異常と生活している私の方が『異常』かもしれない。

ヨロ航

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ーー『異常』からの8ヶ月目②ーー

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とある喫茶店

「ああ、お腹空いたー!」

左様で

「ん?どしたの?2人ともココは私が出すから好きなの頼みなよぉ?」

いやそりゃありがたいだがよ…

「………………………ゥゥ」
これ佐藤ちゃんな。

なんで俺と佐藤ちゃん「隣通し?」
可哀想だろぉ
ただでさえ俺にビビってんのによぉ

「……じゃ、じゃあパスタで。」

「俺ぁ日替わりサンドイッチ。」

「わーたし生姜焼き定食ー!」

1人だけジャンル違くね?
あと喫茶店に定食あるっけか?

「なあ佐藤ちゃんよぉ」
まあ乗った船だ、話しかけるさ。

「は、はい!」
元気が宜しい。

「佐藤ちゃんは仕事は楽しいかい?ちなみに俺は楽しくないぜぇ?」
本音を言う。転職できんならしたいぜ。

「わ、私は楽しいです。あんまり接客は得意じゃないんですけど…マニュアルがあるのでなんとか…」

ん?

「菜月ちゃんは頑張ってるよ。でも人にね~流されちゃう時があるからねー」ニヤニヤ
楽しそうだなテンチョー

「は、春夏さん…それは…」

なんだ?言えねえことか?

「う、私…この間の飲み会で……その…ホテルに連れてかれそうになっちゃって…」

おいおい、マジか。

「好きな男だったのかぁ?」

「ぜ、全然…でも相手はノリ気だったみたいで」

はぁ~……ほぉ~……

「…………………」
なんで急に無言になるんだ店長さんよ。

「…誰かに逆らって嫌われるくらいなら、相手に合わすのが1番だし…」

「……親にも…心配されてるんですけど…」
「私……内気だし。」

なるほどなぁ…もう分かったぜ。



「人形みてぇな奴だなぁ。楽しいかい?」

ぶっちゃける。腹の探り合いは性にあわねえ。

「!」


どうした佐藤ちゃん。「同情」されるとでも?


「内気な性格?大いに結構ぉ。
  誰かに支配され続けるのは楽なもんかぁ?」


「な、なんでそんなこと…!私にだって憧れてる人が…」


あー分かる分かる。


「目の前の春夏ちゃんだろぉ?見てりゃ分からぁ」

「……だったら、なんだって言うんですか?」


ちょいと畳み掛けるか

「春夏ちゃんへの憧れねぇ…じゃあ一生無理だ。
諦めろ。憧れ続けるだけじゃ掴めるもんも掴めねえ。アンタにゃ『似合わねえよ』」

「!!」

春夏ちゃんが割って入ってきやがった
「お、おーい。霊さん流石に…」

今更遅えよ。



来いよ。受け止めてやらぁ。

『…貴方みたいな軽薄な人に何が分かるんですか!!
私だって春夏さんみたいになれるのは無理だって分かってるもん!
でも『目標』なんだもん!
だからあなたと話す時だって逃げないようにしてるもん!
このままじゃダメだって分かってるもん!
もしもダメだった後の責任くらい取れるもん!』


「………………」テレ
この状況でよく照れるな春夏ちゃんよぉ


だが


「……ハア……ハア……」



…………………



「スッキリしたかぁ?」

「!」

「内側に溜め続けるにも力がいらぁ。
佐藤ちゃん。なかなかやるじゃねえの。」


「……え…?」


そうだ。忘れちゃならねえ


「何かを成し遂げようとした時点でアンタの勝ちだ。」


「…あ……の………」



「今の啖呵、忘れんなぁ?」



「………………………………」

黙りか。仕方ねえなぁ。

荒療治っつーのも考えものーー

「……グス……」

!?

