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『数字の1はな~に?』
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「キャー!可愛い~」「おお、凄えな、、、」
エミが桃色に頰を染めて歓声を上げ、ヨーナスがその横で呆然としたように呟いた。
二人の前では今デパートの屋上で催される子供向けのショーのような光景が繰り広げられていた。
歌い踊る二匹のパンダ、、、可愛いけど、すっごく変な感じがする。
この世界にはあり得ないはずの着ぐるみ。しかも、パンダだなんて私は一体何を考えていたのか、と自分自身に問いただしたくなってくる。
しかし、私の困惑とは裏腹に周りの人々の評判は上々だ。
互助組合で一緒に講習を受けた後に一緒に来たエミとヨーナスにも拒絶反応は見られない。
それどころか、エミに至ってはパンダの歌につられて数字の歌を口ずさんでさえいた。
ベッカーの仕事は素早かった。
着ぐるみを用意し、歌い手を探し出し、あっという間に今日の日を迎えた。
そして、歌うだけでなく踊る事も提案した私の考えに賛同し、歌い手に踊りまでも仕込んでくれたのだ。
流石ベッカーと言うしかない。
パンダ達は可愛さを前面に押し出した振り付けを完璧にシンクロして踊っていた。
尻尾を振り振りする度に子供や女性達の歓声が上がっている。
「『数字の1はな~に?』って、、、これって算学の歌か?」
「そうみたいですね。ヨーナスは算学を習ったことがあるんですか?」
歌に興味を惹かれた様子のヨーナスに問いかけてみる。
私達の前では、パンダがご丁寧にも数字の形を模したイラストまで取り出して歌っていた。
頼んだのは私だが、かなり分かり易いイラストになっており、ベッカーには感謝しなければならない。
「いや、習った事ないよ。分からないと騙されたりするから覚えようと思うんだけど、難しくて苦手でさ。でも、この歌聴いてたら、もう覚えちゃったよ」
ヨーナスが期待通りの感想を言ってくれる。
よし!刷り込み成功です!
この調子でゴリゴリと皆の頭に数字を刷り込むのだ!
最終的に"筆算"で計算が容易になれば、ヨーナス達のように算学が苦手な子達が心無い商人などに騙される事も減るだろう。
ここまで迅速に、私の訳のわからない要求に応えて用意を整えてくれたベッカーには本当に頭が上がらない。
なので、"心無い商人"の部分でベッカーのニヤリと笑う顔が浮かんだ事は内緒の秘密です。ごめんね。
でも、凄く安心しました。この歌で数字の形を皆に覚えてもらう事が出来るでしょう。
そして、算学を習った事のないヨーナスのような人々の苦手意識を払拭するのだ。
計算をする上で数字の形を覚える事はとても重要だ。なぜなら、人は頭の中で計算する際に無意識に数字を頭に思い浮かべるからだ。
数字の形を知らなければ思い浮かべる事も出来ない。
象徴となる数字の形は基礎知識として必要不可欠なのだ。
こうして、足し算や引き算も頭の中で出来るよになり、最終的には"筆算"を介して、少し難解な計算も紙に書かずとも頭に思い浮かべる事で出来るようになる。
そうなるにはかなりの時間を要するかも知れないが、今日のヨーナスを見ていると、計画の第一歩はとても順調に踏み出せたと思えた。
「あ~可愛かった!イーナさん、連れて来てくれて本当にありがとう!」
エミが満面の笑みを浮かべる。
パンダ達の歌は一先ず終了したようで、今はなぜかパンダ達との握手会に突入していた。
子供達がパンダの周りに群がり、大人気だ。
パンダの中の歌い手達の苦労が偲ばれます。
慣れない着ぐるみを着て、歌って踊って子供達に揉みくちゃにされる、、、ご苦労様としか言いようがありません。
ベッカーには彼らへの報酬を弾んでもらうように言っておかなければなりませんね。
「いえ、ベッカー商会で告知を聞いて私も来てみたかったので、楽しそうで良かったです」
「うん!あの"パンダ"すっごく可愛いです!聖獣って可愛いんですね!」
、、、いや、パンダは聖獣じゃないからね?
最初にパンダを紹介する口上を述べた者の所為で、皆に"パンダ=聖獣"が認知されてしまった。
ベッカーの差し金なのは明白ですが、いいのかな?まあ、いいのか?怒るとしたら、、、教会の人とか?
う~ん、真偽なんて教会にも分からないだろうし、大丈夫って事にしておこう!面倒だし!
それにしても、パンダは人気ですね、、、流石国民のアイドルです!
