異界の容疑者

Fa1

文字の大きさ
19 / 19

第19話 目的

しおりを挟む
 しばらくしてパスカルが戻ってきた。すまないと軽く謝罪をした後に、先ほど座っていた椅子に再び腰掛ける。そして、特に聞いてもいないのにこの世界についての説明を始めた。魔具のことや、デューオというものの存在。俺はここが異世界であることをあらためて認識した。
 パスカルは俺の処遇についてを明日までには決めるから待っていてくれといい、使用人に俺を客室まで案内させた。部屋についた俺は先客にそこで出逢った。
「シン。来ましたね。」
そこには、俺をこの世界に転移させた緑色の髪の少女がいた。
「君は?」
「私はマキナ。最後のマキナです。」
「最後?まるで君が何人もいるみたいな言い草だな。」
「ご認識の通りです。マキナは管理者が設計した共通のフレームワークに基づいて生み出される”転移者の使い”になります。直接手を下すことができない管理者に代わり、あなたが勇者になるに当たって必要なお手伝いをいたします。そして私はあなたの使いになります。」
やはり俺はこの子に転移させられたみたいだった。
「俺は勇者になるどころか殺人容疑をかけられているのだが・・・。一体君は俺に何を期待しているんだ?」
「あなたに求めることはたった一つ、”デューオを倒す”ことです。」
支配者デューオか。さっきパスカルから聞いた話によれば、彼は数年前に突如としてこの世界に現れ、街や村、国に至るまで次々に破壊を繰り返しているという。彼には魔具が効かない上に、彼自身も特殊な能力を扱うために誰も止められずにいると聞いている。そんな化け物を俺が倒す?無理がある。
「マキナ、それは無理だよ。俺には力が無い。」
「いえ、あなたにも力はあります。異世界特性オリジナルというあなた固有の力があります。」
異世界特性オリジナルという言葉にピンと来るものがあった。英単語としてのoriginalではなく、彼女の意図するという言葉に。
「シン、あなたにはわかりますね。あなたの異世界特性オリジナルは、近未来視さきよみです。1~2秒先の世界を視ることができるのです。」
「あぁ、なぜかわかるよ。その使い方も弱点も。」
「よかったです。あなたにはその力を使って戦ってもらいたいのです。」
「待て待て。異世界特性オリジナルの使い方はわかるさ。でも、俺がデューオと戦う理由がわからない。」
なぜ俺みたいな異世界人に頼っているのか。俺にはその理由がわからなかった。
「それは、デューオがあなたの世界からこの世界に侵入してきたからです。異世界の人間がもたらした問題は、同じ異世界の人間によって解決させるというルールがあります。」
「めちゃくちゃだ。そんなよくわからないルールのために俺は誘拐されて、殺人の容疑者にまでされたってのか。」
「誘拐?人聞きが悪いですね。あなたは”俺の助けが必要か?”と問いかけていたではないですか。私にはそれが必要だったので、あなたに来てもらったんです!」
言った。たしかに言った。しかしあれは曲の歌詞だ。俺の意思では無い。しかし、これ以上否定をしたところで元の世界に戻してくれそうにも無いことを察し、俺は黙ることに決めた。その後もマキナは何度も話しかけてきたが俺は無視をした。話を聞いてもらえないことに、彼女はなんかプンプンしていた。

 しばらくして、扉をノックする音が聞こえた。俺の処遇が決まるのは明日だと聞いていたので、今誰が俺を訪ねて来ているのか検討がつかなかった。はい、と返事をして扉を開く。するとそこには、青い瞳の綺麗な少女が立っていた。
「あの・・・。お父様から、新しい使用人さんに挨拶をしなさいと言われたので・・・、その、来ました。」
あの男、俺をここで働かせることに決めたようだ。身に覚えのない罪の容疑者として裁かれるよりかはマシか。
「あの、私はベティーナと言います。これから、よろしくお願いいたします。」
彼女は恐れながらも、一瞬俺の目を見る。その姿に、俺は心臓の鼓動が高まるのを感じた。
「それでは、失礼いたします。」
そう言うとベティーナは逃げるように早歩きで去っていった。
 彼女が去った後に、扉を閉め俺はマキナの方に振り返る。
「マキナ。俺は戦うよ。デューオだろうがなんだろうがやってやるさ。」
マキナは驚いた表情をする。そしてすぐに嬉しそうに飛び跳ねる。
「本当ですか!やった!信じてましたよ、シン!」
「あぁ、そして俺は捕まえて見せる。ベティーナの祖父を殺した犯人を!」
それが一番の目的であった。あの少女の心を傷つけた犯人を許すことができなくなっていた。すると、さっきまで飛び跳ねていたマキナが急に動きを止めた。
「彼女の祖父を殺した者は、おそらくデューオが生み出した”マキナ”ですよ?」
「なんだって?」
「さっきも言いましたが、私は管理者が生み出した”最後の純正マキナ”です。管理者は数ヶ月前にデューオによって支配されてしまいました。そして私は支配される前に生み出されたんです。」
「いまいち理解できていないのだが、偽物のマキナもいるってことか?」
「はい。デューオはマキナを生み出し、異世界転移者の勢力を作ろうとしています。まだ彼が生み出すマキナは不完全であることもあり、転移者の獲得には成功していないようですが。」
「その偽物のマキナがなぜ彼女の祖父を殺したんだ?」
「おそらく、その方が管理者にアクセスできる魔具を開発していたからでしょう。管理者の支配にはデューオも相当苦労したようですから、取り戻されないように邪魔者を排除したのでしょう。」
デューオはマキナを利用して、自分にとって障害になるような人物を殺害しているようであった。つまり俺にとって、デューオを追うことが彼女の祖父の仇を取ることにも繋がりそうであった。

 そして俺は彼女のために、デューオを追うことに決めた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?

あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。 「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」

処理中です...