽しみたい。俺も初めての育児になるから、ひなにとって100%のサポートをしてあげられないかもしれない。でも、俺はひなと2人で子育てしていきたい」


ひな「五条先生……」


五条「ただ、やっぱり産んで母乳をあげることはひなにしかできないことで、それが何よりも大変だから。ひなに負担をかけることになるけど、ひなはどうだ?」


ひな「それでも、望めるのなら、わたしは五条先生との赤ちゃんを産んで、子どもがいる人生を歩みたいです。ただ、子どもを産むなら1人だけ、30までに産みたいです。自分の身体と仕事のキャリアを考えると、それがベストで、それ以外は現実的に厳しいかなと思います。授かり物なので、思うようにいくかわかりませんが」


五条「そしたら、研修医が終わってひなは26だ。専攻医としても最初は仕事を頑張りたいだろうから、28。ひなが28歳になったら、そこから1年間だけ子どもを作ろう。できてもできなくても1年間。ひなが言ってくれた授かり物というのも、本当に授かり物ならこの1年で俺たちのところに来てくれるだろう。ただ、もし1年でできなくて、お互いにもう少し頑張りたいと思ったら、その時はまた話し合って頑張ってみてもいい。そうしないか?」


ひな「はい。そうします」










***



結局、専攻医になるのが遅れたので、悠仁さんと妊娠を意識した営みをし始めたのも、28になって半年ほど経ってからだったけれど。

29歳になる手前で授かることができて、わたしは本当に幸せ者。





五条「今は大事な時期だから、調子が良くても無理するな。仕事も休んだらいいし、ひなとこの子の身体第一に過ごせ。な?」





悠仁さんがわたしのお腹に手を重ねる。





ひな「仕事はできる限りしたいと思ってるんですけど……」


五条「するなとは言わんが、昨日みたいな日に働くのはダメだ。また倒れてお腹の子に何かあったらどうするんだ」


ひな「ごめんなさい……」


五条「ひなは無理する癖があるから、昔っから、いつまでも直らんそういうのをこれを機に直しなさい」


ひな「昔っからって……。でも、無事に生まれてきて欲しいので、気を付けます。本当」


五条「ん」





悠仁さんの手がお腹から離れ、わたしのおでこにひとつキスをする。





ひな「これから忙しくなりますね。産む病院探さなきゃ」


五条「はぁ?」





ソファーに正しく身を預けた悠仁さんが、また背中を立ててわたしの方に体を捻る。





五条「なに言ってんだ。産むのはうちだろ」


ひな「え?ここで産むんですか?」


五条「なんでそうなる。違う、ノワールだ」


ひな「えっ、ノワールで産まないとダメですか……?」


五条「逆にノワールで産まないつもりだったのか?」


ひな「そりゃ……職場で産むのは、恥ずかしいというか、知ってる人も多いし、なんとなく……違うところがいいというか……」


五条「今さら新しい先生に診てもらうなんて、むしろ抵抗ないのか?宇髄先生なら今まで散々診てもらってきたんだから問題ないだろ」


ひな「ノワールで産むとしたって、宇髄先生は無理じゃないですか。院長ですよ!?」


五条「それは俺が宇髄先生に頼むから」


ひな「いやいや。いくらなんでもそれはダメです。そもそものそもそも、なぜか担当医なだけで宇髄先生は産婦人科じゃないですし、院長なんですよ?申し訳ないとかのレベルじゃないです」


五条「なら、他に良い先生をひなに当ててもらうようにするから。とにかくだ、身体のこともあるんだから、何かあっても対応してもらえるようにノワールで産むのがいい。産むのはひなだけど、これだけは俺のわがまま聞いて欲しい」


ひな「わかりました。けど、やっぱり少し考えさせてください……」










***



そんなことを話していた、その夜。





五条「ひな……」


ひな「うっ………、オェッ……!ぅぅっ……、ハァハァ」





夜ごはんを食べて少しして、今日口に入れたものを全て吐き出してしまうような吐き気に襲われ、本格的につわりが始まった。


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