「あ!菜月ちゃんが泣いちゃった!」
なんだお前急に。

「菜月ちゃんが泣いたら、1時間はこのままだぜぇ??」

誰のマネ?俺のマネ?ぶっ飛ばすぞ。

「……うう~……」

春夏ちゃんが優しく抱きよせる。
母親がまるで頑張った子をあやすように。

「よしよし菜月ちゃん。大丈夫だよ。良かったね。気付いてくれてる人がいて。それとありがとね?私を目標にしてくれて。」

ひゃっはっは。良い雰囲気じゃねえか。啖呵切らせた甲斐があったってもんだぜ。

「今日は休もうか。有給ずっと使ってないでしょ?」

「……ズビビ……あい…」

ほらよ、ティッシュティッシュ。

「いつも徒歩だよね?霊さんに送ってもらおっか?」

おいそりゃ流石に気まずいだーー

「…あい」

いいの!?
――――――――――――――――――――
「お店は任せて。霊さん、菜月ちゃんよろしくだぜ?」

全然似てねえんだぜ。

「………スン……スン……」
ハァ、なんか最近こういう保護者的な役割ばっかだなぁ~

「あー…さっきは言い過ぎた。悪かったなぁ。」

全く悪いとは思ってねえけどよ。

「大丈夫だ、佐藤ちゃん。あれだけ啖呵切って目標に辿り着けなかった奴ぁいねえ。」

事実だ。だから励ましでも何でもねえ。

「……あの…」

お、ようやく発語できたか。

「…菜月…です。」

ああ?

「佐藤ってよくある苗字だから…その呼ばれ方好きじゃないんです。」

なんか…前にも同じセリフ聞いたなぁ…

「そうかぁ…じゃあ菜月ちゃんで良いかぁ?」
大人な俺様だぜ…

「菜月が良いです。ちゃん付けは…好きじゃないです…」

へ?

ん?んん?

「でも春夏ちゃんは『菜月ちゃん』って呼んでるじゃねえか。あれも実は嫌だってのかぁ?」

「……嫌ではないですけど…………」

どゆこと?

…スミス……響……春夏ちゃん…

ー菜月ー

いやおかしいだろ!違和感しか感じんわ!

「えぇー……ああー……」
なんだぁ!?なんか急にムズいぞ!?


「……………………」スン
何故ちょっと堂々としてやがる!


「な……」

「菜…月?」

「はい…なんですか?」

なんですかじゃねえよ!会話の延長線みたいに返すのやめろや!

「こ、ここから家まであとどのくらいだァ?」
さっさと送って、この微妙な空気とはおさらばだぜ!

「……あと…2時間くらいです。」

……嘘つくんじゃねぇぇぇ!!
はっ倒すかコイツ!!
あ、いやそりゃダメだろ。

「な、菜月よう。嘘ぁよくないぜ?」

「」ピク

「…あと10分くらいです。」

ウ  ソ  ついてんじゃねえか!!

まぁぁじで疲れた……

「…霊さんっていつも『ああ』して誰かを助けてるんですか?」

……ああして?

ああ、アレね。

「助けてねえよ。俺は事実を言ってるだけだ。もし助かってるって奴がいるなら、そいつが『勝手に助かってる』だけだぜ。」

そうだ、まあ人は選んでるんだがな。

「そうなんですか。」

ああそうだよ。よくやってらぁアンタは。

「私も…『勝手に助け』られちゃいました。」

「……そっか。良いんじゃねえか?」

俺ぁ思えば少し「踏み外した」ヤツだ。
だが俺ぁ変えねぇ。俺基準でいい。助ける価値があるヤツをーー

「部屋…」
お、着いたか。
小綺麗なアパートマンションだ。

「上がっていきませんか?」

…………

「勝手に助けられたお礼させてください。」

……「異常」相手の方がマシに思える日が来るとは…

――――――――――――――――――――
ー菜月の部屋ー

「………………………………」
これは俺だ。スミスじゃねえぞ。

まさかこの俺がーー

押し負けるとは!!

