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小さな冒険
しおりを挟む*ひなのside
——数日後
はぁ……退屈……。
病院に来てから何日経っただろう。
もう1ヶ月になるな。
窓から見えてた桜も、いつの間にか全部散っちゃった……。
そういえば、もうしばらく外の空気吸ってないや。
外出たいな~。お天気もすごく良さそう。
でもエレベーターのボタン届かないもんな……。
というか、病室すらひとりで出たことなかったっけ??
トイレ行く時もまこちゃんについて行ってもらうし。
……なんでなんだろ?
トイレくらいひとりで行けるけどな~……。
ということで、いつもはナースコールしてまこちゃんを呼ぶんだけど、思い立ってひとりでトイレに行くことにした。
そして何の問題もなくトイレを済ませると、ちょっと探検してみたくなってうろうろしてみた。
部屋たくさんあるんだな~。
それに壁もいろいろ描いててかわいい。
普段、トイレや処置室の往復だけであんまり気にしてなかったけど、ドアがカラフルだったり、壁のあちこちにはかわいい絵が描いてあって楽しい。
そして、少し開けたところに出ると"ナースステーション"と書かれたとこがあり、看護師さんが何人かいた。
まこちゃん以外にもこんなに看護師さんいたんだ。
まこちゃんは……いないみたい。
どっか行ってるのかな?
ナースステーションを通りすぎて、向かい側の廊下を進むと、
わぁ~!ここなんだろ!!
ガラス張りの広い部屋には、たくさんの本やおもちゃ、ちょっとした遊具やピアノなんかも置いてある。
入ってみたいな~と思ったけど、電気が消えてて鍵が閉まってた。
仕方なく、そろそろ部屋に戻ろうと歩いてると、病院に来てすぐに打ちのめされたエレベーターが見えて、前まで行ってみた。
やっぱり、ボタン届かないな……。
と思って、エレベーターのボタンを見つめていると、
ポーン——
音が鳴って、エレベーターの扉が開いた。
「ひなちゃん!?」
降りてきたのは、知らない先生。
なのに、なぜかわたしの名前を知ってる……。
ひな「はい」
よくわかんなくて、とりあえず返事をしてみると、
五条「おい!なんでこんなとこいるんだ!?」
知らない先生のすぐ後ろから五条先生も降りてきて、サッとわたしの前にしゃがむと、二の腕のあたりをガシッと両手で掴んだ。
五条「まこちゃんは!?」
ひな「フリフリフリ……」
五条「ひとりで部屋から出たのか!?」
ひな「コクコクコク……」
五条「バカ野郎!倒れたらどうすんだ!!」
ビクッ!!
なんで突然怒られてるのかわからないけど、久しぶりに五条先生の低い怒鳴り声が響いてその場で固まった。
そして、二の腕を掴む両手がほっぺたに移動したと思ったら、目の下をめくられた。
すると、知らない先生が『あらら……』と言ったのが微かに聞こえたと思ったら、身体がいつの間にか宙に浮いて、五条先生に抱っこされて病室に連れてこられた。
***
~病室~
五条「なんで1人で部屋出たんだ?何してたんだ?」
ベッドに寝かされると、五条先生に聴診されて、まこちゃんが来て熱も血圧も測られた。
五条先生の声がとても低い……
まだ怒ってるみたい……
ひな「トイレ……」
五条「トイレ?なんでまこちゃん呼ばなかった?それにトイレ行くだけでなんでエレベーターにいた?」
ひな「ひとりでいけると思って……。トイレ終わって、壁やドアにいろいろ描いてて楽しくて、探検してました……」
五条「はぁ……。あのなぁ、調子が良くなってきて元気になったと思うかもしれないけど、まだ喘息が酷いんだ。それに、貧血もあって身体が疲れやすい。今少しフラフラするだろ?」
言われてみれば身体がすごくだるい気がする。
ひな「コクッ……」
五条「いいか?体力も全然ついてないし、ひとりでいるときにふらついたり倒れたりする可能性がある。だから、トイレだってまこちゃんと行くんだ。お前は自分の身体のことがよくわかってないんだから、勝手に判断せず言うことを聞きなさい」
五条先生、声は怒ってるけど目はそんなに怒ってない。
なんでだろ……
ひな「ごめんなさい……」
と、謝ったところで思い出した。
あなた誰?
でも、なんとなく見たことあるような……。
と、知らない先生に視線を向けると、ハッと気づいたようで自己紹介してくれた。
神崎「あ!ごめんね、誰かわかんないね。神崎秋斗です。って何回かひなちゃんに会ってるけど、倒れてたから覚えてないかっ。五条先生と同じ小児科医だから、このフロアにいつもいるよ。これからも会うと思うからよろしくね」
すごくニコニコした笑顔で優しい顔してて、まこちゃんと同じ感じ。
五条「少し休め」
五条先生が言うと、みんな部屋を出て行った。
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