ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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呼び起こされた過去①

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ひな「ん……んん……」





目が覚めると外は真っ暗。

棚に置いてあったスマホに手を伸ばし、時間を見ると朝6時。





あぁ、寝ちゃってたんだ。





ご飯も食べてないからか、左腕には点滴もされてる。





藤堂先生、ご飯の後に来たんだろうな。

この点滴、姫島さんがやったのかな……?





ひな「……気持ち悪い」





ブチッ……





姫島さんに手を下されたのかと思うと、嫌で嫌で仕方なかった。

溢れ出る血の感覚が腕を伝っていく。





また点滴引き抜いちゃって、五条先生にバレたら怒られちゃうかな……。

わたしって、ずっと五条先生怒らせてるな……。

それなのに恋してるなんてね。

好きなんて、口が裂けても言えないよ。

というか、わたしが五条先生を好きになるなんてもう許されない。



わたしは汚れてるんだから……

あの人に汚されたんだから……



こんな汚いのに、五条先生が好きだなんて何様だよね、五条先生がわたしなんか好きになってくれるわけない。

五条先生どころか、わたしを好きになる人なんてこの世にいない。



やっぱり消したい。

この身体……つらいよ……










外も少しずつ明るくなってきた。

パジャマやベッドに滲んだ血が目に入る。

その上に、今度は涙がポタポタと。



今のうちにどこか行こう。

太陽が昇ってしまうと姫島さんが来る。

会いたくないし、ひとりになりたい……



そう思った時、





ガラガラ——


五条「ひな……?」
藤堂「ひなちゃん……?」





突然部屋の扉が開いて、五条先生と藤堂先生が。



なんでこんな時間に、しかも2人で来るの……?



