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第一章 勇者と魔王
プロローグ
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「さあ勇者よ、ここから先はあなたの戦いです」
聖女が俺にかかっていた幻影の魔法を解いて、魔王城にむけて背中を軽く押した。
幻影が解かれた俺の髪はさっきまでの金髪から漆黒に変わり、まるで角のない魔族のように見えるだろう。
「いいか、しっかり戦うのだぞ。魔王に勝てば、お前も晴れて勇者として自由の身だ」
ガタイのいい槍使いが腕組みして偉そうに言い放った。
さっき魔王城の門番を切り捨てたその槍は、逃げようとすれば躊躇なく俺を切り裂くのだろう。
「このペンダントは、無事帰ってくるまで私が預かっておきましょう」
陰気な顔の魔法使いが、防御効果のある魔石のペンダントを俺の首から引きちぎった。
それはきっと俺の帰りを待つことなく、アルハラ国王のもとに届けられる。
魔族たちの国ガルガラアドの最奥にある王城、通称魔王城。その奥へと侵入するのは『勇者』と呼ばれる俺、ただ一人だ。ここまでの道のり、身を隠しつつ最小限の戦いでガルガラアドに乗り込んできた俺たち四人。勇者一行という名の同行者たちの本当の仕事は、実は俺が逃げ出さないように見張り、魔王城へと入るのを見届けることだった。俺は予定通り魔王城に押し込まれ、こいつらは仕事を終えて城に報告に戻る。
「勇者は魔王城に討ち入りましたが残念ながら力及ばず……」
アルハラ国王へと伝えられるセリフはもう決まっている。ここ数十年の間、何度もそうして、勇者ただ一人が魔王城に放り込まれてきたのだから。
味方であるはずの男の槍は、今、間違いなく俺の背中を狙っている。振り返れば、次は俺が切られるのだろう。まだ足元でうめく魔族の門番をまたぎ、俺は否応なく門をくぐった。ただ一人、地獄への門を。
聖女が俺にかかっていた幻影の魔法を解いて、魔王城にむけて背中を軽く押した。
幻影が解かれた俺の髪はさっきまでの金髪から漆黒に変わり、まるで角のない魔族のように見えるだろう。
「いいか、しっかり戦うのだぞ。魔王に勝てば、お前も晴れて勇者として自由の身だ」
ガタイのいい槍使いが腕組みして偉そうに言い放った。
さっき魔王城の門番を切り捨てたその槍は、逃げようとすれば躊躇なく俺を切り裂くのだろう。
「このペンダントは、無事帰ってくるまで私が預かっておきましょう」
陰気な顔の魔法使いが、防御効果のある魔石のペンダントを俺の首から引きちぎった。
それはきっと俺の帰りを待つことなく、アルハラ国王のもとに届けられる。
魔族たちの国ガルガラアドの最奥にある王城、通称魔王城。その奥へと侵入するのは『勇者』と呼ばれる俺、ただ一人だ。ここまでの道のり、身を隠しつつ最小限の戦いでガルガラアドに乗り込んできた俺たち四人。勇者一行という名の同行者たちの本当の仕事は、実は俺が逃げ出さないように見張り、魔王城へと入るのを見届けることだった。俺は予定通り魔王城に押し込まれ、こいつらは仕事を終えて城に報告に戻る。
「勇者は魔王城に討ち入りましたが残念ながら力及ばず……」
アルハラ国王へと伝えられるセリフはもう決まっている。ここ数十年の間、何度もそうして、勇者ただ一人が魔王城に放り込まれてきたのだから。
味方であるはずの男の槍は、今、間違いなく俺の背中を狙っている。振り返れば、次は俺が切られるのだろう。まだ足元でうめく魔族の門番をまたぎ、俺は否応なく門をくぐった。ただ一人、地獄への門を。
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