パンダグッズとか販売したら売れそうですね~
抜け目のないベッカーの事なので、すでにグッズ販売に向けて動き出していそうです。
でも、出来ればグッズの売上金は子供達の教育の基金にあててもらえるといいなと思う。
ベッカーには申し訳ないですが、そうお願いしてみましょう。
それに、これはベッカーにとっても悪い話ではないはずだ。
大企業などはよく寄付を行う。
それは、勿論善意や税金対策の面もあるだろうが、企業イメージを上げる役割も大きい。
会社の利益ばかりを追い求めていると、往々にして悪徳企業のように見られ周りに嫌われてしまう。
利益を還元する事で良い会社だと示す事が出来るのだ。
ベッカー商会もこの世界ではかなりの規模を持つ商会なので、儲け過ぎていると見られ一般庶民から見ればいい印象を持たれない事もあるだろう。
しかし、子供達の為にお金を使う事で印象を良くし、商会のイメージを上げる事が出来る。
延いては、ベッカー商会の更なる購買層の拡大にも繋がるだろう。
印象や評判の良い店から品物を買いたくなるのは人の常なのだから。
裏表があり悪どくも思えるが、これは当然の事であり誰も損しない良い方法だと思います。
「じゃあ、そろそろ帰りますか?」
少し離れて止まっている馬車を横目に見ながら、エミとヨーナスに話し掛けた。
馬車にはベルタが乗っている。
私を迎えに来てくれたのだが、パンダを見に行きたかったので、待っていてもらったのだ。
「うん、俺達、"雪の華"印の店に行ってみようと思うんだけど、イーナさんも行く?珍しい物がいっぱいあるらしいよ」
、、、"雪の華"印?
もしかして、もしかしなくてもアレでしょうね、、、
華に似せ、雪の結晶を模した私の商品のロゴマーク。
ヨーナス達にも知られているとは、ベッカーは着々と商品を売り出しているようですね。
「申し訳ありませんが、私は用がありますので、もう帰りますね」
お店を見てみたい気もしますが、すでにいつもより遅くなっているので、ヴィアベルが心配するといけない。早く帰らないと!
「え~残念!イーナさんも行けたら良かったのに!でも、用があるなら仕方ないですね~今度また一緒に行きましょうね!今日はパンダも、あと、氷魔法も見れて楽しかったです!」
エミが名残惜しそうにした後、今日の事を思い出して楽しそうな笑顔を見せる。
ああ、氷魔法ね。
互助組合長に魔法の自主練習の成果を問われて、氷魔法が使えた事を報告したのだ。
私のやらかした中で一番当たり障りがなかったので言ってみたが、かなり皆に驚かれた。
やはり氷魔法の使い手はベルタの言う通り珍しいようだ。
しかも、氷魔法を見てみたいというエミ達のリクエストに答えてシャーベットを作ると、皆目を丸くしていた。
互助組合長は呆れたような深い深い溜息をついていた。
やはり氷魔法を使う用途としシャーベットは一般的ではないようだ。
見せてほしいと言ったエミ達も、何か攻撃魔法や守備魔法のようなものを想像していたのだろう。
まさか、飲み物を凍らす為に使用するとは思わなかったようだ。
けれど、シャーベットは皆にとても好評だった。
凍らせたものは水だったので味はしないはずだが、皆美味しそうに食べていた。
シャクシャクとした食感と冷たさが珍しかったのだろう。
皆にクッキーと一緒にシャーベットを配っていると、例によって互助組合長も列に並んでいたので振る舞うと、「これは!」と言いながら、喜んで食べていたので気に入ってくれたのだろう。
戦い等には一切役に立たない魔法だが、互助組合長も認めてくれたようだった。
帰り際に思い付いたので、「体内の血液を全てシャリシャリにしたらどうでしょう?」と言ってみると、互助組合長は顔を引きつらせてどん引きしていました。
なぜかな?不思議ですね。戦いに役立てる方法考えたのにね!
さあ、では帰るとしましょうかね!
エミ達と別れてこっそりと馬車に近付くと、ベルタが出迎えてくれた。
「奥様、お疲れ様です。今日はいかがでございましたか?」
「また何かやらかしていませんよね?」というようにベルタの視線がこちらを見る。
失礼な!何もしてないよ!、、、多分。
ちょっとシャーベットを振る舞うくらい大した事ないよね?だよね?
