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魔力が何らかの反応をしてできるのが波動だということか。
私はテキトーに済ませたが、実際は凄く知りたい。
だって、それが分かれば、自分で波動さえも作れるということだ。
魔力は空気中にいくらでもあるんだから、後は波動量を増やすだけなのだ。
私とドウランがそのことに悩んでいる隙に、タツはマシンガンより速いスピードで、レッドに話しかけていた。(ちなみにキヌは、レッドがドン引きしているのを知っていたが、何も言わなかった)
フウ、と顔を上げたところで、ドウランと目があう。
ニコッと微笑んできたので、会釈を返した。
…ドウラン、小さいのに、なんか色々規格外な奴だ。
なんかホッコリさせたり、落ち込ませたりするのに長けている。ーー後者は長けて欲しくないんだけど。
それから頷き合って、キヌとタツに集合をかけた。
「はい!じゃ、出発しよう!」
そう言うと、キヌはちゃんと返事をした。
聞こえていないのは、タツの方だ。
タツがダンジョンに行くとか言い出したのに。
私はブルーに耳打ちして、他のドラゴン達が私について来るよう頼んだ。
もちろんブルーは即了解して、みんなに「リリーについて来て」とこっそり言った。
みんな、タツの話なんてハナから聞いてないから、いや、聞けなくて退屈してたから(しかもタツはドラゴン達には話をさせないのだ。これはもう拷問の域に入っているのかもしれない)、喜んで従った。
すると、タツは必然的に喋りながら歩き始めるわけだ。ドラゴンという喋り相手を求めて。
そうしてボソボソと足を突き出す。
魔獣と会えば倒せば良い。
それは済むことなのだが、誰も達成できていないところがダンジョンというものである。
だから、どこに出れば攻略できたことになるのかも分からない。
とりあえず奥と思われる方向に歩を進めていく。
霧がまた出てきた。
今度は避けない。
私の周りを囲んだ白い布は、やがて爆発するが、ちょっとうるさいくらいで、怪我をすることもない。
でも、本当に怪我をしていないか確かめるために目線を落とすと、すぐに自分の裸が映し出されて、変な気分になってくる。
私は仕方なく、そこらじゅうに生えている木から、一枚の葉をちぎった。
「何するの?」とドウランが聞く。
「いや、別に。大したことじゃないし」
私はそう言いながら波動と魔力を混ぜ込んでいく。
カビルエという植物は、伸びると極端に硬くなるという性質が、なぜか存在した。
多分、他の場所であの植物を見たことはないから、誰か他の魔法使いが、大昔に作り上げた植物のような気もする。よく周りの森に繁殖しなかったもんだ。
だけれども、この葉にはそんな性質はない。
伸びやすいという性質もなければ、硬いというのもない。まあ、もともと魔力を多く吸ってるから、硬い方だとは思うけど。
そこで、私の出番だ。
波動でその葉を伸ばしつつ、魔力を練り込んで強化も同時進行させるという、素晴らしい方法を使う。ふふふ。
思った通り、葉は大きく広がって、しかもローブより強度が高い気がする物が完成した。……色は緑色のまま。でも、魔術師じゃないし、このくらい鮮やかな方が私は好きかな。
「わ、何それ?!」真っ先に声をあげたキヌの気持ちも少し分かる。
私が葉をちぎった時から観察していたんだと思う。
カビルエをずっと見続けて育ち、ローブはカビルエで作る以外ありえないという、一種の固定観念みたいなのがあったんだろうけど、ここまでの魔力、波動レベルになると、もう何でもありになっちゃうんだな。以後、お見知り置きを。
私がそれをパリッと着こなすとみんな真似を始める。
さっき私が使い残したのもあるけど、作る方が楽しいもんね。
それでみんなグリーンになる。
私を除く三人の中で、一番早くローブを完成させたのは、キヌだった。
理由は、よく知っている形状だったから、では、ない。
実はドウランの方が早くに終わってたのだが、ドウランが作ったのは普通の服。シャツみたいな。
小さい緑の服。何も言ってやらないけど、似合ってると、思う。
その後はキヌが成功させたのだ。
レベルが同じくらいになると、技術面ではタツより遥かに勝るようだ。
へへーん!どーだ参ったか!
私達を前にして少々高くなってたであろう鼻をここでへし折っ…
「やったー!できた!できたよーーー!ちょーうれしー!かっこいー!」
………ダメだ、タツは無敵だ。
時間がどれ程かかっても、自分のこととなれば気にしてない。
うん、私達も同じの着てることさえ、忘れてるみたいだ。別に良いよ、別に良いけど。
……
「あー」
私が思わず声を上げたら、ドウランも同じ風に叫んでいて、ちょっとした合唱練習みたいになった。
「なになに、どしたの?」キヌとタツはまだ分かってない。
「何かあそこだけ空気が違うね!危険な感じがする!」
ドウランが説明してくれた。
そう。ダンジョン、もっと奥に、進めそう、なのだああああああ!
待ちに待った瞬間だぞ!
