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第2話:魔法を否定する男、魔法を使う
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火球は――燃えた。
爆発ではない。
衝撃波も最小限。
対象のみを正確に焼き切る、極めて効率のいい現象だった。
「燃焼温度は……少なくとも二千度以上か」
俺は腕時計型の簡易センサーを見ながら、そう結論づける。
魔法だのスキルだのという言葉は使わない。
理解できないだけで、現象そのものは起きている。
問題は――
「なぜ、俺が使える?」
ダンジョンに入ってから、身体に違和感はない。
疲労もなく、集中力も落ちていない。
むしろ若い頃より頭が冴えている気さえする。
通路の先から、二体目のモンスターが現れた。
さっきより一回り大きい。
若者の探索者なら、ここで距離を取り、叫び、連携を取るだろう。
だが俺は違う。
立ち止まり、角度を計算し、壁との距離を測る。
「最小出力で十分だな」
火球。
今度は小さく、速く。
――一瞬。
モンスターの胸部だけが正確に焼き抜かれ、倒れた。
床も壁も焦げていない。
「……効率が良すぎる」
感嘆ではない。
純粋な警戒だ。
そのとき、背後から声がした。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
振り返ると、二十代前半の探索者パーティが立っていた。
軽装、派手な装備、動画配信用のドローン。
「おじさん、ここソロは危険っすよ」
「さっきの、たまたまでしょ?」
俺は彼らを一瞥し、淡々と言った。
「たまたまではない。再現性がある」
「いやいや、魔法なんて運ゲーっすから」
――魔法。
その言葉を聞くだけで、頭が痛くなる。
「運で出力制御はできん。君たちは測っていないだけだ」
「は?」
次の瞬間、通路奥から上位個体が現れた。
さっきの二倍はある。
若者たちが一斉に後退する。
「やべ、こいつLv10だ!」
「タンク前!」
連携は悪くない。
だが判断が遅い。
俺は前に出た。
「お、おじさん!?」
「邪魔だ。退け」
火球。
今度は連射。
三発。
関節、視覚器官、心臓部。
――終わりだ。
巨大なモンスターが、音もなく崩れ落ちる。
静寂。
若者たちが、口を開けたまま固まっている。
「……今の、何Lvですか?」
「知らん。測ってない」
「いや、そうじゃなくて……」
俺は腕を回し、特に疲労がないことを確認した。
「魔法だか何だか知らんが、道具だ。
使えるなら、最適に使う。それだけだろう」
その言葉を聞いて、若者の一人が呟いた。
「……この人、ヤバくない?」
否定はしない。
俺自身、そう思い始めていた。
魔法は信じない。
だが――
「無双、という現象は確認できたな」
俺はそう結論づけ、さらに地下へと歩を進めた。
爆発ではない。
衝撃波も最小限。
対象のみを正確に焼き切る、極めて効率のいい現象だった。
「燃焼温度は……少なくとも二千度以上か」
俺は腕時計型の簡易センサーを見ながら、そう結論づける。
魔法だのスキルだのという言葉は使わない。
理解できないだけで、現象そのものは起きている。
問題は――
「なぜ、俺が使える?」
ダンジョンに入ってから、身体に違和感はない。
疲労もなく、集中力も落ちていない。
むしろ若い頃より頭が冴えている気さえする。
通路の先から、二体目のモンスターが現れた。
さっきより一回り大きい。
若者の探索者なら、ここで距離を取り、叫び、連携を取るだろう。
だが俺は違う。
立ち止まり、角度を計算し、壁との距離を測る。
「最小出力で十分だな」
火球。
今度は小さく、速く。
――一瞬。
モンスターの胸部だけが正確に焼き抜かれ、倒れた。
床も壁も焦げていない。
「……効率が良すぎる」
感嘆ではない。
純粋な警戒だ。
そのとき、背後から声がした。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
振り返ると、二十代前半の探索者パーティが立っていた。
軽装、派手な装備、動画配信用のドローン。
「おじさん、ここソロは危険っすよ」
「さっきの、たまたまでしょ?」
俺は彼らを一瞥し、淡々と言った。
「たまたまではない。再現性がある」
「いやいや、魔法なんて運ゲーっすから」
――魔法。
その言葉を聞くだけで、頭が痛くなる。
「運で出力制御はできん。君たちは測っていないだけだ」
「は?」
次の瞬間、通路奥から上位個体が現れた。
さっきの二倍はある。
若者たちが一斉に後退する。
「やべ、こいつLv10だ!」
「タンク前!」
連携は悪くない。
だが判断が遅い。
俺は前に出た。
「お、おじさん!?」
「邪魔だ。退け」
火球。
今度は連射。
三発。
関節、視覚器官、心臓部。
――終わりだ。
巨大なモンスターが、音もなく崩れ落ちる。
静寂。
若者たちが、口を開けたまま固まっている。
「……今の、何Lvですか?」
「知らん。測ってない」
「いや、そうじゃなくて……」
俺は腕を回し、特に疲労がないことを確認した。
「魔法だか何だか知らんが、道具だ。
使えるなら、最適に使う。それだけだろう」
その言葉を聞いて、若者の一人が呟いた。
「……この人、ヤバくない?」
否定はしない。
俺自身、そう思い始めていた。
魔法は信じない。
だが――
「無双、という現象は確認できたな」
俺はそう結論づけ、さらに地下へと歩を進めた。
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