昨日の明日

Nick Robertson

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「アカリさん、アカリさん、もう起きて下さい!危ないですよ!ほら早く頭を!」
偉い行列には違いない。
アカリをようやく起こすとひれ伏させる。
向こうから黒粒のように多くの馬たちが来ていた。
「死にたくないんならこうする事です」
「死にたくない?誰がそんなことを言ったんですか」
「しっ!来ました」
馬たちはタッタッと歩いてきてフーフッと息を吐き出して行ってしまった。
「…もう大丈夫だと思います」
「威勢のいい馬でしたね」
「なかなかこんな所で見ないのですがね、あんな行列」
「何があるのでしょう」
「もしかしたら…」
「もしかしたら?」
「ここら辺の調査に来ているのかもしれません」
「調査?」
「この一帯は時々洪水で凶作ですから…」
「それで、どうするんです?」
「対策でも練るんじゃないでしょうか」
「どんな?」
「…それは、分かりませんけれど」
アカリは顔をしかめた。
「あなたもなかなかに知らない人です」
「いえいえ、近所の付き合いは、確かに薄いのですが」
「そんなこと言ったってご馳走の交換くらいはするでしょう?」
「はあ、それがしないのです」
「あら、私もよ」
「…それにしてもいい馬でしたね」
「本当。少し欲しくなりました」
「でも自分の家の馬の方が可愛らしいです」
「私の馬は父しか乗りません。私と母は世話ばかり」
「大変ですか」
「でも次第に愛着がわいてきて…」
「そうですか。その額の傷は?」
「昨日父が酔っていまして。米が獲れないのは、確かに私のせいでもあるかもわかりませんが」
「すまないことを聞きました」
「いえいえ、あなただから言えたことでして」
打ち合わせたかのように鈴虫がリーンと鳴き始めた。
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