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「……なぁ、その大会って、自由参加なんだろ?」
「その通りだ!男のみ出場可能だかな!」
「じゃ、そんなに目くじら立てて怒ることでもないじゃん」
「むぅ。本当にお前らは無関係なのか?」
「へ?何のことだよ」

その女はしばらく口を閉じていたが、やがて一言、「一応調べるからこっちへ来い」と俺達に言った。これは何かありそうな雰囲気だ。もちろん行ってみよう。

目配せし、頷き合って、女の後ろに続く。
街の人々がこっちを見ながらコソコソ囁いているのがこそばゆい。ど偉い人になったみたいだ。

「……さぁ、この中に入ってくれ」
「あれ?ここって………」
「ミスターエックスをやっつけちゃおうの会の建物だ。私はここの協会長をしている」
「え」
「何かおかしいか?ふふ、もっと弱そうに見えるのだろう?外見はこんなだが、これでも実力はそこそこあるんだぞ?」

そんなこと言いたいんじゃないのだ。協会長と協会長が立ち会っていることに衝撃を受けているというのに。全く気づいていない。

「…それにしても、お前の術には驚かされたな。この私も見たことがないモノだった。……どうだろう、後で戦ってくれないだろうか。その奥に闘技場があるだろ?あそこで」
「あっ、良いわね!それ!!」

協会長が目をギラギラさせながら賛成した。おー、怖い。 

「それで、話って何?」
「あぁ、ま、そこに座ってくれ」
はは、椅子の種類や位置までおんなじとは。協会の建物の構造は細部まで統一しているらしい。風水術でもやってるんだろうか。

「……うん、では先ほどの話の続きを。…と言いたいところだが」
「おい、タメるなって」
「重要な話なものでな。身分を確認したい。もし不明だった際には、済まないが捕らえさせてもらう」
「なるほど。そりゃあ大変だ」

俺が余裕たっぷりに言うと、女は両手を顔の前に上げて構えた。ファイティングポーズというヤツだ。

「あんまり度が過ぎた振る舞いをすると、お前の首はないぞ」
「あると思うね」
「試してみるか?」
「試したい」

そう応えると、女は手を降ろした。

「………お前の技がどんなモノか知らないから、まだここでは留めておこう。それより、身分確認だ。協会登録の名前と住所を話せ」

おぉう、住所ときたか。そりゃ無理だな。転移者だもの。

「……なんだ、その反応は!誰か早く言え!!」

女は剣を出して俺達に向けた。赤い光でできた剣だ。

「ほほぉ、それがあんたの特殊能力なのね」
「黙れ!!早く答えろと言っているのだ!!!」
「………じゃ、私が言うからさ。他の人は免除で良い?」

笑を含んだその声の方向に全員が目を向けた。……協会長だ。

「免除になるわけないだろ!一人ずつ…」
「私は、東京都に4つ存在する協会のうち、最も強いとされる、本部の協会長よ」
「?!」
「闘技場で戦ってみれば分かるわ」
「じゃ、住所は………」
「ホテル泊まりしてるの知ってるでしょ?無料でさ」

そうだったのか?!東京都に4つも協会があるというのも知らなかったし、ホテルのことも初耳だぞ??!………うーん、言う機会がなかったのか……。もっと質問しときゃ良かった。

「じゃ、そのホテルの名前は?」
「国営優遇ホテルよ」

どこそこ?!何したの?こいつ!!金ないくせに!

「………そんなの、知ってる奴は言えるだろうが!」
「だからさ、戦ってみりゃ分かるって」
「あのお方は『身体強化』の使い手だぞ!誰がそんな訳の分からない気体みたいな物を……」
「これ、『身体強化』がさらに進化した状態ね?」
「え?!」
「知ってると思うけど、名前は、京花 銀杏よ。みんなからはいつもフルネームで呼ばれてる」

キョウカイチョウって、登録ネームだったんかい!!
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