星をください

Enchanter_k

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死んだ人は星になる。見送った人には宝石が残る。

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「星をください」
「はい?」
 晴れた日、何でも屋の『ラピス』に一人の客が来ていた。
 滅多に来ない客、小さい店、そこには一人の男が女かもわからないような、子供のような客が来た。
「宝石をください」
「あ?…スターサファイアのことか?」
 昔石が好きな、…あぁ、兄貴が話していた気がする。
 こんなボロい店二人でやって、今じゃ店だけ残していなくなったけど。
 そんな記憶を辿り、問いかける。
 だが、
「ください」
 この客はそれしか言わなくなってしまった。
「いや、しっかり言ってもらわねぇーと」
「何でも屋なんでしょ?なら叶えてください」
 たった一人の店員、いや、店長のセドナは動きを止める。
 要求以外に言葉を喋れることに驚いたのだ。
「ください」
 またそれしか言わなくなってしまったけれど。

 仕方なく依頼を受けることにした。
 聞くと夜、隣町のルルタイアの丘に来てほしいとのこと。
 そこで手に入るとのこと。
 そして自分では背伸びしても取れなかった、とのことだった。
 だが疑問は残る。
 結局星や宝石とはなんのことだったのか、
 そんな隣町の丘に目的のものはあるのか、
 自分はなぜこの依頼を受けたのか、

 そう、自分でもよくわからない。
 なぜこの依頼を引き受けたのか。
 強いて言うならなんとなく、というか、気づいたら依頼を受けてしまっていたような気もする。
 それに、あの子供?は不気味というか、あまり…近すぎたくない。まるで機械のような雰囲気も感じさせた。
「はぁ…」
 そこまで思いを巡らせ、ため息をつく。
 受けてしまったなら、最後までやらなくてはならない。
 依頼料はあまり期待はできないが、とにかくやることだ。
 兄貴もよくそう言っていたし。
 セドナはのっそりと準備を始めた。

「ください」
 夜、ルルタイアの丘のド真ん中に到着して、例の子供らしき依頼者と合流した直後にセドナに放たれた言葉がそれだった。
 セドナは呆れもため息も飲み込んだ。
「…で?欲しいなら場所とか、何をしろとか、教えてくれよ」
 するとその依頼者…ガキンチョは何も喋らない。
「…わからないのか」
「違う」
「は?」
「あとちょっと、目を隠して」
 表情も変えずに最低限。
 子供っぽい口調のようで、熱を感じない言葉。
 思わず眉を寄せる。
「喋らないで」
 言われた通りにする。
 少しイラつく、でもこれも仕事だと黙ってやる。


「……」
 何分か経ったのだろう。
 何も起きないし、指示も来ない。
 もしかしたらイタズラだったのか、そう何か言おうとした時——
「いま」
 視界が広がる。
 そこには、

「——ほし?!」
 何か、キラキラ光るものが無数に浮いている。
 不思議と眩しくないが、なんだか変だ。
「~~~ーー」
 声がする?
「…兄貴?」
「捕まえて、あれ」
 反射的にそちらを見る。
 そこには少し大きめの星が、
「帰る、宝石取って」
「はぁ?!?!何がどうなってっ、てか兄貴は死んだはずじゃ」

 ———セドナ

 ——兄の教えは、依頼者の依頼は絶対最後まで

「あぁあああ!!もうッ!!」
 兄の声が響く星の、それとは反対方向の離れた場所に浮いている星、そのガキンチョが言う星をとにかく掴んだ。
 なにか、硬いーー

「?!」

 突然強く光出す。
「離さないで!」
 その声に驚く。そんな声出せたのかと思うような大きな声、そして反射的に力を込めた。
 眩しい。
 なにか、

 一瞬にして光に包まれる。



 ーーー
 ーー
 ー

「………ん、?」
 目を開ける。
 そこには何もない。
 最初と同じルルタイアの丘。
 風も止んでいる。
 光もない。
 …兄の声も、
「兄貴?!ガキンチョ——」
 辺りを見渡す。
「……あ、れ?」
「…何も、ない…?」
 すると手に感触。
 手のひらを開ける。
 体勢は掴んだ時のままだった。
 ——星
 いや、違う。
 これは、スタールビーだ。
「な、なにが…」
 星の中心にこれがあったってことなのか、
 そもそもあの光は星だったのか、
 さっきのガキンチョは…?

 ——死んだら星になるんだよ?
 ——星はどうして光ってるの?
 ——実はね、こんな話があってーーー

 これはばあちゃんから聞いた話。
 そう、
「…星が光ってるのは、真ん中に宝石があるから、その中に、死んだ人がいて、でも、うっかり宝石から出てしまうと……」

 ——だからね、もし宝石に帰れなくて困ってる子がいたら助けてあげなさい。しっかり星に返してあげれば、またお空で輝き出して、

 ———お空に戻れた証に、一つの宝石を落としてくれるんだよ



 風が、鳴いている。
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