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玲伊サイド:ふたたび彼女に施術する理由
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「今日でもう香坂さんにお会いできないなんて、乃愛、ほーんとにつまらない。ねえ、今度、家に遊びに来て。おじい様にも『一度、お前の憧れの香坂くんを連れてきなさい』と言われてるの」
モデルを途中で交代させるという今回の暴挙は、お嬢様のわがままというだけでなく、俺と桜庭をくっつけたいという、彼女の祖父、桜庭茂三郎の意向が働いていたようだった。
桜庭茂三郎はKALENを出版している改進出版の副社長だが、以前、優紀が勤めていた改進ビルディングスの実質的なトップでもあった。
孫である乃愛が、あの会社で大きな顔をしていられるのには、そういう事情があった。
桜庭の祖父は大規模な再開発事業を手掛けたいという野心を持っており、不動産部門のテコ入れのために、香坂ホールディングスとのつながりを求めていた。
だが、父は、桜庭の祖父がどうも汚職に関わっているらしいとの情報を得ており、まったく相手にしていなかった。
業を煮やした桜庭茂三郎は、俺のファンだという孫を使うことを考えたらしい。
うちの孫はあれほど可愛いのだから、好意を示して近づけば、きっと俺が手を出すはずだ、と。
そして、その既成事実を盾に、俺たちを結婚させようと目論んでいたらしい。
もし、そんなことを本気で考えていたのだとしたら、目も当てられない〝孫バカ〟だ。
浅はかすぎて、一笑に付す値打ちもない。
心のなかでそんなことを考えているのをおくびにも出さず、俺は言った。
今、彼女を嫌っていることを知られるのは、ちょっとまずかった。
「スケジュールが立て込んでいまして難しいですね。それに……雑誌掲載まではあなたと個人的なお付き合いはしないほうが無難じゃないかな。口さがないマスコミにいろいろと詮索されるのは困りますので」
「じゃあ、雑誌のことが終わったら来てくださる?」
「いや、先のことなので、まだなんとも……」
そのとき、俺のスマホが鳴った。
最高のタイミングだ。さすが、笹岡。
「はい。ああ、わかった、すぐ行く」
電話を切り、残念そうな表情を作ってから、ふたたび彼女に視線を向けた。
「すみません。来客がありまして。申し訳ないですが、今日はこれで失礼します」
「あら、そうなの」
残念そうに舌打ちする桜庭に、歯が浮きそうになるのを我慢しながら、俺は言った。
「そうだ。一周年記念のイベントですが、よろしければ、ぜひお友達をお誘いください。せっかく施術の効果で美しくなったのだから、その姿をみなさんにご覧いただきたくないですか? もし良ければ、ディナーパーティーにもご招待させていただきますよ」
その言葉に、桜庭乃愛は目を輝かせる。
「まあ、嬉しい。そのパーティーの会場はここのレストランよね。みんな喜ぶわ。何人ぐらい?」
「お呼びになりたい方、全員で構いませんよ。人数が決まったら、笹岡にご連絡いただけますか」
「わかったわ」
モデルを途中で交代させるという今回の暴挙は、お嬢様のわがままというだけでなく、俺と桜庭をくっつけたいという、彼女の祖父、桜庭茂三郎の意向が働いていたようだった。
桜庭茂三郎はKALENを出版している改進出版の副社長だが、以前、優紀が勤めていた改進ビルディングスの実質的なトップでもあった。
孫である乃愛が、あの会社で大きな顔をしていられるのには、そういう事情があった。
桜庭の祖父は大規模な再開発事業を手掛けたいという野心を持っており、不動産部門のテコ入れのために、香坂ホールディングスとのつながりを求めていた。
だが、父は、桜庭の祖父がどうも汚職に関わっているらしいとの情報を得ており、まったく相手にしていなかった。
業を煮やした桜庭茂三郎は、俺のファンだという孫を使うことを考えたらしい。
うちの孫はあれほど可愛いのだから、好意を示して近づけば、きっと俺が手を出すはずだ、と。
そして、その既成事実を盾に、俺たちを結婚させようと目論んでいたらしい。
もし、そんなことを本気で考えていたのだとしたら、目も当てられない〝孫バカ〟だ。
浅はかすぎて、一笑に付す値打ちもない。
心のなかでそんなことを考えているのをおくびにも出さず、俺は言った。
今、彼女を嫌っていることを知られるのは、ちょっとまずかった。
「スケジュールが立て込んでいまして難しいですね。それに……雑誌掲載まではあなたと個人的なお付き合いはしないほうが無難じゃないかな。口さがないマスコミにいろいろと詮索されるのは困りますので」
「じゃあ、雑誌のことが終わったら来てくださる?」
「いや、先のことなので、まだなんとも……」
そのとき、俺のスマホが鳴った。
最高のタイミングだ。さすが、笹岡。
「はい。ああ、わかった、すぐ行く」
電話を切り、残念そうな表情を作ってから、ふたたび彼女に視線を向けた。
「すみません。来客がありまして。申し訳ないですが、今日はこれで失礼します」
「あら、そうなの」
残念そうに舌打ちする桜庭に、歯が浮きそうになるのを我慢しながら、俺は言った。
「そうだ。一周年記念のイベントですが、よろしければ、ぜひお友達をお誘いください。せっかく施術の効果で美しくなったのだから、その姿をみなさんにご覧いただきたくないですか? もし良ければ、ディナーパーティーにもご招待させていただきますよ」
その言葉に、桜庭乃愛は目を輝かせる。
「まあ、嬉しい。そのパーティーの会場はここのレストランよね。みんな喜ぶわ。何人ぐらい?」
「お呼びになりたい方、全員で構いませんよ。人数が決まったら、笹岡にご連絡いただけますか」
「わかったわ」
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