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治療という名の天罰①
しおりを挟むしばらくして落ち着いたわたしは、今婦人科の処置室にいる。
もっといえば、あの椅子の上……。
ICUを脱出できたとはいえ、熱はまだ37度台。
抗生剤で炎症は抑えられているものの、お腹に溜まったものをなんとかしない限りは、炎症も熱も治りきらないって。
すぐに治療しないといけない状態だったらしく、ICUを出たらここに来ることは決定してたみたい。
なのに、わたしがあんなに泣きじゃくったから、治療するかどうかは後で決めようって、とりあえず検査だけしに行こうって連れてこられた。
100%わたしのせいでこうなってしまった手前、口が裂けても言えなかったけど、
治療するつもりだったなら、治療前にあんな怒らないでよ……
怒らなくてもよかったじゃん……
というか、あんなに怒ったらわたしがどうなるかなんて、先生達ならわかってたでしょ……?
最初から優しくしといてよ……
とは、心の中で思うところ。
宇髄「ひなちゃーん、まずは内診からな。力抜いてー……」
最後にこの椅子座ったのいつだっけ……?
久しぶりの宇髄先生の検査に、正直な身体はプルプル……。
藤堂「まだ痛いことしないから大丈夫だよ。ふぅ~って息吐いてごらん」
……ま、だ……?
藤堂先生が"まだ"って言ったのが気になって気になって仕方ないけど、
五条「ひな、息吐く。固まってたら痛いぞ、いいのか?」
って、怒ってないのに怒ってるみたいな、いつも通り、医者してる時はぶっきらぼうな五条先生に言われて、
ひな「ふぅ~……」
と、大きく息を吐いた。
ビクッ……
ひな「ん……っ」
宇髄「痛い?」
ひな「はぃ……」
宇髄先生の指が入った瞬間、あそこに少し痛みが。
宇髄「間空いたからなー……ちょっと狭くなってんだな……」
独り言のように呟きつつ、
宇髄「ひなちゃん、我慢できないほど痛かったら教えて。ほぐしながら診ていくから、ちょっと気持ち悪いけど我慢してな」
って、中を指でごにょごにょごにょごにょ……
ひな「んん……っ……」
藤堂「大丈夫大丈夫。力入れないよ」
体感的には5分くらいだけど、実際にはたぶん1分もない。
あそこの入口や中をほぐされたら、
宇髄「ひなちゃん、ちょっと押すぞ」
って、次は指を中に入れたままもう片方の手でお腹を押さえられ、
ひな「ん"ーーっ!!……ったい……ハァハァ、い"、痛いっ……」
あまりの痛みにしばし悶絶。
宇髄「ん、一旦楽にして」
内診が終わって指を抜いた宇髄先生は、わたしの脚を軽くぽんぽんと。
ひな「ハァハァ……グスン、ハァハァ……」
炎症はマシになったって言われたのに、押されると運ばれてきた時くらい痛かった。
あぁ……痛ぃ……
痛みの余韻が残るお腹にそっと自分の手を乗せて、息を整えながら少しお腹を撫でてると、
五条「放っておくからこうなるんだぞ?辛いだろ、これでわかったか??」
と、わたしの手の上に手を重ねる五条先生。
その手も声も優しいけど、言ってることはほんと優しくない。
絶対、やんわり釘を刺しにきてる……。
ひな「わかってる……グスン」
五条「ん。そしたらもう少し頑張るぞ」
って、涙を拭いてもらうと、
宇髄「ひなちゃん、次エコーいくよ。少し痛いかもしれないから、しっかり力抜くぞー……」
今度はプローブがあそこに入ってくる。
ビクッ……
ひな「んっ……ぃ……」
久しぶりだからかお腹のせいなのかわからないけど、言われたとおりきつくて痛い。
それでも、今日は容赦なくどんどん奥へ入れられる。
宇髄「ごめんな、痛いの我慢な」
ひな「……っい"……んん、っ……」
五条「ひな力抜いて。力入り過ぎてるぞ」
ひな「ハァハァッ……っ、痛……ッハァハァ」
藤堂「ひなちゃん息長く吐いてみようか。ふぅ~ってした方が力抜けるよ」
わたしの両隣に立つ五条先生と藤堂先生に優しく声をかけてもらいながら、なんとか2、3分くらい耐えて、
宇髄「……ん。よーし、ひなちゃんおしまい!頑張った」
プローブを抜いてもらった。
ひな「ハァ、ハァ……グスン……」
はぁ、終わった。
これで検査終わりだよね。
あー、痛かった。
早く部屋戻りたい、ここから降ろして……
って、お腹をさすりながら天井を見つめ、椅子を動かしてくれるのを待つわたし。
すると、
宇髄「ひなちゃん、このまま治療しようか。今日終わらせよう」
ひな「……えっ?」
宇髄先生の言葉にお腹をさする手がピタッと止まる。
宇髄「お腹の治療だけど、今回は前みたいに刺激して出してあげることはできない。気持ちよくもしてやれないし、むしろ、痛いと思う。溜まってる量が多くて炎症も起きてるから、子宮の中を直接洗浄しなきゃいけないんだ」
淡々と説明されるけど、
そもそも今日は治療までやるなんて思ってなくて、検査だけだと思ってて、だから心づもりも何もしてないし、なんならさっきの検査が痛くてもう心折れたし、宇髄先生のさっきの『おしまい!』は、どう考えてもおしまいって感じだったし……
って、助けを求めるようにわたしの顔は自然と五条先生の方へ。
すると、五条先生はわたしの頭にそっと手を置いて、
五条「頑張れるか……?」
と。
口では確かに『頑張れるか……?』って言った。
だけどその目は、"頑張れるな……?"って言ってる。
痛いの嫌だな、怖いもんな。
でも、嘘までついて隠して、放っておいたんだから仕方ない。
早く治療しないと、これ以上はどうなるかわからないんだ。
ひななら頑張れるよな……?
一緒にいるから。
優しさと厳しさが入り混じる五条先生の目。
たった一言でも、五条先生の言わんとすることが全部わかる。
ひな「グスン……グスン……うぅ……」
宇髄「ひなちゃん。ひなちゃんがどうしても嫌なら明日までは待ってもいい。そのかわり朝一で治療になる。今しても明日しても痛いのはかわらないし、10分か20分もあれば終わるんだ。先生はこのまま頑張った方がいいと思うけど、ひなちゃんはどうしたい?」
五条先生も宇髄先生も、そんなこと言われたって、そんなこと全部わかってるけど、YesともNoとも言えない。
ひな「グスン……グスン……グスン……」
静かな処置室にわたしのすすり泣く音だけが響く。
すると五条先生が、
五条「ひな」
今度は親指で涙を拭うように頬に手を添えて、
"頑張るよな。今からやるよな"
という目でわたしの目を見つめる。
五条先生のこの目は本当に……
大好きだけど大っ嫌い。
いつものごとく、その目力に負けてコクッと頷いてしまった。
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