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最終話 三日目 - 四日目 ”鬼”
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洞窟を背にしB子ちゃんの姿をした子が監禁されているテントへ向かう。E美さんが殺されたのは鬼の仕業ではない。昨晩の会議の時に睡眠薬をコーヒーに混入させ、全員が眠っている隙にB子ちゃんによって殺害されたのであろう。唯一彼女だけが、カップに手をつけていなかった。睡眠薬を服用しているのはB子ちゃんでありE美さんではない。その薬を自由に取り扱うことが可能なのはB子ちゃんであり、カップに手をつけなかったのもB子ちゃんである。つまり彼女の魂は彼女のままであり、E美さんとは入れ替わっていなかったと言える。不自然なほどE美さんがこの合宿に乗り気だった理由、それはおそらくB子ちゃんとの間でいわゆるドッキリのような計画を持っていたからであろう。魂の押し出しという現象を利用し、僕たちを驚かせようとしたのだろう。しかし、なぜ殺したのかの動機がわからない。明確な証拠も無い僕には、それは本人に聞き出すしかないのだ。
テントの前に立ち、彼女の名前を呼ぶ。テント越しに自分の推理を伝え、入るよと一言放ち慎重に両面ジッパーを上げていく。彼女は隅っこで体育座りをし、いつもの退屈そうな瞳で地面を見つめていた。僕は彼女の正面にあぐらをかき話を始める。
「鬼は本当にいたよ。思ったより弱かった上に、さっき僕の中に入ってきたよ。何も変化は無いけれども、やっぱりお祓いとか受けた方が良いよね。」
「そうだね。」
B子ちゃんは冷たく吐き捨てるように返答をする。
「僕の推理に何か間違いはあった?」
「大体あっているよ。流石に本当に鬼が出るとは予想できなかったけどね。」
「・・・君は何でE美さんを?」
B子ちゃんは一瞬僕に視線をやった後に、彼女は彼女が抱える”鬼”の話とE美さんと画策していたドッキリの話を始める。
全てを話終えたB子ちゃんは変わらず退屈そうに地面を見つめる。しばらくの沈黙の後に僕はB子ちゃんに思いのままを話す。
「君の抱えている破壊衝動については、正直どうやってコメントしていいかわからない。ただ、人を殺してしまったことは良くないと思う。ただ、君の秘密を話してくれてありがとう。」
彼女は少し驚いたように目を開く。
「・・・でももう睡眠薬は混ぜないでくれよ。コーヒーは最悪の味になるし、翌日は頭痛が酷くなるんだ。せめてもっと僕の身体に合ったものにしてもらわないと。」
涙目で寂しそうにかすかに微笑む。
日が落ち、夜風は冷たくなる。まだC君とD部長はまだ目覚めない。二人を男子用のテントまで運び、僕はまたB子ちゃんと女子用のテントにいる。彼女が自ら命を絶たないように見張っていなければならない。
8月8日早朝。気付けば、僕は眠ってしまっていた。テントを見渡すとB子ちゃんはすでに目覚めており、また退屈そうに、いや眠そうに半目を開き体育座りをしている。おはようと声をかけてみると少し頷いていた。結局彼女は自殺をしなかったし、僕も殺されてはいなかった。するとその時、僕の胸辺りから煙が湧き出る。鬼だ。ドライアイスから発生する煙のように白く濁った煙は僕とB子ちゃんの間に円を描くようにモクモクと広がる。さすがにこの光景には驚いたのか、B子ちゃんは煙から距離をとる。
「やっぱりオタクらは面白いねえ。人殺しに惚れた男と”鬼”の女か。」
人を小馬鹿にしたような声色が煙の中から響く。惚れてるとかバラすなよ。鬼は煙の中から話を続ける。
「人の肉を食わない分趣味で人殺しをするわけだろう?タチが悪いねぇ。」
鬼はこちらが話を挟む隙もなく話を続ける。
「まったく、オタクがあの忌々しい札をあろうことか直接貼ってくれたせいで、力をほとんど失っちまったよ。かろうじてオタクの中に入り込めたから死なずに済んだがなぁ。封印するにしてももっと優しくやってくれや。いつも通りやれば良いっていうから信じてたのによぁ。散々だぜ。」
やはりあのお札は効果があったようであった。そのせいでこの鬼は僕に取り憑いているみたいであるが。しかしいくつか疑問が生じる。それを本人へ問いかける。
「”いつも通り”ということは、お前はこの島に流れ着いた人を今回みたいに混乱させた後に殺し合わせて食っていたんだな?」
「はは、そうそう。半年ぶりの肉のハズだったんだがなぁ。惜しい惜しい。」
「半年ぶりだと?現代人がこんな微妙な島に流れ着いて遭難したというのか?」
微かに感じる違和感に胸がゾワゾワとする。鬼の声は僕に止めを刺す。
