ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

文字の大きさ
144 / 253

カテーテル検査②

しおりを挟む


——翌日





祥子「……ひなちゃん。……ひなちゃーん」





朝7時。

祥子さんに起こしてもらって目が覚めた。





祥子「おはよう。ごめんね、お薬飲んだからまだ眠いね」





昨日の夜はあまり眠れなかった。

朝も早いししっかり寝ないといけないからって、消灯時間より早く寝かせてもらったのに、23時を過ぎても眠れず。

結局、睡眠薬を飲ませてもらって眠りについたから、今朝は逆に眠い。





ひな「おはよぅ、ござぃます……」


祥子「おはよう。起きられそう?」


ひな「はぃ……大丈夫です」


祥子「うん。そしたら検査の準備しようか」





と、まずはトイレに行き、戻ってきたら検査着に着替えて、点滴も入れてもらう。





祥子「ひなちゃん、お腹大丈夫?空き過ぎて気持ち悪くなったりしてない?」





と、わたしの血管を探りながら言う祥子さん。

検査が終わるまでは絶食だから、今朝は朝ごはんが食べれない。

それに加え、昨日の夜も軽食だったから、普通ならお腹が空くはず。

でも、緊張のせいかお腹なんてまったく空いてない。





ひな「緊張してて、大丈夫です……」


祥子「そうよね、それどころじゃないよね。もし気持ち悪くなってくることがあれば、我慢しないで伝えてね。よし、ちょっとチクっとするよ~」


ひな「ぇ、ぁ、はいっ……」





チクッ……





祥子「もう力抜いて大丈夫よ」





やっぱり祥子さんの注射は1番痛くない。

手際が良くて血管を見つけるのも早いから、針を刺されるまでの緊張の時間も短いし、痛いのも一瞬で終わる。





祥子「腕痛くない?」


ひな「大丈夫です」


祥子「うん。そしたら、このまま1時間くらい休んでから検査室に移るね。また迎えに来るから寝ててもいいよ」


ひな「わかりました」





と言って、わたしはもう一度目を閉じた。










そして、1時間後。



祥子さんに迎えに来てもらって、いよいよ検査室へ。

車椅子に乗せてもらい連れて来られたのは、大きなモニターや機械がある手術室みたいな部屋。

わたしはビビりまくって、



祥子さん……



と、助けを求めようかと思ったけど、すぐに検査室の看護師さんに引き継がれ祥子さんは行ってしまい、一層不安な気持ちに。



そんな状態でベッドへ上がると、身体にいろんな機械をつけられて、尿道カテーテルも入れられて、おまけに肩のところへ注射もされて、もう検査が終わったくらいの気分。

最後に足の付け根を消毒されて、ブルーの布を身体に被されて、準備が整ったところで工藤先生と藤堂先生が入ってきた。





工藤「おはよう、ひなちゃん」





ガウンにマスクに帽子までして、これから手術ですか……という姿な先生たち。

そんな格好でもマスクの下では、焼けた肌に真っ白な歯をニカッと見せる、工藤先生のいつもの笑顔なんだとわかる。





工藤「ひなちゃんどうした。もう泣きそうな顔してるな……」


ひな「先生たち目しか出てない……」


工藤「目しか出てないって(笑)」


ひな「だって……」


藤堂「怖いね。手術みたいで嫌だよね」


ひな「藤堂先生……」





やっぱり藤堂先生はすごい。

わたしの気持ちを代わりに声に出してくれる。

でも、ただの代弁にはなってなくて、その柔らかい声と頭を撫でる優しい手、そして、語尾につけられた"ね"の絶妙なニュアンスによって、ものすごく安心感を得られてしまう。

そんな藤堂先生の後に続けられるほどの言葉がなくて、半泣きになりながらコクッと小さく頷いた。





藤堂「大丈夫だよ。麻酔が終わったら痛くないからね」


ひな「本当に痛くないですか……?」


藤堂「うん、大丈夫。それに、さっきひなちゃん注射しなかった?」


ひな「しました。痛かったです」


藤堂「その注射は、ドキドキしないように気持ちを和らげるためのもので、少し眠くなる成分も入ってるよ。もう少ししたらそれも効いてくるからね」





言われてみれば、確かに少し眠いようなぼーっとする感じはある。

でも、まだ恐怖心が勝っちゃってる……。





工藤「ひなちゃん、今身体は寒くない?」


ひな「はい。大丈夫です」


工藤「よし。そしたら始めて行こうか。よろしくな」





と、いよいよ工藤先生が足の方へ移動して、カチャカチャ、ピッピッといろんな音が響き始めた。





ひな「と、藤堂先生……」





足元は見えない。

わたしの目に映るのは、天井とブルーの布と大きな機械くらい。

首を思いっきり持ち上げればモニターも見えるかもしれないけど、そんなことできないし見るつもりもない。

そんな状態で機械や器具の音がしたら、そりゃ恐怖心はMAXになるわけで、藤堂先生に助けを求めた。





藤堂「うん?怖くなっちゃった?」





と、また頭を撫でてくれる藤堂先生。





ひな「コクコクコクッ……」


藤堂「大丈夫大丈夫。一緒に深呼吸してみようか。はい、吸って~……吐いて~……吸って~……」





藤堂先生の誘導でゆっくりと深呼吸を繰り返していると、





工藤「ひなちゃ~ん、そしたら麻酔するからな。チクッとするからここだけ少し頑張ろう。行くぞー……」





って、工藤先生の手が足の付け根に触れて、



待って!!



