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俺達は木々の根を飛び越えるようにして進む。
ハルカはこんな事全然慣れていないから心配だったけど、ヒョイヒョイと上手くやっている。

なぜいきなり運動を始めたかというと、ずっと立ち止まっていても何も起こらなかったからだ。
何も起こらないという事は、多分ゲームのクリアはあり得ないのだろう。
俺はそう判断してハルカについて来るようお願いしたのだ。
ハルカは渋々承知した。
顔の形はそのままに。

ゴウと風が俺の後ろから吹き付けた。
背中に当たって砕けてしまうように消えていく。
その風が向かう先をたどっていくと、草と草の間に小さな隙間がある。

俺はそこに這いつくばるようにして覗いてみた。
「うへー」
光が当たりを覆っている。
そこだけポカポカと輝いていた。

「なー、なにこれ」
俺の隣にはいつの間にかハルカがいた。
じっとそれを見ていると、やがて青く色が変わって、スッと波紋が広がる。

「あ、水…」
そうしていると、今度は鮮やかな緑、日当たりの良い山林。
そして炎。
池の底。鯉がフラフラと泳いでいる。

鯉。俺は少し気まずくなってハルカの方を覗き見た。
ハルカはじっと万華鏡のように移り変わる世界を見つめていた。
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