「霊さん。」

「なんぞ?」
なんか変な日本語出てきた。

「…上着のスーツ。ハンガーにかけます。」

こりゃあご丁寧に。

「わりーなぁ。」

「いえいえ。」

………そ う じ ゃ ね え だ ろ !?

この何世紀かであったかぁ?※比喩じゃない
いや、ねえなぁ。
女の部屋なんざ久しぶり過ぎてとっくに忘れてらぁ…

……整えられたテーブル。洗いたての食器。少し使い古されたソファー。暮らしの匂い。

これが『日常』

俺は勝手にソファーに座る。使われてる良い感じに柔らかい。座り心地が良い。

「……随分よぉ……『遠く』まで来ちまった…」

なあ、相棒。今はスミスだが昔はーー

「霊さん?」

過去から現在へ戻される。

「コーヒー挿れますけど、霊さんは?」

決まってる。

「砂糖一杯分で頼むぜ。」
――――――――――――――――――

「はい、どうぞ。」

小せえカップだ。動物の絵柄が書いてらぁ。

「……美味いな。」

フフ…っと笑いやがった。何がおかしいんだ?

「私コーヒー淹れるの得意なんです。」フンス

左様ですかぁ

「興味なさそうです。」

「興味はねえよ。ただ美味いって思っただけだぜ。」

あ、なんか普段の俺に戻ってきたぜ!さっさと飲んでー

「不思議ですよね。霊さん。」

?何がだ?

「チンピラみたいで口も悪いのに…」

余計な世話だ。

「なんだかとても優しい。」

!!


………優 し い だ ぁ?



……俺 が か?



や  さ  し   い  だ  と  ? コ  ラ



「…ちっと『佐藤ちゃん』よう。」

やべぇ、久しぶりに『キレ』そうだ。


「数回関わった程度で俺を知った気になってんじゃねえ…」


「……………」
沈黙。

「俺と関わってきた奴らが何人いなくったと思ってやがる…」

「俺と関わらなきゃ…何も知らずに済んだ奴がいる。」


響の顔が浮かんだ。



「俺が助けなきゃ知らなくていい世界を知っちまった奴もいる。」



春夏ちゃんの顔が浮かんだ。



「俺が!!手を伸ばさなきゃ!!とっくに救われてた奴がいる!!」



……スミス……



「てめぇに!!俺の何が!!」





「…ほら…優しい…」

!?

「初めて会った時から思ってました。なんとなくですけど。」

なんとなくだぁ?

「あんまテキトーな事を抜かすならぁ…」

「自分が関わると不幸になる人がいる。」

……


「けれど、そんな自分の気持ちとは裏腹に霊さんの手はその人を掴んで離さない。」



!!

「結果がなんであれ。『やろうとしてる時点でアンタの勝ちだ。』」


!!!


「それを今日…教えてくれたのは霊さんですよ?」
涙目な表情の女が座った状態で俺を見上げる。

なんでだ?

なんでそんな眼で俺を見やがる?

なんでこんな…

薄汚れた俺を直視できる?

小さな両手が静かに自分の腰周りに抱かれる感触。

身長差があり過ぎるゆえに仕方がない埋めようのない距離感。

だが

確かにそれはここにある。

確かに…





……………ハァ~…





「落ち着きました?」

キャラが昼ん時で違い過ぎねえかぁ?

「私…昔から興味の『有る・無し』でしか関わってこなかったんです。」

なるほどなぁ、より合点がいったぜ。
要は『0から100』のやつか。

「……つー事は俺には『興味』があるってか?」

良くも悪くも…か。

「ま、まあそうですね。」

見る目がねえな。死んだ魚の目より目が悪い。

「ところでどうでしょう?」



「どうってなんだ。」

少しムッとした表情になりやがった。
俺ぁさっきまで、ガチキレ寸前だったんですがねぇ。

「だ、だから今も結構勇気出してるんですけど」

この『抱擁』の感想ってか?

…そうだな、とりあえず…


「…………胸が足りねえ……」


パァン…

今日一デカイ音が世界に響き渡った気がすらぁ。
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