速さ

Nick Robertson

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「おーい」
凛に起こされる。
「ぃえっ?」私は変な声が出た。
凛が私の?茲に手を当てている。恥ずかしくなっちゃうなあ。
ほら行くよという声に引っ張られて私は立ち上がる。
「うお」私は口を開けた。大きな城がたっている。
「ここはさっきいたとこの隣の国よ。さあ、歩いて」
「え、ちょっと待って、今どこって?」
「さっきの隣の国」
「ふぇ?戻れるの?」
「あなたにかかってるわ、ま、いつか行けるんじゃない?」
「でも宿賃が…」
「つけになるんじゃないの?ま、行こうよ」
もっと大きな事だろうに、宿賃だけで話が済んでしまう。
「行くって…あの城に?」
「そう」
「ばっか、入れるわけないって」
「腕時計に今しがた移動したという情報が詰まってるわ」
「それなら中に入れるの?」
「もちろん。冒険者の中で最も強いことになるから」
そうか、誰もできなかったことを私はしたのだ。少し頭をもたげる優越感。
私が城に近づくと、案内をする人がもう出ていてひざまずいている。ええっ、私に?
こんなことされちゃって、後で期待裏切っちゃうぞ。
その人の案内で部屋に通される。
どこもかしこもきらびやかな装飾が施され、豪華豪華。
向かいには雪のように白い女の人が座っている。
髪も白い。
洗剤で脱色したみたいだ。
垂れ目も、唇まで。
私は勧められるまま席に着く。
昨日こういうのやったばかりなんだけど、ここのほうがまだ広いなあ。
あの王より金持ちがいるとは。
「私はスジャータといい、ここの王妃です」と自己紹介される。
これがまた透き通りすぎて身震いしてしまうような声なんだ。なんだかずるい。
「私は、原と言います」私も短く自己紹介する。
「原様、いきなりで悪いのですが私共を助けて欲し…」
わー、ダメだ。こうゆーの敵が強いやつだ。ああ、でもこのパターンは必ず成功して好意を持たれるハッピーエンドっていうおきまりのヤツだな。
「引き受けましょう」
私は立ち上がって周りを見回す。
えーと、王妃さんのスジャータと、召使いぽい人と、凛だけか、ここにいるの。
それでえーと、何要求されたんだったっけ。
私は相手の話を遮って立ったのでよくわかんない。
それから私はカッコつけておきながら、王妃がコートに身を包んでいくのをぽかんと見詰めていた。
顔が見えないような薄暗い帽子をかぶって、もう誰だかわからない。
「行きましょうか」
スジャータはそう言って私の手を握る。
え、そういう話になってんの?!私は顔が一瞬でほてるのを感じた。真っ白で細い指は、私が強く持つと折れてしまいそうなほどで、私はその手に力が入らない。

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