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《分岐》リアム

リアムの私情①(※修正済02/02/19)

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公爵家別邸の庭にあるガゼボで、リアムに今までの経緯を全て話し、一休みした私は、それからまもなくして別邸が半壊するところを目の当たりにした。
恐らくバルトロの仕業だろうと思うのだが、地下牢にいた時、グレンが私の魔導具は執務室にあると言っていたのを思い出して、少しの不安が募る。
そうして、別邸が半壊してからまもなく、私達の元へ戻ってきたバルトロが、開口一番にこう言ったのだった。

「正直に申し上げますと、僕は全く満足出来ておりません。強者が居ないなら、好きなだけ遊べてもつまらないだけです」
「ふーん。それで?この邸の主は?」
「………………」

バルトロは立ったまま、ガゼボの柱に身体を預け、リアムからスッと目を逸らした。リアムはガゼボ内で足を組んで座っており、頬杖をついた体勢でバルトロとの問答をしていたのだが、目を逸らしたバルトロを見て、ひくりと口元をひくつかせ、額に青筋を浮かべている。

「……成程、よく分かった。つまらないからと八つ当たりで暴れ過ぎて、気付いた時には邸が半壊。肝心の主は見当たらなかったと。そういう事?」

何だか凄い場面に居合わせたなぁ。
あのリアムが誰かに説教しているなんて意外過ぎる。バルトロは見た目文官っぽくて口調もやたらと丁寧だけど、団長にも怒られてたし、問題児な印象が強いから誰かに怒られていても違和感ないけど。

「あの、リアム。バルトロ」
「ん?どうかした?」
「セルジュ君、僕を助けてくれるのですか?」
「いえ、そういう訳じゃないんですけど。この邸に居ないって事は、転移魔法陣を使って本邸の方へ逃げたんじゃないですか?」
「……どうだろうね」
「え?」

私が不思議に思って首を傾げると、リアムは額に青筋を浮かべたまま、バルトロにいつもの胡散臭い笑顔を向けた。睨まれるよりも恐ろしく感じるのは一体何故なのだろう?

「バカトロ、時空石壊したでしょう?」
「…………」
「確か時空石って、固定転移魔法陣の起動に使う魔石でしたっけ?」
「そうだよ。あれがないと転移魔法陣は使えなくなる。まぁ、時空石の代わりに時属性持ちの魔力を使えば転移は可能だけどね」
「成程。……時属性持ちってなかなかいないのが普通ですし、それに……」
「わざわざ稀少な時空石を使っていたなら、この邸の主は時属性を持っていないと考えるのが妥当だね」
「ですよね。でも、バルトロが時空石を壊す前に公爵が転移していた可能性は?」
「その可能性もなくは無い。……まぁ、このまま帰ってもいいんだけどさ」
「え?」

どういう事?
リアムは任務で公爵を捜しているのかと思っていたのに、違うの?

私が困惑しながらリアムを見つめていると、リアムは私の視線に気付いてにこりと笑った。

「バルトロ。セルジュと先に騎士団本部へ送っておいてよ」
「え?!」
「……リアム様?」
「セルジュを無事に騎士団へ送ったら、またこっちに戻って、オリバーも探しておいて。いたら【影移動】で戻れ」

リアムはそう言うと、組んでいた足を解き、サッと立ち上がってガゼボから出ていく。思わず私が「リアム?」と呼び止めると、リアムは振り返って瞳を細めた。

「私もすぐに戻る。それと、セルジュが心配してる・・・・・魔導具も取って来るから」
「!」

確かに、魔導具を取られた事も話していたけれど。私が魔導具の事を心配してるって、どうしてすぐに気付いたんだろう?
確かにリアムは人の纏う色で感情を読み取る事が出来るけど、何に対してとか、そこまで詳細に分かるものなの?

(…………まぁ、リアムだから分かるのかもしれない。あの人は何でもアリなところがあるから)

私は、『魔導具を取りに行くなら、自分も一緒に行く』と言った。
だけど、リアムは何故だか同行を許可してくれなかった。『本当にすぐに戻るから』と言われてしまい、私はバルトロと共に帰るほか、選択肢がなかった。

リアムは公爵であるダルトン卿を捜しに行ったのだろうか?
でも―――……

(任務でもないのに、どうして?)


* * *
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