【R18】乙女ゲームの悪役令息の妹に転生しました!お兄様の処刑フラグを全力で叩き壊します!!

はる乃

文字の大きさ
224 / 245
《分岐》アレク・ユードリヒ

アレクvsバルトロ

しおりを挟む


(どうしてこんな事になったの?)

ナンバーズ専用の訓練場で、アレクとバルトロが戦っている。それは鍛練や模擬戦とは思えないもので、まるで真剣勝負だった。二刀流のアレクと素手のバルトロ。普通ならば、剣を持っている方が有利だろう。けれど、相手はあの・・バルトロだ。
バルトロはアレクの剣を悉く避け、手の甲で受け流していく。けれど、アレクの剣技も本物だ。逞しくも靱やかな筋肉をしならせて、バルトロの拳をギリギリで回避し続けている。

「なかなかやりますね。こんなに攻撃を避けられたのは久しぶりかもしれません」
「はぁ?全然本気じゃねェくせに……!」
「当たり前でしょう?本気を出したら、すぐに終わってしまいますからね」
「……この野郎っ!!」

バルトロの拳がアレクの顔に向けて繰り出されたが、アレクが顔を左に傾け、寸でのところでソレを避けた。アレクは直ぐ様体勢を僅かに低くし、二刀の刃を交差させてバルトロの胴を斬りつけようとする。しかし、バルトロは瞬時に上へと跳んで、アレクの頭上をくるりと回転しながら着地した。アレクの背後をとったバルトロが、身体を捻って更に拳に力を込める。そうして繰り出された拳が、今までギリギリで回避していたアレクの脇腹にクリーンヒットしてしまった。

「……ぐっ!!」

バキバキと嫌な音が聞こえた。
アレクのあばら骨が折れた音だ。ロゼリアは口元を手で押さえて、顔色を無くしていく。バルトロが地面を蹴って高く速く跳んだ。今の攻撃で吹っ飛んでいったアレクに追いつき、空中で更にもう一撃拳を加えようとしている。
だが、一瞬驚いたような顔をして目を見張ったバルトロが、拳ではなく、身体を捩るように回転させて、アレクに蹴りを入れた。

「アレク!!」

アレクが地面に叩きつけられ、土煙が舞う。訓練場の地面は綺麗にならされているのに、アレクが叩きつけられた所は、バルトロの蹴りの威力でクレーターのように凹んでしまっていた。

ロゼリアが急いでアレクの元へ駆け寄ろうとすると、バルトロがにっこりと良い笑顔でロゼリアの腕を掴んだ。

「離して!!」
「セルジュ君。彼、見込みがありますよ。見て下さい」
「?!」

見せられたバルトロの腕には、剣で斬られた深い切り傷があった。ゴポッと血が噴き出していて、白い部分が見えている。

「?!……バルトロ、それ……!」
「僕が空中でもう一度殴ろうとした時、彼が技を出してきたんです。あばらが折れているクセに、なかなかに良い根性だ。この傷は治癒師に治してもらわないといけません。……治癒師の世話になるのは久しぶりですよ。ふふ、思っていたよりも楽しめました。またいつでも相手になると、彼に伝えておいて下さい」
「…………っ」
「ああ、そうだ。此方に治癒師を寄越しますから、少しの間、待っていて下さいね」

バルトロは上機嫌で訓練場から退室していった。ロゼリアはアレクの元へ向かい、「アレク!!」と呼び掛ける。アレクはボロボロで酷い打撲傷が出来ており、口や鼻から血が出ていた。ロゼリアはアレクの顔を両手で包み込み、目を瞑っているアレクを見て、名前を何度も呼びながらポロポロと涙を流してしまっていた。

「……いってぇ…………」
「アレク?!」
「く、そ…………マジであいつ、強すぎだろ……」

身体を起こそうとするアレクに、ロゼリアは焦って抱き着いた。アレクの身体を起こさないように、必死に強く、ぎゅうっとしがみつく。
アレクが目を見開いて、ビシッと固まった。

「せ、セルジュ?」
「馬鹿アレク!!なんでバルトロに喧嘩を売ったんだよ!それに、起き上がっちゃ駄目だ!骨が折れてるんだよ?!」
「なんでって……………いや、まぁ、確かに骨は何本か逝っちまった感じだけど、起き上がる事くらいは……」
「駄目!絶対駄目だから!!大人しくじっとしてて!治癒師が来るまで、ずっとこうして押さえとくからな!!」
「………………セルジュ」
「駄目!……僕、離れないから。うっ。うぅ~~!アレクの馬鹿!アホ!」
「そんなに泣くなよ。俺が頑丈なの、知ってるだろ?」
「泣いてないっ!」
「…………いや、すげー泣いてるけど」
「泣いてないったら泣いてないっ!」
「……わかった。わかったから……」
「っ?」

アレクが、私の身体を左手でぎゅっと抱き締め返した。私は驚いてアレクを見つめる。すると、アレクが徐に右手で、自身の鼻血をぐいっと拭った。

「……アイツに喧嘩を売った理由なんて、一つしかねぇよ」
「え?」
「アイツ、セルジュの腰を抱いて口説いてただろ?」
「…………ヘ?」

ロゼリアは目を丸くした。
バルトロに口説かれた覚えはない。アレクが何を言っているのか、理解出来なかった。

「普段からあんなに密着してくるのか?」
「な、何言ってるの?アレク、僕はバルトロに口説かれてなんか……」
「セルジュ」
「……っ!」

地面に寝転がったままのアレクの上に乗って、抱き締められているロゼリアは、耳元で聞こえるアレクの声に思わずドキリとしてしまう。

「お前、昔から鈍いよな。可愛いけど、無防備過ぎて心配になる」
「か、可愛いって……僕、男なんだけど……」
「そうだったな。あーあ。なんで男なんて好きになっちまったんだろ」
「アレク……?」
「でも、その割りには柔らかいよな。柔らかくて、良い匂いで……」
「ちょ、アレク?!やっ……」

スンスンとアレクがロゼリアの匂いを嗅いで、ロゼリアの身体の感触を確かめるように撫でていく。
ロゼリアはビクリと身体を震わせて、顔を真っ赤にした。

「あ、アレク。撫でるの、擽ったいよ……」
「じゃあ、起き上がってもいい?」
「それは駄目。怪我に響くから、大人しくしてて」
「なら、お前は俺に大人しく擽られてろよ。……つーか、駄目だ、俺。お前が可愛くて、やばい」
「ひゃっ?!ちょ、本当にちゃんとじっとしててよ!それと、擽るの止めろって!!」
「…………なぁ、セルジュ」
「アレク!いい加減に……」

ロゼリアが自身の身体を起こそうとするけれど、アレクの力が強くて離れる事が出来ない。アレクの怪我が気になって、アレクの身体を強く押し返す事も出来ずに、ロゼリアはアレクの上で、頭以外身動きが取れなくなってしまっていた。

ロゼリアが顔を上げてアレクに抗議の眼差しを向ける。だが、アレクの瞳は熱を帯びていて、ロゼリアは瞳を逸らす事も出来ずに、その瞳に捕らえられてしまった。

「セルジュが好きだ。……俺の気持ち、無かった事にしないでくれ。好きだ、セルジュ」


* * *
しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...