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本編
男装令嬢あるあるからの~お約束
しおりを挟む入団式を終えた私達新人騎士は、先輩騎士数人の案内によって寮へと向かった。これから私達が住む事となる、新人騎士専用の『星屑寮』だ。
第一訓練場から寮までは、ゆっくり歩いて十五分程度の距離。寮は横に長い三階建ての建物で、外観は名前と違って結構地味。建物は石造りでベランダ等は無く、前世の学生寮とか、アパートに近いかもしれない。ちなみに入口は正面に一つだけである。
(星屑寮って言うか、星屑荘……)
……これは間違いなく乙女ゲーム製作スタッフの手抜きだ!!だってゲーム画面で見た『ナンバーズ』や『ガーディアンナイト』達の寮はもっとキラキラしていたもの!!
しかし、星屑荘の中は意外と綺麗で魔法による冷暖房完備。一階中央には落ち着いた感じのソファーや椅子の置かれた談話室もあった。住めば都な感じ??
そうして先輩騎士に案内された私の部屋は、二人部屋だった。先輩騎士は私に鍵を一つ渡し、「君のルームメイトは別の奴が連れてくると思うよ。夕食は騎士団本部の食堂で食べてね!」と言って、爽やかな笑顔で去っていった。
……そうだよね。
寮なんだもの。しかも私は新人騎士。新人騎士一人に対して一部屋が宛がわれる訳ないですよね。当然シェアですよね。前世風に言うとシェアルーム。普通に言うと相部屋?まぁとりあえず、着替えとか色々ヤバイよね。男装令嬢あるある来ましたよ、コレ。
えーと。男装令嬢小説や漫画ではどうやって切り抜けていたっけ?ベッドは二段ベッドになってるから……
確か小説とかでは二段ベッドの上を使ってた気がする!よし、上を使わせてもらおう!
「たまたま私の方が先に案内されたみたいだけど、これってラッキーだよね。今の内に荷物を二段ベッドの上に載せちゃおう。ごめんね、まだ知らぬルームメイトよ」
私は二段ベッドの梯子に手を掛け、荷物を持ったまま上り始めた。すると、突然部屋のドアノブをガチャリと回して誰かが中へと入って来てしまった。
(ちょ、ノックしてよ!!)
入って来たのは、お兄様と似たような髪色をしている金色の瞳をした少年だった。髪色がお兄様と似ていると言っても、お兄様の髪は肩まであるしサラサラなので、ふわっとした感じの短い髪型のこの少年と間違う事はないだろうけど。
なんて思いながらマジマジと見ていたら、その少年は私を見るなり「女?」といきなり爆弾を投下してきた。
「はぁ?!誰が女……ひゃ?!」
「あぶなっ……?!」
荷物をベッドに載せようとしていたところだった為に、私は突然の爆弾投下に動揺してバランスを崩し、梯子から落ちてしまった。
(あれ?落ちたのに痛くない……)
恐々目を開けて見ると、爆弾投下少年が落ちてきた私を受け止めてくれたようで、私の下敷きとなっていた。私が頭を打たないように、頭を守るようにぎゅっとしてくれていて、私は思わず目を見張る。なんてこった。実はめっちゃ良い人??
とりあえず起き上がろうと思って、声を掛けようとした刹那。
部屋の外から誰かの走ってくる足音が聞こえてきて、その足音の主は何故だか私達の部屋の前で止まり、ノック無しで部屋の扉を勢いよく開いた。
(なんでまたノック無し?!ノックしてよ!―――って……)
そう思いながら部屋に入って来た人物の顔を見て、私は心臓が止まりそうな程に驚いた。
何故なら、その人物とは私のよく知っている人物だったからだ。
「……なっ?!」
青褪めたお兄様が、私を見て固まっている。
というか、今の状況ってまずい気がする。
(これって何かのお約束?!)
* * *
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