ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

文字の大きさ
223 / 262

麻疹①

しおりを挟む


*ひなのside





それから、数日後。

例の検査結果が陽性との連絡が入り、わたしの感染も確実に。発症は時間の問題となった。

とはいえ、特に症状もないまま1週間が過ぎ、貧血の治療はしていたものの、





藤堂「いい?咳が出たり熱が出たりしたらすぐ言うんだよ。わかった?」


ひな「どうせ今日も何もないです……。毎日聞かれても……やっぱり感染してないんじゃ……」


藤堂「ひなちゃん~……?」


ひな「うっ……はい、わかりました……」





なんて言うくらい、病室で元気に過ごしていた。










でも、隔離から10日を過ぎ。





ひな「ケホッ……」





……ん?

なんか、今の咳……

……いや、気のせいかな。





なんとなく違和感を覚えた突然の空咳。

これがはじまりの合図だったようで、





ひな「ゲホ、ゲホッ……ゴホゴホッ!」





あれよあれよと症状が現れてしまった。










***



コンコンコン——


五条「ひな大丈夫か? ごはん来てるぞ」





お昼の時間、五条先生が病室に来てくれて、わたしの身体を起こしてくれる。





五条「ん、あーん」





メニューはおかゆ。

スプーンにすくって、五条先生が食べさせてくれるけど、





パクッ……





……っ。





喉の痛みが強いせいで飲み込むのがとてもつらい。





五条「ん」





わたしが飲み込んだのを見て、五条先生は2口目を口元に運んでくる。

だけどわたしは、





ひな「フリフリ……」





首を横に振った。





五条「ん? もう食べられないか? 朝もほとんど食わなかったんだろ。体力落ちるから、もう少し頑張りな。な?」





五条先生に励まされて、もうひとくち食べるものの、





ゴクン……、……っッ。





飲み込むのが痛くて痛くて、今度は涙がぽろぽろ溢れてきた。





五条「どうしたひな……」





スプーンを置いて、わたしの手を握る五条先生。





五条「食欲ないか?」


ひな「グスン……ぅぅ」


五条「ん? しんどい?」


ひな「おかゆたべたい……けど……グスン」


五条「けど?」


ひな「のど……いたくて……食べられなぃ……っ、ゴホッ……ゴホゴホッ!!」





麻しんが治ったらすぐポリクリに戻る。

その時のために、わたしだってちゃんと食べたい。

でも、あまりに喉が痛くて正直に言うと、





五条「よしよし、わかった。しんどいな。泣かなく……ん? ひな、もしかしてまた熱上がっ……うわっ」





わたしを抱きしめかけた五条先生はおでこに手を当てると、ポケットからスマホを取り出して、すぐに藤堂先生を呼んだ。










ピピッ……


藤堂「いくつ?」


五条「40度あります。40.2℃」


藤堂「高いな……。ひなちゃんちょっとごめんね、もしもしするね」


ひな「コクッ……」





初めはいわゆる風邪症状。

咳が出るようになり、喉が痛くなり始めるのと、熱が出始めるのと。

それでも、これくらいなら……と思っていたのに、症状は日に日に強くなり、予想以上にわたしを苦しめる。





藤堂「……うん、胸の音はそこまで酷くない。それにしても身体が熱いな……」


五条「喉がかなり痛むようで、嚥下出来ないと」


藤堂「今朝も喉の腫れはあったけど……ひなちゃん、お口あーして」


ひな「ぁ……」


藤堂「もっと大きく開けられる?あーって言ってごらん」





わたしの首に触れながら、そう口の中を覗く藤堂先生。

藤堂先生の言ってることはよくわかる。

だってそうしないと……





藤堂「無理か……。ごめんね、少し我慢するよ」





……っ、……!





舌圧子で舌を押さえられる羽目に。





ひな「……っ、ッ……!!」


藤堂「ごめんね、苦しいね。辛いけどちょっと頑張って」





わたしの目にはすでに涙が光るけど、藤堂先生は容赦なく舌圧子を押し当てて、ペンライトで喉を照らす。





ひな「……っ、……ッ、っ!」





嘔吐反射に襲われるのに、込み上げてくるものを放つことも飲み込むことも出来ず。

苦しさから逃げようにも、





五条「ひな動かないよ。鼻で息してごらん」





五条先生に頭をがっしり持たれているから、顔を背けることも叶わない。



そうして耐えること、体感1分。

実際には、まぁ、10秒くらい。





ひな「オエッ……っ、ゴホッ、ゴホゴホッ……!!」





ようやく解放してもらえると、





藤堂「喉の腫れが酷くなってる。これじゃあ痛いはずだ」





ということで、鎮痛剤と咳止めが処方され、ごはんを食べる代わりに栄養剤も点滴された。










そして、夜になると症状はさらに悪化して、





藤堂「ひなちゃん、水分は取れてる?」


ひな「フリフリ……あまり……」


藤堂「最後にいつ飲んだ?」


ひな「……おひる」


藤堂「お昼? 僕が診察来て、お薬飲んだ時?」


ひな「コクッ……」


藤堂「点滴終わってからも飲んでないの?」


ひな「コクッ……」





食事どころか水すら飲めなくなってしまい、夜通し点滴を繋げられることに。










***



それから、3日後。





五条「ひな~?」





五条先生の声がして、うっすらと目を開ける。





五条「ひな」





あれから、わたしの身体にはついに発疹ができ、それも瞬く間に全身へ広がって、動くこともままならない状態に。

いつの間にか点滴も、24時間繋がりっぱなし。

この点滴がなければ、わたしは今生命を維持できないんだろうなって、自分でもそう思う。





五条「しんどいな」





五条先生の手がわたしの頭にそっと乗る。





五条先生……。





そう呼びたいのに、声を出す力がない。

ぼーっとするけど、五条先生の優しい顔はちゃんとはっきり見えてるのに……。





五条「ひな、眠れてるか……?」





頭にあった五条先生の手が頬へと移る。



そういえば、わたしまともに眠れてない。

高熱、咳、喉の痛み、吐き気と嘔吐、そして、発疹の痛痒さ。

ぐったりしているはずなのに、目を閉じてもどこかずっと意識のあるような朦朧としている感じ。

目の下に酷いクマでもできてるのか、五条先生は少し眉をハの字にして、目の下をなぞるように頬を撫でる。





五条先生の手、冷たくて気持ちいいな……。





頬を撫でられるのが気持ちよくて、わたしは急になんだかうとうと。

一方、五条先生は、





五条「熱がこもってるか……」





頬を撫でるのと反対の手で布団の中にあるわたしの手を握り、独り言みたいに言って、





五条「ひな暑くないか? 暑いよな、ちょっと待ってな」





わたしの手足が出るように布団の位置を整えると、再びわたしの手を握り、熱を測るようにおでこにも手を。





五条「少し楽になったか?」





そう聞かれ、返事ができない代わりに、わたしはそっと目を閉じると……















……………なんか、すごく心地いいな……。

身体はぽかぽか暖かくて、でも、肌に触れる空気は少し冷たくて……。

ふかふかなベッドに乗って、雲と一緒に空を流れてるみたい。

わたし、今夢の中なのかな……?

こんなに気持ちよく眠れるの、すごく久しぶり……。















…………ん? ……あれ?










……っ。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...