って思ったら、2人とももうベッドの脇に。





藤堂「ひなちゃん、点滴抜いちゃったの?」





と、すぐに腕を掴んで確認する藤堂先生。





五条「ひなどうしたんだ、何があったんだ……?」





と、わたしの背中に手を添える五条先生。



不思議なことに、2人とも全く怒らない。

むしろ、すごくわたしのこと心配してくれてるみたいで、逆にそれがとんでもなく苦しかった。





ひな「やめて……お願い、だから……触ら……ないで……」





震える身体で震える声で、掠れた声をなんとか絞り出すけど……





藤堂「ひなちゃんごめんね、腕の処置だけさせて」


五条「ちょうど着替えも持ってきたんだ。パジャマ着替えよう」





って、2人ともわたしから離れてくれなくて……





ひな「ハァハァ……やめて……ハァハァ、離し……ハァハァ、て……」





と、パニックに。

そして、部屋を出ようとベッドを降りて、





パタッ……





一歩も歩けず、膝から崩れて前に倒れた。





五条「ひな!」
藤堂「ひなちゃん!」





もちろん、床に身体はぶつけてない。

五条先生が受け止めてくれたけど、わたしはそれを全力で拒否した。





ひな「やめて!! ハァハァ……触らないで……ッハァ、わたしの身体……ハァハァ、触らないで……っ……ハァハァ」


五条「おいひな落ち着け!なんで触られたくないんだ、何があったんだよ!」


藤堂「ひなちゃん落ち着くよ。何も怖いことしないから」


ひな「ハァハァ、ぃゃ……ハァハァ……離し、ゲホゲホッ……ゲホゲホゲホッ!!」


五条「ひな、深呼吸。できるだろ?いつも上手に出来てるんだぞ」





って、わたしを膝の上で抱える五条先生。





やめてよ五条先生……

わたし汚いんだよ。わたしは汚れてるから、触らないで。

五条先生の綺麗な手も身体も、その瞳すらわたしを映して汚したくない……





ひな「ゲホゲホッ……ハァハァ……離し、ゲホゲホゲホッ……ゲホゲホッ、ゲホゲホゲホッ……ッハァ、ッハァ……」


五条「ひな!ちゃんと呼吸しろって!」


藤堂「ひなちゃん、目閉じないで!」





先生たちの言うことちゃんと聞けなくてごめんなさい。

でも、もうこんな汚いわたしに構わないで……。



そう思いながら、そっと意識を手放した。










***



*五条side



今朝はひなの着替えやタオルを持って、いつもより早く出勤してきた。

更衣室で着替えてると、





藤堂「悠~仁っ!おはよう、早いね」


五条「藤堂先生、おはようございます。ひなの荷物持ってきたんで。仕事前に部屋行こうかと」





と、ちょうど藤堂先生も着替えにやって来た。





藤堂「じゃあ、俺も一緒に行くよ。LIMEした通りだけど、ひなちゃん、あの後ご飯も食べずに寝たから。回診の前に様子見とく」





って、2人でひなの部屋に来たら……





五条「ひな!ひなっ!!」





ひなは俺の腕の中で意識を手放した。





藤堂「処置室連れて行こう。悠仁そのまま抱いて行ける?俺みんなに連絡入れる」


五条「はい」





と、ひなを急いで処置室へ連れて行く。










処置室に運び込むと、すぐに藤堂先生とバイタルチェック。





藤堂「血液検査と心電図もしとこう。俺は先に腕の処置しちゃうから悠仁準備してくれる?」


五条「わかりました」





と、採血の準備をしていると、当直だった工藤先生が来てくれた。





工藤「ひなちゃん、どうした……」





処置室に入るや否や、酸素マスクをつけて荒い呼吸をするひなを見てそう呟く。





藤堂「朝方、点滴自己抜去したみたい。見つけた時は1時間くらい経ってたかな?後で話すけど、また取り乱して暴れちゃって」


工藤「本当に何があったんだ?五条先生、俺採血するわ」


五条「お願いします。助かります」





準備した採血キットを工藤先生に渡す。

工藤先生は採血がめちゃくちゃ上手い。

ひなの細くて逃げやすい血管ですら、すぐに見つけてあっという間に穿刺する。

恐らく、宇髄先生に叩き上げられたからだろう。

針の扱いはベテラン看護師以上。










その後、心電図をとってひなの呼吸も落ち着いたころ、病室のベッドに連れて帰ってきた。





姫島「先生、お疲れ様です」





病室に戻ると、シーツを交換してくれた姫島がいた。





五条「シーツありがとう。朝から悪かった」


姫島「いえ、お役に立ててうれしいです」





ん?お役に立ててうれしいって……なんでそんな言い方すんだ?



なんとなく姫島の言葉遣いが気になったものの、一瞬だったしどうでもよくて、それ以上気にすることはしなかった。





工藤「宇髄先生、出勤昼からなんです。まぁ12時までに来ると思うんですけど」


藤堂「ありがとう。それまでにひなちゃんの結果出して話出来るようにしとこう。姫島さん、ひなちゃんいつ起きるかわからないからよく見ててくれる?起きたら僕か、五条先生か神崎先生に連絡お願いね」


姫島「わかりました」










***


それからしばらくして、ひなの血液検査の結果が出てきた。





ヘモグロビン値が6.9……?

どういうことだ?





藤堂「うん?……6.9?」


工藤「ひなちゃん、今回入院した時ギリギリ8ありましたよね……?」





やっぱり、みんな同じところで引っかかった。

貧血の数値が明らかに悪くなってる。

ここ数日食欲はずっと落ちてるが、薬を飲ませてるしここまで悪くなることは考えにくい。





五条「ひな、薬飲んでますよね……?」


藤堂「もちろん。いつもまこちゃんきちんと飲ませてくれてるし、ひなちゃんも今の鉄剤が身体に合わないって言ってきたことないんだけどね。便秘の薬をたまに出すくらいで、ちゃんと飲んでくれてるはずなんだけど……」


工藤「なんで病院いてこんなに下がってるんだ?なんかおかしいな。多少落ちることはあるにせよ6.9?こうなる理由が思いつかない……」


藤堂「確かに変だね……正直、ひなちゃんが精神的に不安的になり出した理由もわからないし、本人ときちんと話したいんだけどな」


五条「今朝の調子だと難しいですよね……あの誰も寄せつけない感じはちょっと危険です」


藤堂「悠仁。ちょっと、しばらく手伝ってくれる?忙しいとこ悪いけど、今のひなちゃんには悠仁が必要になりそう」


五条「もちろんです。何かあればすぐ声かけてください」


藤堂「うん、ありがとう」


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