ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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眠れない夜②

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シュッ、シュッ、シュッ、シュッ……





ひな「んんっ………」





朝はシュッシュッという音で目が覚めた。

まこちゃんが血圧を測ってる。





真菰「ひなちゃん起きた?おはよう。気分悪くない?」


ひな「うん……あれ、もう9時?」


真菰「五条先生が夜発作起きてしんどいだろうからって、目が覚めるまで寝かせてあげてって」





そっか、そうだったんだ。

いつもは8時にごはんが運ばれるのに、五条先生って優しいんだ。

昨日の夜も、すごく優しかったし、すごく安心した。

あの人のことを誰かに話せたのも初めてだった。





……ごはん、ちゃんと食べたいな。





ひな「まこちゃん、おなかすいた」


真菰「え!!ひなちゃん、お腹空いたの!?」





昨日まで食べれないと言っていたのに、突然お腹が空いたなんて言われたからか、まこちゃんはめちゃくちゃ驚いてる。





真菰「ちょっと待ってね!すぐ持って来るね!」





そう言ってまこちゃんは部屋を出ると、すぐにごはんを持って来てくれた。





真菰「おまたせ!ひなちゃん、わたし他の子のところにも行かないといけないの。後でまた来るから、ひとりで食べられる?」


ひな「はい」


真菰「ゆっくり食べていいからね。そしたら、また後でね!」










ひな「いただきます」










パクッ……










パクッ……










ひと口食べるスピードは相変わらずゆっくりだけど、止まることなく食べられる。

それに、昨日先生たちに話したからか、器が小さくなって最初から食べきれそうな量に減らしてくれてた。










パクッ……










パクッ……










パクッ……




















ひな「ふぅ~……」





食べ始めて1時間半。

お粥にスープにすりおろしりんご。

初めて完食できた。





真菰「わぁ!ひなちゃんすごい!全部たべたね!!」





食事を片付けに来たまこちゃんがほめてくれる。

小児科の看護師さんだから大袈裟なんだとわかってても、うれしい気持ちにさせてくれる。





真菰「五条先生にも伝えとくね!」





五条先生……



そういえば、今日は起きるのもごはんも遅かったからかまだ回診に来てなかった。

昨日の夜のことを思い出すと会うのちょっと緊張する。










***



コンコンコン——



五条「……」


ひな「スー……スー……」


五条「……おい」


ひな「スー……スー……」


五条「はぁ……。おーい」


ひな「スー……スー……」


五条「……こらっ!!起きなさい!!」





ビクッ!!





ひな「はいっ……」





しまった……。

お腹いっぱい食べて眠くなって寝たらダメだって思ってたのに、知らない間に寝てた……。





五条「はいじゃない。明るいうちに寝るなって言っただろ?忘れたか?」





はぁ……。

ごはん全部食べたからなんなら今日はほめてもらえるかと思ったのに、結局怒られた……。

優しいだなんて思ったのは撤回しとこう。





ひな「……ごめんなさい」


五条「前開けて。聴診するぞ」





まこちゃんもいないし、五条先生にこれ以上怒られないように、大人しく初めて自分で病衣をめくった。

なぜだか、もう身体が震えない。





五条「……ん。もういいぞ」





首を触って目を見てっていつもの流れが終わって、わたしはさっき怒られたのでしょぼんとしてると、





五条「ご飯、全部食べてえらかった」





ぽんぽん……





と、頭を撫でてくれた。





あれ、またビクッってならなかった。

それに、やっぱり優しい……。

そうやって頭ぽんぽんってされると、なんかほわほわする。

きっとこの時のわたしの顔は間抜けだと思う。





五条「今日、昼も夜も完食できたら点滴ひとつ外すからな」


ひな「ほ、本当……?」


五条「あぁ。その代わり、昼間寝たら外さない。いいな?」





うっ……それはなんとしても頑張らないと……。










***



そして、夜——





お昼ごはんは全部食べた。

夜ごはんも全部食べた。

夜になるまでうたた寝せずにずっと起きてた。

お腹いっぱいで眠くなってもいいはずなのに……





ダメだ、寝れない……。





目を閉じようとしても開いちゃう。

もうあの人はいないってわかってるのに、わたしの身体は厄介だな……と考えながらモゾモゾしていると、ドアがスーッと開いて誰かが見回りに来た。

いつものように布団を口元までかぶって、ドアの方に背を向けるけど……



あれ、また出ていかない……。

背後に誰か立ってる気がする。

五条先生が来たのかな?



と思ったら、





「ひなちゃん、眠れない?」





ビクッ……





この声は……!





そーっと身体の向きを変えて、布団からひょこっと顔を出し、



あ、暗くて見えない……。



と思ったら、



パチッ——



小さな明かりがついた。










ひな「藤堂先生……」


藤堂「ひなちゃん、こんばんは。今日は五条先生当直じゃなくていないんだ。でも、ひなちゃんが怖くて眠れてないかもって言ってたから代わりに見に来たんだよ。やっぱり起きてたね」





五条先生、そんなこと言ってくれてたんだ……。





ひな「ごめんなさい……」


藤堂「ひなちゃんすぐ謝るね。何も悪いことしてないんだから謝らないの。五条先生褒めてたよ?ご飯全部食べたって。点滴外すって言ったら、初めて笑ってくれたって。五条先生もうれしそうに笑ってたしね」


ひな「五条先生も笑うんだ……」





心の中でそう呟いたつもりが、声に漏れてたみたいで、





藤堂「ははっ。ひなちゃんおもしろいね。まぁ、たしかに五条先生ってクールだよね。でも、結構表情豊かなんだよ?ひなちゃんにはツンデレみたいだけど」





ツンデレってなんだ……?

まぁいいか。





藤堂「さぁ、夜寝れないとリズムが整わないから、そろそろ目閉じてみようか」





と言って、藤堂先生はわたしの手を握りながら、布団の上から肩のあたりを優しくトントンしてくれた。

それがすごく安心できて心地よくて、わたしはあっという間に眠りについた。


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