16 / 25
16
しおりを挟む
利奈はあ然と、まるで呼吸をするのも忘れたみたいに突っ立っている。
「優也は……、殺されたわけではなかったのね……、十文字くんに……」
「ああ、たぶん。優也に訊かなきゃ、どこまで正解なのかはわからないけどな」
「正解よ。納得だわ。だってぴったりと辻褄が合うもの。それに、びっくりもしているわ。まさかこのXを刻んだのが優也だったなんて……。とんだ悪戯坊主。最後の最後になんてことをしでかしてくれたのかしら。あの世に請求書を送りたいくらいだわ」
困った顔をしながらも、利奈は優しく微笑んでいる。
「このキズはやっぱり『十文字』じゃない。『X』だったんだ」
「認めるわ。十文字くんは無罪。名探偵の名推理に脱帽よ。けど思うの。ひょっとして優也も、この騒動を、十文字くんのせいにしようとしていたんじゃないかしら?」
「それはない」
利奈の問いかけを、俺はきっぱりと否定した。
「どうしてそこまで強く言えるの?」
利奈は真顔で首を傾げる。
「優也は十文字がもうこの世に生きていないことを知っていたからさ」
左の胸がズキリと痛んだ。
「どういうこと?」
「それは優也が、あそこに隠したものを見つければわかる」
俺は軽くアゴをしゃくって、天井を示した。
「あなたにはそれがわかっているのね?」
「ああ。あそこには十文字を殺した凶器が隠してあるはずなんだ」
「え? ま、まさか、優也が十文字くんを……?」
利奈は一瞬、口元を引きつらせた。
「とぼけないでくれ」
ゆるく首を振りながら俺はいった。
「十文字を殺したのはきみじゃないか……」
「優也は……、殺されたわけではなかったのね……、十文字くんに……」
「ああ、たぶん。優也に訊かなきゃ、どこまで正解なのかはわからないけどな」
「正解よ。納得だわ。だってぴったりと辻褄が合うもの。それに、びっくりもしているわ。まさかこのXを刻んだのが優也だったなんて……。とんだ悪戯坊主。最後の最後になんてことをしでかしてくれたのかしら。あの世に請求書を送りたいくらいだわ」
困った顔をしながらも、利奈は優しく微笑んでいる。
「このキズはやっぱり『十文字』じゃない。『X』だったんだ」
「認めるわ。十文字くんは無罪。名探偵の名推理に脱帽よ。けど思うの。ひょっとして優也も、この騒動を、十文字くんのせいにしようとしていたんじゃないかしら?」
「それはない」
利奈の問いかけを、俺はきっぱりと否定した。
「どうしてそこまで強く言えるの?」
利奈は真顔で首を傾げる。
「優也は十文字がもうこの世に生きていないことを知っていたからさ」
左の胸がズキリと痛んだ。
「どういうこと?」
「それは優也が、あそこに隠したものを見つければわかる」
俺は軽くアゴをしゃくって、天井を示した。
「あなたにはそれがわかっているのね?」
「ああ。あそこには十文字を殺した凶器が隠してあるはずなんだ」
「え? ま、まさか、優也が十文字くんを……?」
利奈は一瞬、口元を引きつらせた。
「とぼけないでくれ」
ゆるく首を振りながら俺はいった。
「十文字を殺したのはきみじゃないか……」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる