ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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見失う自分と生い立ち①

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それから数日間、わたしはずっと自分のことを考えてた。



一体いつからあの人と暮らしてたんだろう。

両親はいつ死んじゃったんだろ。

どんな人だったのかな。



はぁ……。



自分のこと何もわからない。

昔の記憶を辿ってみたところで、あの人といたことしかわからない。



結局、あの人の奴隷でしかなかったのかな……。



でもそうだよね。

身体についた傷がそれを物語ってるもんね。



もう、一生こうなのかな。

傷も消えない、親もいない、病気だって治らない。

わたしの人生、あの人だけに埋め尽くされてる……。










真菰「ひなちゃん、食欲ない……?」





今朝はあまりごはんが食べられなかった。

考えごとしてるせいか、食欲も少しずつ無くなってきてる。





ひな「ごめんなさい……」


真菰「とりあえずお熱測ろうか」





と言って、今日はまこちゃんが脇に挟んでくれた。





ピピッ……





真菰「36度か。お熱はないね。どこか痛いとかしんどいとかある?」





静かに首を振った。

そして、五条先生が部屋に来る。





五条「……食欲ないか?」


ひな「はい……ごめんなさい……」


五条「謝らなくていいから。聴診するぞ」





言われて、自分で病衣をめくるとあざや傷痕が目に入ってきた。



あぁ……嫌だな……。

全部消えて無くなって欲しい。



と思ったら、チェストピースが身体に触れて、



パシッ……



咄嗟に五条先生の手を叩いてしまった。





ひな「ご、ごめんなさい……」





なんで叩いてしまったのか自分でもわからない。

でもこれ以上触れられたくなかった。

そして、五条先生も怒りはしなかった。





五条「……どうした?何悩んでる?ずっと考え事してるだろ。話すと楽になるぞ」





五条先生は、やっぱり気づいてたんだ……





五条「今痛いところとかないか?」


ひな「……はい」


五条「……ちょっと横になって」





言われてベッドに仰向けになると、五条先生はわたしの膝を立ててお腹を押した。





五条「ここ痛いか?」


ひな「フリフリ……」


五条「ここは?」


ひな「フリフリ……」


五条「ここは?」


ひな「……フリフリ」


五条「本当に?」


ひな「コクコクコク……」





最後にみぞおちの辺りを押されて少し痛かった。

でも、そんなとこ押したら誰だって痛いよね。





五条「今日はゆっくり寝てなさい。何かあったらすぐにナースコールして。それから、話がしたくなったらいつでも聞くから。わかったか?」


ひな「……はい」





五条先生が出て行くと、夏樹くんがカーテンの向こうから声をかけてくる。





夏樹「ひなの?大丈夫か……?」


ひな「大丈夫。心配しないで」





と言って、少し眠りについた。










***



真菰「ひなちゃん、お昼だよ」





お昼ごはんの時間。

まこちゃんがごはんを持ってきてくれた。

なんでか、最近ずっとまこちゃんが持ってきてくれる。

朝食べれなかったからか、ごはんはお粥に変わってた。





真菰「五条先生がお粥にしてくれたの。無理はしなくていいから、食べられるだけ食べてみて」





と言って、まこちゃんが部屋を出た。

すると、夏樹くんが話しかけてくる。





夏樹「ひなの、大丈夫か?普通のごはん食べれないなんて……。ごめんな、俺が傷つくこと言ったよな」


ひな「ううん、違うの。夏樹くんのせいじゃない。ちょっといろいろ考えちゃって……」


夏樹「ひなののこと、ちょっとだけ兄ちゃんに聞いたよ。学校、行かないんじゃなくて行かせてもらえなかったんだな」





そっか、工藤先生から聞いたんだ。

どこまで聞いたんだろ。

でも、工藤先生がなんで知ってたんだろ?

五条先生がわたしのこと教えたのか。





ひな「うん。だから馬鹿なんだ。へへっ」





と笑ってみたけど、夏樹くんは悲しそうな顔してる。

無理して笑ったから余計にそれが伝わったのかも。





夏樹「ひなの。無理して笑うなよ。余計につらくなるだろ?俺こんなんだけど、話聞いてやるからさ」





夏樹くんなりの、精一杯の優しさを見せてくれてる。

それだけで嬉しかった。





ひな「ありがとう……」





と言って、今度はほんの少しだけど心から口角を上げた。


そして、スプーンを手に持ってお粥を口に入れると……





うっ……気持ち悪い……





ひな「……オェッ!ケホケホッ……」


夏樹「おい!ひなの大丈夫か!?」





胃に入れたお粥をそのまま吐き出してしまった。

でも、吐き気はまだ止まらない。





夏樹「すいません!!ひなのが吐きました!!すぐ来てください!!」





夏樹くんが自分のナースコールを押して状況を伝えてくれてる。





ひな「オェッ……ケホケホッ……ハァハァ……」





苦しいけど、そんなことより夏樹くんに吐いてるところを見られたショックも大きい。

でも、気を遣ってくれてるのかナースコールをしたら、夏樹くんはずっと壁の方を向いてくれてる。

そして、すぐに五条先生とまこちゃんと、神崎先生も来てくれた。





夏樹「先生!ひなの、お粥一口入れた瞬間吐いてた!俺のカーテン閉めて!」





と、わたしの代わりに夏樹くんが伝えた。





神崎「夏樹くん、ありがとう」





と言って、神崎先生がカーテンをすぐに閉めた。





ひな「オェッ、ハァハァ……ケホケホ……」


五条「我慢しなくていいから、出るもの全部出せ」





言いながら、五条先生が背中をさすってくれる。

神崎先生が受け皿を持ってくれて、まこちゃんはこれ以上気持ち悪くならないように、汚してしまったところを掃除し始めてくれた。





ひな「ケホケホッ……ごめんなさい……ハァハァ……」





ベッドは汚しちゃうし、先生たちの前で吐き戻すし、自分が嫌で涙が出てくる。





五条「泣かなくていいから……。苦しいな、大丈夫だ」





こういう時に限って五条先生は優しい。

その優しさで余計に涙がこみ上げてくるのに。










少しして吐き気が落ち着くと、わたしは腕に点滴を打たれ、五条先生に抱き抱えられて個室に移された。





五条「朝も胃が痛かっただろ?」


ひな「コクッ……」





今度は素直に頷いた。





五条「なんで正直に言わなかった……。ストレスが原因で胃炎になってるんだ。何を1人で抱え込んでるんだ?」





目から溢れる涙が止まらない。

五条先生の問いに答えられない。





五条「落ち着いたらでいいから、話せるようになったら話してほしい。俺が嫌なら、まこちゃんでも、神崎先生でも、宇髄先生でも工藤先生でも、藤堂先生でも。誰でもいいから」





コクッ……





頷くだけで精一杯。

なんとなく1人にして欲しくてそっと目を閉じた。

五条先生にも伝わったのか、頭をぽんぽんとだけして部屋を出て行った。


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