上 下
29 / 88

30

しおりを挟む
「鬼退治くらいミサイルでしろ、頭を使え、頭を」おじいさんはあぐらをかいて私に静かに詰め寄る。
「ですが」俺は落ち着いて話す。
「それができているならもう誰かがやっているはずです」

おじいさんはそれを聞くなり片方の眉毛を上にピクリと動かした。
「無理だったんでしょう?」俺はもう一度言った。


「分かった、分かった、ったく頭の切れるやつだなお前はあ、そうじゃ、どれだけぶっ放しても撃ち落とされるんだもんなあ…よし、仕方ねえ、行かせてやるか」
おじいさんはグフフと笑い出す。
「はあ、全く何を言いだすかと思えばこの子は…」
千鶴も息を吐き出す。
ポッと、行灯の光が強まったような気がする。
「よし、行くと決めたんなら、中途半端なことはせずに、やりきるんじゃぞ」
おじいさんの声に、私は威勢のいい返事で答えた。

次の日はひっそりと旅立ちの準備が進められた。
おじいさんも、そして千鶴さえ、誰一人として呼ばなかったからだ。
代わりに、なんだかこねている。
餅のようなものだ。

数え切れないほどのそれを、俺に渡してくる。
「これは?」
「キビダンゴちゅうて、旅人の食べもんにはもってこいのもんじゃ。これ持って早く行きな」
俺は胸が詰まるような思いだった。
しおりを挟む

処理中です...