さっきまではどこに行き着くか分からなかったから、走れなかったんだけど、今は全力疾走だ!!(ほら、ゴールの無いマラソンってさ、走る気が失せてくると思わない?そんなの走ったことない?そっか)
…というわけで、すぐに到着。
途中で、四体くらい魔獣を倒した。えへん。
私はテキトーに済ませたが、実際は凄く知りたい。
だって、それが分かれば、自分で波動さえも作れるということだ。
魔力は空気中にいくらでもあるんだから、後は波動量を増やすだけなのだ。
私とドウランがそのことに悩んでいる隙に、タツはマシンガンより速いスピードで、レッドに話しかけていた。(ちなみにキヌは、レッドがドン引きしているのを知っていたが、何も言わなかった)
フウ、と顔を上げたところで、ドウランと目があう。
ニコッと微笑んできたので、会釈を返した。
…ドウラン、小さいのに、なんか色々規格外な奴だ。
なんかホッコリさせたり、落ち込ませたりするのに長けている。ーー後者は長けて欲しくないんだけど。
それから頷き合って、キヌとタツに集合をかけた。
「はい!じゃ、出発しよう!」
そう言うと、キヌはちゃんと返事をした。
聞こえていないのは、タツの方だ。
タツがダンジョンに行くとか言い出したのに。
私はブルーに耳打ちして、他のドラゴン達が私について来るよう頼んだ。
もちろんブルーは即了解して、みんなに「リリーについて来て」とこっそり言った。
みんな、タツの話なんてハナから聞いてないから、いや、聞けなくて退屈してたから(しかもタツはドラゴン達には話をさせないのだ。これはもう拷問の域に入っているのかもしれない)、喜んで従った。
すると、タツは必然的に喋りながら歩き始めるわけだ。ドラゴンという喋り相手を求めて。
そうしてボソボソと足を突き出す。
魔獣と会えば倒せば良い。
それは済むことなのだが、誰も達成できていないところがダンジョンというものである。
だから、どこに出れば攻略できたことになるのかも分からない。
とりあえず奥と思われる方向に歩を進めていく。
霧がまた出てきた。
今度は避けない。
私の周りを囲んだ白い布は、やがて爆発するが、ちょっとうるさいくらいで、怪我をすることもない。
でも、本当に怪我をしていないか確かめるために目線を落とすと、すぐに自分の裸が映し出されて、変な気分になってくる。
私は仕方なく、そこらじゅうに生えている木から、一枚の葉をちぎった。
「何するの?」とドウランが聞く。
「いや、別に。大したことじゃないし」
私はそう言いながら波動と魔力を混ぜ込んでいく。
カビルエという植物は、伸びると極端に硬くなるという性質が、なぜか存在した。
多分、他の場所であの植物を見たことはないから、誰か他の魔法使いが、大昔に作り上げた植物のような気もする。よく周りの森に繁殖しなかったもんだ。
だけれども、この葉にはそんな性質はない。
伸びやすいという性質もなければ、硬いというのもない。まあ、もともと魔力を多く吸ってるから、硬い方だとは思うけど。
そこで、私の出番だ。
波動でその葉を伸ばしつつ、魔力を練り込んで強化も同時進行させるという、素晴らしい方法を使う。ふふふ。
思った通り、葉は大きく広がって、しかもローブより強度が高い気がする物が完成した。……色は緑色のまま。でも、魔術師じゃないし、このくらい鮮やかな方が私は好きかな。
「わ、何それ?!」真っ先に声をあげたキヌの気持ちも少し分かる。
私が葉をちぎった時から観察していたんだと思う。
カビルエをずっと見続けて育ち、ローブはカビルエで作る以外ありえないという、一種の固定観念みたいなのがあったんだろうけど、ここまでの魔力、波動レベルになると、もう何でもありになっちゃうんだな。以後、お見知り置きを。
私がそれをパリッと着こなすとみんな真似を始める。
さっき私が使い残したのもあるけど、作る方が楽しいもんね。
それでみんなグリーンになる。
私を除く三人の中で、一番早くローブを完成させたのは、キヌだった。
理由は、よく知っている形状だったから、では、ない。
実はドウランの方が早くに終わってたのだが、ドウランが作ったのは普通の服。シャツみたいな。
小さい緑の服。何も言ってやらないけど、似合ってると、思う。
その後はキヌが成功させたのだ。
レベルが同じくらいになると、技術面ではタツより遥かに勝るようだ。
へへーん!どーだ参ったか!
私達を前にして少々高くなってたであろう鼻をここでへし折っ…
「やったー!できた!できたよーーー!ちょーうれしー!かっこいー!」
………ダメだ、タツは無敵だ。
時間がどれ程かかっても、自分のこととなれば気にしてない。
うん、私達も同じの着てることさえ、忘れてるみたいだ。別に良いよ、別に良いけど。
……
「あー」
私が思わず声を上げたら、ドウランも同じ風に叫んでいて、ちょっとした合唱練習みたいになった。
「なになに、どしたの?」キヌとタツはまだ分かってない。
「何かあそこだけ空気が違うね!危険な感じがする!」
ドウランが説明してくれた。
そう。ダンジョン、もっと奥に、進めそう、なのだああああああ!
待ちに待った瞬間だぞ!
さっきまではどこに行き着くか分からなかったから、走れなかったんだけど、今は全力疾走だ!!(ほら、ゴールの無いマラソンってさ、走る気が失せてくると思わない?そんなの走ったことない?そっか)
…というわけで、すぐに到着。
途中で、四体くらい魔獣を倒した。えへん。
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