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「なぁ、俺達、見られてるよな?」
「そんなの計算内だったじゃない」
「そう、だな。そうだった」

道行く人たちが足を止めてまで視線を送ってくれるのだ。どうもありがとう。

「この場にいたら、またマズい奴が来るぞ。きっと」
「そうなったら逆にボコボコにするのよ」
「そうよ。全然大丈夫。私達のガードもあるし」

そう言われてもなぁ。

「じゃ、どうするって言うの?この人数から逃げるってことは、つまり街から出るってことなんだけど」
「そりゃ、そうだな。確かに」
「些細なことにクヨクヨしてちゃすぐに頭の砂漠化が進行しちゃうのよ。今は食べ物のことだけ考えるべきじゃない?!」
「そうなの?!食べ物のことだけ考えるべきなの??!」
「私はお腹空いたの」
「もしかしたら、『身体強化』ってかなり多くのエネルギー使うのかもね」
「いや、協会長は以前から大食らいでしたよ」

残金は6万円くらいだったな。ジャンクフードならいくらでも食べれそうだが………。

「まずは、このお金を増やすところから始めましょう」
「何?!何するつもりだ?」
「え?UFOキャッチャーかな」
「それはゲームじゃねえか!お金がなくなるだけだって!」
「分かってないのねぇ。あれで取ったおもちゃってリサイクルショップとかで売れるのよ?知らなかった?」
「マジ?」
「マジマジ」

俺はその言葉に一瞬乗せられかけたが、すぐに打ち消した。

「いやっ!そんなに利益が出るようには設定されてないだろ!あの構造は!!」
「それはあんたの技術レベルが低いからよ!」
「協会長だって下手くそだろ?!」
「ふんっ!私には最悪『身体強化』の炎を隙間からねじ込んで商品をゲットすることだってできるんだから!」
「あ………、なら金要らないんじゃ….」
「わーお!」

174がキラキラした目でなにか言いかけたところで、やっぱり誰か登場した。

「なんだ、お前らは!」
背が高くてツンとした目の女の人だ。

「『なんだ』って酷くない?私達、ただの観光客なんだけど。それ以上に何も言えないし」
「怪しげな黒い物体に乗ってやって来たと聞いたぞ!」
「え、もうそんな話が出回ってんの?早いもんだねぇ」
「ふざけてないで答えろっ!あれは何なんだっ!」
「これ?」

協会長が炎を出した。

「…なっ!何だこれは!」
「これはね、私の特殊能力よ」
「どうしてこの街に来た?!」
「だから、観光目的……」
「嘘をつけ!お前らは大会に出場しに来たのだろう?」
「大会?」

俺達は顔を見合わせた。この人が言いたいのは何だろうか。俺達がその大会とやらに出たいって思っていることにして、利用したいとか?そんな感じかな。
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