と言う暇もなく針を刺された。





ひな「ん"ーーっ!!い"っっだぃ!!」





足の付け根という場所のせいか、今までしてきた注射の中で1番痛い。



ブスッと。

いや、グサッと?



とにかくチクッなんてものではない痛みが走る。





ひな「痛いー……っ!!」





この麻酔の注射、本当にとんでもなく痛いけど、工藤先生ってたしか注射が上手なはずで……

前に祥子さんや先生たちが上手って言ってたから、どこかで痛くないと期待してた自分がいたのに、全然そんなことなかった。





藤堂「痛いね、すぐ終わるからね」





身体は固定されて動かせなくて、藤堂先生に手も握ってもらえない。

代わりに頭はずっと撫でてくれてるけど、残念ながら今は痛すぎて気休めにならず……





工藤「ひなちゃん、もう終わるぞー」





と麻酔が終われば、わたしの目からは涙がぽろぽろ。





藤堂「頑張ったね。あとはもう痛くないからね」


工藤「ひなちゃん、これからカテーテル入れていくからな。何かあったらすぐ教えてな」





と、検査が始まったけど、





ひな「んぐ……っ」





すぐに、何かをすごい力で押し込まれてるような感覚がした。





工藤「ひなちゃん大丈夫ー?」


ひな「痛い……っ」


工藤「痛い??」


藤堂「ひなちゃん落ち着いてごらん。本当に痛い?どんな感じする?」


ひな「足がグッて……押されるみたいな、なんかググッ入ってるの、足が……入ってる。痛い……っ、グスッ」





伝えるのに必死で日本語も変になる。

でもそのくらい、初めて感じるこの重たい変な痛みにちょっとパニック。





工藤「よしよし。そしたら麻酔足そう。大丈夫だぞ」


藤堂「ひなちゃんひなちゃん、僕のこと見て。泣いたら心臓がびっくりしちゃうから落ち着いてリラックスしてようね。大丈夫大丈夫」





麻酔を追加で入れてもらい、頭を撫でてもらい、少し休憩してもう一度カテーテルが入る。





工藤「ひなちゃんどう?大丈夫?今順調に入ってるぞ」





さっきよりはマシだけど、まだ少し痛い。

血管の中をカテーテルが突き進んでる感覚がすごくある。

でも、なんだかぼーっと、身体がふわふわしてきたのもあって、痛みが徐々に引いてる感じがする。



最初に打たれた注射、藤堂先生が眠くなるって言ってたからそれが効いてるのかな~。



と思いながら、





ひな「大丈夫……」





呟いたのも束の間……。





……ん?

違う……これ、気持ち悪い……。





ふわふわする感覚は一気に目眩と吐き気に変わっていき、途端に気持ち悪くなってしまった。

もちろん、そんなわたしの異変を先生たちも見逃さずすぐに気づいてくれる。





藤堂「ひなちゃん気持ち悪い?気持ち悪いね」


助手「先生、血圧下がってます……!」


工藤「メイン全開にして。薬すぐ入れて」





工藤先生の指示のもと、検査室にいるスタッフたちがバタバタと動き出す。





ひな「怖い……気持ち悪ぃ……」


工藤「大丈夫だぞ。今お薬入れるからな。気持ち悪いのすぐに止まるから少し我慢しててな」





吐きそうとまではいかないけど吐き気がすごい……

でも、カテーテル検査中のこの状態で、恐らく吐くわけにはいかないんだろう。





藤堂「つらいね。気持ち悪いよね。すぐ治るからね」





藤堂先生に励まされながらなんとか耐えてると、気持ち悪さがなくなってきて、またぼーっとし始めた。










そこからは順調に進んだみたいで、工藤先生や藤堂先生にちゃんと返事もしながら、眠らない程度にぼーっとしてたら、





工藤「ん。ひなちゃーん、検査はもう終わりだぞ。最後カテーテル抜こうな」





と、検査が終わった。

そして、カテーテルが抜かれると、工藤先生に思いっきり足の付け根を押さえられたんだけど、これがまたすごい痛くって……。

工藤先生のそのムキムキな腕で手加減なしに押さえてくるから、もう骨が折れるんじゃないかと思い、





ひな「い、痛い!折れるっ!!」





って言ったら、





工藤「ははっ。大丈夫大丈夫。折れはしないくらいで押さえてるから」





と、まだ本気じゃなくて力が有り余ってる余裕な感じで言われて、この人は指2本でりんごを握り潰せるのではないかと思った。

だけど、どうやらこんなに足を圧迫するのは、しっかり止血しないと血が溢れちゃうからだって。

太い血管だからとにかくちゃんと止血しないと大変なことになるようで、散々手で押さえられた後に、ものすごいきつく何かを巻かれて、ようやく全て終了。

予定では1時間だったところ、2時間かかって検査が終わり、ストレッチャーで病室に帰ってきた。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...