【R18】乙女ゲームの悪役令息の妹に転生しました!お兄様の処刑フラグを全力で叩き壊します!!

はる乃

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本編

魔力タンク

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魔力涸渇を起こした日から1週間が経ち、私は学校にて、とある危機に瀕していた。
剣術授業で、あの学校一の強者と名高いグリード相手に奮闘した事が学校中に広まってしまい、各研究会やら何やらからのお誘いがめちゃめちゃ来るようになってしまったのだ。

休み時間にも頻繁に話し掛けられるようになって、私はホトホト困り果てていた。図書室へ行く時間が作れないのだ。休み時間は図書室で魔力量増加に関する調べものがしたいのに。

* * *

翌日。
私はいつもより早く屋敷を出て、学校に着いた。帰りはあまり遅く出来ないから、お母様に事情を話して、朝早くに学校へ行く事にしたのだ。

「図書室図書室……」

少しでも魔力量を増やさないといけないからね。何か良い本があるといいけど。そう思って図書室へ足を踏み入れると、早朝だというのに、既に先客が居た。

あの後ろで1つに束ねた、長いディープグリーンの髪は…………

「グリード?」

……………………
…………


早朝の図書室。
この学校では、生徒がいつでも調べもの等出来るように、早朝から図書室が開いている。聞いた話では、歴代の成績優秀者達が、早朝によく利用していたのだとか。

やっぱり優秀な人達は時間が足りないものなのね。私は夜、時間が取れないからだけど。
私は魔力量増加の参考になりそうな本を探すため、図書室に入った訳だが、中には既に先客が居た。

窓から差し込む光りに、艶やかなディープグリーンの長い髪が照らされてとても綺麗。此方を振り返ったグリードのエメラルドグリーンの瞳が、まるで宝石みたい。
流石攻略対象者。私の元に群がってきていた女の子達よ。真の美少年とは、グリードのような人の事だと思うよ。

「セルジュ?」
「こんな所で会うなんて、偶然ですね」

グリードは一瞬だけ目を見開いた後、私を見て穏やかに瞳を細めた。相変わらずのイケメンだなあ。お兄様といい勝負かも。

「そうだな。セルジュは調べものか?」
「はい。魔力量を増やしたくて、何か良い方法はないかと探しに来たんです」
「魔力量を?…………もしや、この間の魔力涸渇を気にしているのか?」
「いや、まぁ、それだけじゃないんですけど。使いたい魔法があって……」
「そうなのか。……魔力が欲しいなら、いくらでも俺がくれてやるぞ?」
「!」

くれてやるって言われても、溜めておけないし。常時自分の魔力として欲しいから、ちょっと違う気が―――
いや、待って。それいいかも。
ずっと自分の魔力を増やさなきゃ増やさなきゃと思ってきたけど、この世界には簡単な魔法式の組み込まれた魔導具がある。隠し通路の明かりみたいなやつ。あれは使用する時に魔力を流さないといけないけど、そこに魔力を溜めておけるタンクみたいなのをつける事って出来ないの?それが可能なら、普段魔法を使用しない日に溜めるだけ溜め込んで…………

私が思考の渦に沈んでいると、グリードが首を傾げながら「セルジュ?」と声を掛けてきた。私はハッと我に返り、劇的に魔力量を増やす事より、遥かに現実的な希望が見えた気がして、私は思わずグリードに満面の笑みを浮かべていた。

「ありがとう!!なんか、グリード……先輩のお陰で、良い案が浮かんだかもしれません!魔力量増加の方法と並行して探してみます!」
「……っ。よく分からないが、何か役に立ったのならば何よりだ。それと、セルジュ」
「はい?」
「あまり、その、俺の前ではいいが、他の者の前でそんな風に笑わない方がいい」

え?
何それ、どーゆう事??
私、そんな変な顔してるの??

「僕の顔、何かおかしいですか?」
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだが。……気を付けた方がいいと思うぞ」
「??……分かりました」

私がそう言うと、グリードは僅かに笑みを浮かべて、何故だか私の頭を撫でてから去っていった。気を付けた方がいいって、何に気を付ければいいんだろう?というか、グリードは何の用で図書室に?

「本の返却でもしてたのかな?」

グリードの出ていった方を見ていると、視界の端に時計が映った。朝のHRの時間まで、まだ少し余裕がある。私は急いで参考になりそうな本がないか調べに走ったのだった。


* * *


「セルジュ?!教科書以外にも、まだ本を読むつもりなのか?!」

朝のHRが終わり、教科書を取り出していると、アレクが私の机の端に置いてある本を見て、信じられないといった感じの声を上げた。
いやいや、普通に本くらい読むでしょ。教科書しか読まないとか、逆に真面目な気もする。

「アレクは普段、本を読まないの?面白いよ」
「字ばっかり見てると眠くなるから嫌だ」
「あー、成程ね。アレクらしい」
「アレクは相変わらずだな。……一時間目は魔法か。そういえば、今日から特別講師が来るらしいぞ」
「特別講師?」
「魔導具に詳しい奴らしい。その能力を買われて一応魔法師団に入ってるらしいけど、戦闘はからっきしの魔導具オタクだと聞いたぞ」

―――なんだって?!

それは是非ともお会いしたい!!
このタイミングでそんな特別講師が来るなんて、まさに天のお導き!!
ゲームでは魔法師団の人なんて出て来なかったけど、やっぱり魔法の事は魔法師に訊くべきだよね!!

私は瞳を輝かせて、『特別講師』の先生が来るのを待ったのだった。


* * *

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