定年オヤジ、現代ダンジョンを論破する

塩塚 和人

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第9話:都市崩壊級ダンジョン発生

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 朝のニュースが、街全体を凍り付かせた。

《都心に突如、巨大ダンジョン発生! 周辺住民避難指示!》

 規模は想定外だ。
 上層階級が安全を確認する前に、地下全域が侵食され、周囲のインフラを破壊している。

 管理局も、企業探索者もパニック。
 都市全体の被害を最小化するための統制は、ほぼ機能していない。

「……数値的に、逃げ遅れ率は高いな」

 俺は呟き、デバイスを確認する。
 ダンジョンの内部構造、敵配置、崩落リスク、通路幅。
 すべてを数値化し、最適な行動計画を組む。

 若者たちも、集められた。
 だが指示は、俺が出す。

「右側通路は圧縮帯。速度を上げること。
 左通路は支援者優先。無駄な戦闘は避けろ」

 火球の出力を計算し、反射角、空気圧、敵反応時間まで考慮。
 攻撃は最小限、効果最大。
 倒す必要のある敵だけを正確に排除する。

 巨大モンスターが三体、都市インフラを揺らす。
 周囲には逃げ遅れた民間人もいる。

 俺は冷静に軌道を計算。
 火球一発、柱を盾にして反射。
 民間人の安全を確保しながら、敵の要点を焼き抜く。

 若者たちは息を呑む。
 だが、次々と反応を学び、補佐に回る。

 時間経過:数分。
 消滅したモンスター数:無数。
 街の被害は、最小限。

 火球を連射し、壁や天井を利用して効率的に戦う。
 敵は多くても、合理的行動で全て制圧。

 戦闘終了後、街は静寂を取り戻す。
 瓦礫と破壊痕はあるが、人命の損失はほぼゼロ。

 管理局から、緊急通信。

「……確認します。あなた一人で、都市規模の危機を……」

「統計と理論通りに動いただけだ」
 俺は答える。
 疲れも、驚きもない。

 街を見下ろし、深呼吸。

「魔法は信じない。
 だが、現象を理解し、計算すれば――
 都市さえも守れる」

 冷静な口調だが、心の奥底で、少しだけ誇らしい。
 無双は、単なる道具ではない。
 理屈と経験を生かした、静かな快感でもある。

 こうして、定年オヤジは都市を救った。
 だが、戦いはまだ終わっていない。

 ――次に待つのは、日常と向き合いながらも、さらに大きな挑戦だった。
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