29 / 262
夢と過去の記憶②
しおりを挟む「ひな、ひな、起きて!」
「グスン……グスン……うぅ、Tom……」
トム……
この前のお兄さん……
「ひな~、またソファーでお昼寝しちゃったの……。寝ながら泣いて、nightmareでしょ?」
「Tom?ダディーとマミーは……?」
「ひなのダディーとマミーはお空だよ。そっか、今日は雨だからダディーとマミーも泣いてるみたいだね。それで、ひなも涙が出たんだね」
「ダディーとマミーに会いたいよぉ……」
「ひな?ダディーとマミーはお空からひなを見てるから会えないんだよ」
「ひなもお空行く!」
「ダメだよ、ひなはまだ行っちゃダメ。大きくなっておばあちゃんになるまでお空は行っちゃいけないんだ」
「Tomもお空行かない?」
「うん。ひなが大きくなっておばあちゃんになるまで行かないよ。俺はずっと、ひなといる」
***
*五条side
ひな「スー……スー……」
藤堂「ひなちゃん、今は落ち着いて眠ってるね」
五条「はい」
ひな「スー……トム……」
……っ!?
ひな……今なんて……
神崎「ひなちゃんなんかしゃべった」
藤堂「夢見てるのかな?」
ひな「スー……スー……ト……ム……」
ひなの目からスーっと涙が流れた。
鼓膜の破れた耳に入らないように、そっと指で拭う。
神崎「ん?ト?」
藤堂「トムって聞こえなかった?」
神崎「トムって誰?犬の名前とか?」
……俺の名前だ。俺のミドルネーム。
小さかったひなは"悠仁"って言いにくかったみたいで上手に言えなかった。
お袋がTomって教えると、こっちはすぐに言えたから、ひなはずっとトムって呼んでた。
神崎「ね~?ねぇ、五条先生聞いてる~?」
五条「え?あ、すみません、もう一度お願いします」
藤堂「トムって知ってる?」
五条「俺です」
「「……へ?」」
『へ?』って……
なんだよ、その反応……
五条「俺です。俺、アメリカで生まれたんでミドルネームあるんです。Tomがそうで、ひなは悠仁って言えなかったからTomって呼んでました」
神崎「ちょっと!なにそれ、聞いたことないよっ!」
いや、言ったことなし……
わざわざ言うことでもないだろそんなもん……
藤堂「それ、ひなちゃんの大事な情報だよ?教えといてくれないと」
五条「なんかすみません……」
ひな「スー……スー……トム……スー……」
ひな……。
俺はそっとひなの頭を撫でた。
藤堂「悠仁、俺は先に戻るね」
神崎「俺も」
と言って、2人は気を遣ってくれたのか医局に戻って行った。
***
*ひなのside
ピッ……ピッ……ピッ……ピッ…………
また目が覚めた。
先生たちは誰もいない。
外が見えないけど、部屋が少し暗くなってて静かだからきっと夜なんだと思う。
すると、そーっとベッドのカーテンが開いて五条先生が来た。
五条「起きてたのか」
頭にそっと手が乗せられる。
その瞬間、なぜか涙が溢れ出した。
酸素マスクのせいか声を出そうと思っても出しづらい。
すると、五条先生がマスクを外してくれた。
五条「呼吸、苦しくないか?」
ひな「……コクッ」
五条「身体痛いか?」
低くて落ち着いた、とても優しい声……。
そっと握ってくれた右手は大きくて温かい。
五条先生の優しい手……
こんな時に限ってまた優しくなる。
でも、もう優しくしないでほしい。
ずっとこのままでいたくなるから……
でも、五条先生……
わたしは、もうダディーとマミーのとこに行きたい……
だからやっぱり……
ひな「もう、死なせて……」
***
*五条side
今……なんて……?
ひなの目からは涙が流れ落ちた。
あの時と一緒。
部屋で暴れた時と、同じ目と顔してる。
五条「……死なせるわけないだろ。お前は生きるんだ」
ひな「生きてても……もう意味ないから……。痛い、苦しい、つらい。やっぱりあの人から逃げるなんて無理だった。ボロボロになって、みんなに迷惑かけて、ここにいてもわたしは邪魔者になる。また傷も増やしちゃった……顔にだって傷つけて……。もういらない、こんなわたしもういらない……」
***
「ひな……もう行かなきゃ……」
「ヒック……ヒック……うぅ、Tom……ひなここにいたい!!!Tomと一緒がいいの!!……ヒック……ヒック……」
そうだ、トムだ……。
昔、一緒に住んでたお兄さんがいた。
「ひな、よく聞いて……?今はバイバイしなくちゃいけないけど、いつか必ずまた会えるから。だから、悲しくてもつらくても生きてて」
トムが生きててって……
「ヒック……ヒック……Tom、また会える?……ヒック」
「うん、必ず。だから、ひなのかわいい顔をもう汚さないで。俺にかわいい顔見せて?」
顔を汚さない、ようにしてたの……。
ごめんね、Tom……
約束守れなくて……
24
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
朔望大学医学部付属病院/ White Dictator
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』
<ホワイト・ディクテイター>
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯
圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。
___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。
※ごめんなさい!悩みすぎて遅れてます!
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる