ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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喘息と貧血と学校と①

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——1ヶ月後





あの事件から1ヶ月以上経った。

鼓膜も肋骨も無事に治って、顔の傷とあざは跡形もなく消えてくれた。

腕は抜糸をしてかさぶたも取れたみたいだけど、傷を目立たないようにするために、数ヶ月か半年くらいはずっとテープを貼るみたい。



わたしは、怖くてまだ傷跡を見たことがない。





真菰「ひなちゃん、テープ交換しよっか」





夕方、ごはん前にシャワーを済ませると、まこちゃんがテープを交換しに来てくれた。





真菰「傷はちゃんと良くなってきてるよ。五条先生、すごく綺麗に縫ってくれたね」





そう。この腕は、身体の傷を気にしてたわたしのことを思って、なるべく痕が残らないようにって五条先生が縫ってくれたって。

抜糸の時に五条先生からドヤ顔で言われた。





ひな「そういえば、腕って何針縫ったの?」


真菰「10針だったかな」


ひな「じゅ……10針も!? 聞かなかったらよかった……」


真菰「でもね、普通よりだいぶ細かく縫ってあったから、傷はそんな大きくはないよ?はいっ、おしまい!」


ひな「まこちゃん、ありがとう。ケホケホッ……」


真菰「あれ?ひなちゃん、また咳出てきたね。大丈夫?」





あの事件があってしばらくずっと安静にしてたから喘息の発作は起きてなかったけど、最近喉がイガイガするし、少し嫌な予感はしてる……。



でも!





ひな「大丈夫、五条先生に言わないで」


真菰「ははっ。それはどうしようかな~」





うっ……まこちゃん絶対言う……





真菰「梅雨の時期だからね。そろそろ明けるとは思うけど、喘息も悪化しやすいから。もし具合悪くなってきたらすぐに教えてね」





と、まこちゃんは部屋を出て行った。



そして……。










ひな「ケホッ……ケホケホッ……」



あ……



ひな「ケホッ、ケホケホッ……ゲホゲホッ……」



やばい……



ひな「ゲホゲホゲホッ……ケホケホッ、ハァハァ……」





夜中、久しぶりに咳が止まらなくなった。

寝てると苦しくて身体を起こしてみるけど、なかなか止まりそうにない。



どうしよう、止めなきゃ……。





ひな「ハァハァ……ゲホゲホッ……ハァハァ……ハァハァ……」





そうだ、呼吸……

ゆっくり深呼吸すれば、大丈夫だよね……





ひな「ハァ……ッハァ……ケホケホッ……ハァハァ、スー……ケホッ……ハァハァ……」





どのくらい経ったか、30分以上かもっとかもしれないけど、そのくらい格闘した気がする。

呼吸を意識してるとなんとか治まったので、すぐに布団に入ってまた眠った。










***



真菰「ひなちゃん、眠い?」





翌朝、まこちゃんに血圧を測られながら尋ねられる。





ひな「いえ、眠くないです!」





夜中に喘息が出てしまったことをバレないように、元気よく答えた。

そこへ五条先生が来て、





五条「おはよう。……ん?昨日あんまり寝てないな」





やばっ……



入ってくるなりさっそく顔をしかめられた。

バレるのが早すぎる……

でも、バレないように、平常心……





ひな「そんなことはないです」


五条「そんなことはあります。顔が疲れてる。怖い夢でも見たか?ほら、胸開けて」


ひな「はい……」





今までずっと病衣を着てたけど、少し前に五条先生と他の4人の先生たちがみんなでパジャマをプレゼントしてくれた。

まこちゃんが選んでくれたみたいで、とってもかわいくてすごくうれしかった。

だから、紐じゃなくて今はボタンをひとつひとつ外す。





五条「深呼吸して……」





夜中のことがバレないようにしないと……

いつもより少し浅めの深呼吸をして、ドキドキしながら聴診を受けた。










心なしかいつもより長い聴診が終わって、五条先生がステートを首にかけ直すと、





五条「……しんどくないか?」





あ……バ、バレたかな?





ひな「いえ、大丈夫です」





よし、受け答えは完璧。





五条「……なぁ、夜発作起きたか?」





うん。やっぱりバレてるかも。

いや、でも、聞くってことはバレてない?





ひな「そんなことはありませんでした」





五条先生の目を見たら負け。

しっかり前だけみて、ハキハキと答えた。

すると、





五条「こら、嘘をつくな。そんなことはあっただろ?」





と、両手でほっぺたを挟まれて五条先生に目を捉えられる。



あ……もう……これは完全に……バレてる……





ひな「あにょ(あの)よにゃかに(夜中に)ひょっと(ちょっと)らけ(だけ)」


五条「なんで早く言わないんだ!すぐにナースコールをせんか!」


ひな「ごめんにゃひゃぃ(ごめんなさい)」





あぁ、久しぶりに五条先生に怒られてしまった。

ほっぺたを挟む両手でそのまま目の下を見られて、首も触られて、手首を掴まれ脈を測られながら、まこちゃんに体温や血圧を確認して、終了。





五条「今日はベッドで大人しくしてなさい。何かあったら、必ず、すぐに、ナースコールを、すること。わかりましたか?」


ひな「はい……」





はぁ……

なんか、この感じ久しぶり。



結局、朝も昼間もじーっと窓の外を見て、特になにも起きなかった。

夜もごはんを食べて薬を飲んで吸入に行ってゲホゲホして、消灯時間になって眠りにつく。

いつも通りの1日が終わった。



そして、





ひな「ケホッ……ケホケホッ……ゲホゲホッ……」





夜中になってまた発作が起きてしまった。





ひな「ッハァ、ッハァ……ゲホゲホッハァハァ……」





苦しい……

ナース、コール……が、手元にない。

はぁ……どうしよう……





ひな「ゲホゲホッ……ヒューヒュー……ゲホゲホゲホゲホッ……ッハァ、ッハァ……」





昨日の夜よりもひどい……

さすがにやばいと思うけど、ナースコールが見当たらない。

どうしようどうしようと、若干パニックになってると、





五条「落ち着いて、ゆっくり深呼吸」





五条先生が来て、すぐに背中をさすってくれる。





ひな「ッハァ、ッハァ……ゲホゲホゲホゲホ……ヒューヒュー……ッハァ、ハァッ……」


五条「呼吸しなさい。息を止めないの」





と、五条先生はわたしの身体を支えて背中をさすりながら、





五条「はい、吸ってー……吐いてー…………はい、吸ってー……吐いてー…………」





わたしに深呼吸させた。

その間に、五条先生はポケットから吸入器を取り出して、わたしのタイミングに合わせてプシュッと。





ひな「ハァハァ……ハァ……ハァ……」





しばらくして落ち着いてくると、五条先生は聴診したり脈を測ったり……





五条「落ち着いたな。大丈夫か?もう苦しくないか?」





コクッ……



苦しくないけど、疲れてもう眠い……。





五条「ったく、ナースコール床に落としてたぞ。寝相悪くて蹴飛ばしたか?」





あ、だから無かったのか……って、寝相悪くないし……。





ひな「ごめんなさい」





と言ったあと、そのまま眠ったのか気づくと朝だった。










五条「深呼吸して」


ひな「スー……ハー……スー……ハー……」





立て続けに発作が起きたせいで、いつもより念入りな聴診。

長くて変に緊張してしまう。





五条「ん、服直していいぞ。今日、昼から検査しよう」


ひな「検査……?」





ということで。

採血、呼吸機能、心電図、エコー、レントゲン、CT……

よくわからないまま、次から次へといろんなことされて、気づけばもう夕方。





真菰「ひなちゃん疲れちゃったよね。大丈夫?」





まこちゃんと部屋に戻ってきて、ベッドに横になる。





真菰「ごはんになったら起こしてあげるから、それまで寝てても大丈夫だよ」





寝てもいいと言われたので目を閉じて、そのまますぐに寝てしまった。


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