ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう

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第4章 強さを

20 鬼の名はウラ

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 ドスン、バキバキッ。ドスン、ガガガ。
 何かが森の笹薮を踏み倒しながら近付いてくる。
 起きたばかりのコイルたちも、すぐに戦う準備を整えてテントの外に出た。

 少しずつ明るくなり始めた空が、木々の間から見える。足音の主はまだ遠く、木に隠れてはっきりとは見えないが、どう見てもサイズが鬼熊ではなかった。

「何、あれ?でかっ!」

「鬼熊……じゃないよね?」

「ああ、大きさが全然違うが……あれと戦うのか……」

 あまりの大きさに一瞬立ちすくむコイルたちだったが、いつまでも呆然としているわけにはいかない。一人てきぱきとテントを片付けるフェイスにありがとうと声を掛けて、武器を手に取り、足場を確かめた。
 決して戦いやすい場所ではないが、森に囲まれてかろうじて野営できるような場所なので、他に開けた場所もない。いや、前方から迫ってくる巨体が踏み潰して腕で薙ぎ払った跡は解放感があるが。

「あれは、鬼です。鬼熊からの進化種で、オーガとは別系統ですね。魔法は使いませんが怪力です」

 フェイスが教えてくれた。近付くにしたがって、その異常な大きさがわかる。背の高さは5メルを超えるだろう。見た目は鬼熊よりも人に近く、頭には耳の間に二本の短い角が見える。褐色の体から丸太のように太い腕が伸び、その手の先にはおそらく武器に使うつもりであろう、引き抜いたばかりの丸太を持っている。

「ちょっと大変そうじゃん。どうする?」

「全員でかかれば、どうにかなるか。そういえばコイル、アレ、持って来てるんだろう?」

 ミノルがコイルを振り返ると、コイルも思いついていたらしく、リュックを漁っていた。
 取り出したのは……

「ふっふっふっ。超高速回転魔動ノコギリ高品質魔石モード!」

 道なき道を進むときに、必要かと思って準備していた魔動ノコギリだった。しかもリュック用の予備魔石として持っていた高品質な魔石をセットすれば、回転数も上がり、噴き出すエアジェットの威力も倍増する。
 コイルの手にした武器を見て、秋瞑は手に持った剣を消し、代わりに近くに生えていた適当な太さの木を、3メルほどの長さにコイルに切ってもらい、それを重さを確かめるように振ってみた。

「良いですね。私はこれで行きます」

 鬼は急ぐ様子もなく、一歩一歩、森を踏み分けて近付いてくる。フェイスはみんなの荷物を持って後方に下がり、天花は少し離れた木の枝に待機した。
 顔が分かるくらいに近付いた時、マツが一歩前に立って声を掛けた。

「久しいな、ウラ」

「マツか。……魔力の匂いが変わったな。何故人と共に居る?」

「ふん。負けたからだ。それにダンジョンマスターが、人と戦わせてくれると言うのでな。同じく引きこもりのウラを誘いに来たのだが」

 マツの言葉に、コイルたちを見下ろして、鬼のウラはフッと笑った。

「負けたのなら仕方がないな。ふむ、ダンジョンか。ダンジョンの主になるのも、また一興。俺がお前たちに勝てばいいのだな」

「負けたら、うちで働いてもらいますよ!」

 キュイーーーーン
 秋瞑のセリフと同時に、コイルの魔動ノコギリが唸り声をあげた。
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