「そんな訳ないだろ?このご時世に人が本土からそう遠くないこの離島に流れ着くなんて考えられるか?俺だってそんなの待ってられないぜ。だから俺には協力者がいるんだよ。水が苦手で外に出られない臆病で可哀想な”兄”のために、人をここまで運んできてくれる”弟”がいるのさ。あぁそうか、やっぱりオタクらは気づいていなかったのか。そりゃそうだよなぁ。ヒヒヒ。」
女子テントの北側、船着き場の方から鬼鳴洞窟に続いている舗装された道。そこからこちらに駆け寄る足音が陽気に響いていた。テントの外に出た僕は音のなる方を確認する。
ある男が目を大きく見開き早歩きで駆け寄ってく来ている。そして僕は、三日前に僕達をこの島へ送り届けた鬼の悪意にやっと気付いた。
テントの前に立ち、彼女の名前を呼ぶ。テント越しに自分の推理を伝え、入るよと一言放ち慎重に両面ジッパーを上げていく。彼女は隅っこで体育座りをし、いつもの退屈そうな瞳で地面を見つめていた。僕は彼女の正面にあぐらをかき話を始める。
「鬼は本当にいたよ。思ったより弱かった上に、さっき僕の中に入ってきたよ。何も変化は無いけれども、やっぱりお祓いとか受けた方が良いよね。」
「そうだね。」
B子ちゃんは冷たく吐き捨てるように返答をする。
「僕の推理に何か間違いはあった?」
「大体あっているよ。流石に本当に鬼が出るとは予想できなかったけどね。」
「・・・君は何でE美さんを?」
B子ちゃんは一瞬僕に視線をやった後に、彼女は彼女が抱える”鬼”の話とE美さんと画策していたドッキリの話を始める。
全てを話終えたB子ちゃんは変わらず退屈そうに地面を見つめる。しばらくの沈黙の後に僕はB子ちゃんに思いのままを話す。
「君の抱えている破壊衝動については、正直どうやってコメントしていいかわからない。ただ、人を殺してしまったことは良くないと思う。ただ、君の秘密を話してくれてありがとう。」
彼女は少し驚いたように目を開く。
「・・・でももう睡眠薬は混ぜないでくれよ。コーヒーは最悪の味になるし、翌日は頭痛が酷くなるんだ。せめてもっと僕の身体に合ったものにしてもらわないと。」
涙目で寂しそうにかすかに微笑む。
日が落ち、夜風は冷たくなる。まだC君とD部長はまだ目覚めない。二人を男子用のテントまで運び、僕はまたB子ちゃんと女子用のテントにいる。彼女が自ら命を絶たないように見張っていなければならない。
8月8日早朝。気付けば、僕は眠ってしまっていた。テントを見渡すとB子ちゃんはすでに目覚めており、また退屈そうに、いや眠そうに半目を開き体育座りをしている。おはようと声をかけてみると少し頷いていた。結局彼女は自殺をしなかったし、僕も殺されてはいなかった。するとその時、僕の胸辺りから煙が湧き出る。鬼だ。ドライアイスから発生する煙のように白く濁った煙は僕とB子ちゃんの間に円を描くようにモクモクと広がる。さすがにこの光景には驚いたのか、B子ちゃんは煙から距離をとる。
「やっぱりオタクらは面白いねえ。人殺しに惚れた男と”鬼”の女か。」
人を小馬鹿にしたような声色が煙の中から響く。惚れてるとかバラすなよ。鬼は煙の中から話を続ける。
「人の肉を食わない分趣味で人殺しをするわけだろう?タチが悪いねぇ。」
鬼はこちらが話を挟む隙もなく話を続ける。
「まったく、オタクがあの忌々しい札をあろうことか直接貼ってくれたせいで、力をほとんど失っちまったよ。かろうじてオタクの中に入り込めたから死なずに済んだがなぁ。封印するにしてももっと優しくやってくれや。いつも通りやれば良いっていうから信じてたのによぁ。散々だぜ。」
やはりあのお札は効果があったようであった。そのせいでこの鬼は僕に取り憑いているみたいであるが。しかしいくつか疑問が生じる。それを本人へ問いかける。
「”いつも通り”ということは、お前はこの島に流れ着いた人を今回みたいに混乱させた後に殺し合わせて食っていたんだな?」
「はは、そうそう。半年ぶりの肉のハズだったんだがなぁ。惜しい惜しい。」
「半年ぶりだと?現代人がこんな微妙な島に流れ着いて遭難したというのか?」
微かに感じる違和感に胸がゾワゾワとする。鬼の声は僕に止めを刺す。
「そんな訳ないだろ?このご時世に人が本土からそう遠くないこの離島に流れ着くなんて考えられるか?俺だってそんなの待ってられないぜ。だから俺には協力者がいるんだよ。水が苦手で外に出られない臆病で可哀想な”兄”のために、人をここまで運んできてくれる”弟”がいるのさ。あぁそうか、やっぱりオタクらは気づいていなかったのか。そりゃそうだよなぁ。ヒヒヒ。」
女子テントの北側、船着き場の方から鬼鳴洞窟に続いている舗装された道。そこからこちらに駆け寄る足音が陽気に響いていた。テントの外に出た僕は音のなる方を確認する。
ある男が目を大きく見開き早歩きで駆け寄ってく来ている。そして僕は、三日前に僕達をこの島へ送り届けた鬼の悪意にやっと気付いた。
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