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複雑な光景
しおりを挟む——数日後
朝の回診も終わり、ベッドの上でぼーっとしてると、カーテンの向こうから明里ちゃんの声が。
明里「パパ!ママ!」
パパ……ママ……か……。
明里ちゃんのうれしそうな声を聞いて、なんとなく胸がキュッとなる。
そしてお昼ごはんの時間。
食事が運ばれるとともにカーテンが開けられて、いつものように夏樹くんが見える。
どこかに行っていた明里ちゃんと明里ちゃんのご両親も戻ってきたみたいで一緒にいる。
すると、明里ちゃんのご両親が、
「明里がいつもお世話になってます」
と、わたしと夏樹くんに挨拶をした。
どうしていいかわからず、わたしは頭をペコッと下げてごはんを食べた。
***
真菰「あれ?ひなちゃん食欲ないの?」
まこちゃんが薬を持って来たので、え?と思って手元を見るとまだ半分くらいしか減ってない。
ぼーっとしてたせいで、いつもよりもさらにゆっくり食べてたみたい。
と言っても、食べた記憶も食べなかった記憶もないくらいぼーっとしてた。
そういえば、カーテンも閉まってるし、明里ちゃんのご両親ももう帰ったみたい。
ひな「た、食べれます!」
そう言って、急いでごはんを口に入れた。
真菰「ひなちゃん!焦らなくて大丈夫だから、ゆっくり食べよう。ごはん食べ終わったらナースコールしてくれる?」
ひな「はい……」
返事をして、まこちゃんがナースステーションに戻って行ったので、言われた通り落ち着いてゆっくり食べた。
30分くらいして、無事に食べ終わったのでナースコールをしたら、すぐにまこちゃんがきてくれた。
真菰「お待たせ。おっ、全部食べたね!今日はまた少し量が増えてたから多かったでしょ?えらいね!」
わたしの食事は、2、3日置きに少しずつ量が増える。
藤堂先生に話してから、こうやって少しずつ増やしていって、たくさん食べれるようになろうってことになった。
そして、まこちゃんに薬とゼリーをもらって、いつも通り薬を飲む。
この3つあるうちの1つは貧血の薬だって、この前五条先生に教えてもらった。
薬を飲み終えると、さっき一生懸命ご飯を食べたせいか眠くなってきて、いつの間にか寝てしまった。
***
明里「本当!?やったー!!」
ん……?
どのくらい寝たのだろう。
外はまだ明るいから1時間くらいしか経ってなさそう。
明里ちゃんの声が聞こえてきて目が覚めた。
神崎「思ってたよりも早く良くなってたんだ。明里ちゃんが頑張ったから、明後日は退院できるよ!」
神崎先生の声……
明里ちゃん、明後日退院するの……?
そして、その日の夕食の間、退院が決まった明里ちゃんはずっとうれしそうだった。
退院したら何がしたい、どこに行きたいってたくさん話してて、夏樹くんも『よかったな、おめでとう』って。
わたしも一緒に聞いてたけど、少し上の空だった。
真菰「……なちゃーん。おーい、ひなちゃーん!」
ひな「え?あ……は、はい」
ごはんを食べてぼーっとしてたら、いつの間にかまこちゃんが薬を持ってきてた。
真菰「ひなちゃん大丈夫?今日すごくぼーっとしてるけどしんどい?」
ひな「ごめんなさい……大丈夫です……」
と言って、薬をもらってサッと飲んだ。
***
——2日後
お昼になると、明里ちゃんのところにご両親が来て、病院を出る準備をしてた。
私服に着替えた明里ちゃんとご両親が、神崎先生に挨拶してる。
同室だったから宇髄先生と五条先生も一緒に挨拶してる。
その様子を、わたしはただぼーっと見つめた。
明里「夏樹くん、ひなのちゃん。仲良くしてくれてありがとう!!」
突然、明里ちゃんにそう言われてハッとなった。
夏樹「おぅ!明里、退院おめでとう!病院戻って来ないようにな!」
ひな「明里ちゃん、退院おめでとう」
夏樹くんに続いて慌てておめでとうって言った。
退院はおめでとうなんだって、この時初めて知った。
そして、玄関までお見送りするようで先生たちも部屋をあとにした。
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