そっと目をそらせると、ベルタの目が細められる。
「奥様?」
「早く帰りましょう。ヴィアベルが待っているわ」
「畏まりました」
従順に了承するベルタの目がギラリと光る。
後で洗いざらい吐かされるんだろうな、、、
仕方ないか、ハァ。
エミが桃色に頰を染めて歓声を上げ、ヨーナスがその横で呆然としたように呟いた。
二人の前では今デパートの屋上で催される子供向けのショーのような光景が繰り広げられていた。
歌い踊る二匹のパンダ、、、可愛いけど、すっごく変な感じがする。
この世界にはあり得ないはずの着ぐるみ。しかも、パンダだなんて私は一体何を考えていたのか、と自分自身に問いただしたくなってくる。
しかし、私の困惑とは裏腹に周りの人々の評判は上々だ。
互助組合で一緒に講習を受けた後に一緒に来たエミとヨーナスにも拒絶反応は見られない。
それどころか、エミに至ってはパンダの歌につられて数字の歌を口ずさんでさえいた。
ベッカーの仕事は素早かった。
着ぐるみを用意し、歌い手を探し出し、あっという間に今日の日を迎えた。
そして、歌うだけでなく踊る事も提案した私の考えに賛同し、歌い手に踊りまでも仕込んでくれたのだ。
流石ベッカーと言うしかない。
パンダ達は可愛さを前面に押し出した振り付けを完璧にシンクロして踊っていた。
尻尾を振り振りする度に子供や女性達の歓声が上がっている。
「『数字の1はな~に?』って、、、これって算学の歌か?」
「そうみたいですね。ヨーナスは算学を習ったことがあるんですか?」
歌に興味を惹かれた様子のヨーナスに問いかけてみる。
私達の前では、パンダがご丁寧にも数字の形を模したイラストまで取り出して歌っていた。
頼んだのは私だが、かなり分かり易いイラストになっており、ベッカーには感謝しなければならない。
「いや、習った事ないよ。分からないと騙されたりするから覚えようと思うんだけど、難しくて苦手でさ。でも、この歌聴いてたら、もう覚えちゃったよ」
ヨーナスが期待通りの感想を言ってくれる。
よし!刷り込み成功です!
この調子でゴリゴリと皆の頭に数字を刷り込むのだ!
最終的に"筆算"で計算が容易になれば、ヨーナス達のように算学が苦手な子達が心無い商人などに騙される事も減るだろう。
ここまで迅速に、私の訳のわからない要求に応えて用意を整えてくれたベッカーには本当に頭が上がらない。
なので、"心無い商人"の部分でベッカーのニヤリと笑う顔が浮かんだ事は内緒の秘密です。ごめんね。
でも、凄く安心しました。この歌で数字の形を皆に覚えてもらう事が出来るでしょう。
そして、算学を習った事のないヨーナスのような人々の苦手意識を払拭するのだ。
計算をする上で数字の形を覚える事はとても重要だ。なぜなら、人は頭の中で計算する際に無意識に数字を頭に思い浮かべるからだ。
数字の形を知らなければ思い浮かべる事も出来ない。
象徴となる数字の形は基礎知識として必要不可欠なのだ。
こうして、足し算や引き算も頭の中で出来るよになり、最終的には"筆算"を介して、少し難解な計算も紙に書かずとも頭に思い浮かべる事で出来るようになる。
そうなるにはかなりの時間を要するかも知れないが、今日のヨーナスを見ていると、計画の第一歩はとても順調に踏み出せたと思えた。
「あ~可愛かった!イーナさん、連れて来てくれて本当にありがとう!」
エミが満面の笑みを浮かべる。
パンダ達の歌は一先ず終了したようで、今はなぜかパンダ達との握手会に突入していた。
子供達がパンダの周りに群がり、大人気だ。
パンダの中の歌い手達の苦労が偲ばれます。
慣れない着ぐるみを着て、歌って踊って子供達に揉みくちゃにされる、、、ご苦労様としか言いようがありません。
ベッカーには彼らへの報酬を弾んでもらうように言っておかなければなりませんね。
「いえ、ベッカー商会で告知を聞いて私も来てみたかったので、楽しそうで良かったです」
「うん!あの"パンダ"すっごく可愛いです!聖獣って可愛いんですね!」
、、、いや、パンダは聖獣じゃないからね?
最初にパンダを紹介する口上を述べた者の所為で、皆に"パンダ=聖獣"が認知されてしまった。
ベッカーの差し金なのは明白ですが、いいのかな?まあ、いいのか?怒るとしたら、、、教会の人とか?
う~ん、真偽なんて教会にも分からないだろうし、大丈夫って事にしておこう!面倒だし!
それにしても、パンダは人気ですね、、、流石国民のアイドルです!
パンダグッズとか販売したら売れそうですね~
抜け目のないベッカーの事なので、すでにグッズ販売に向けて動き出していそうです。
でも、出来ればグッズの売上金は子供達の教育の基金にあててもらえるといいなと思う。
ベッカーには申し訳ないですが、そうお願いしてみましょう。
それに、これはベッカーにとっても悪い話ではないはずだ。
大企業などはよく寄付を行う。
それは、勿論善意や税金対策の面もあるだろうが、企業イメージを上げる役割も大きい。
会社の利益ばかりを追い求めていると、往々にして悪徳企業のように見られ周りに嫌われてしまう。
利益を還元する事で良い会社だと示す事が出来るのだ。
ベッカー商会もこの世界ではかなりの規模を持つ商会なので、儲け過ぎていると見られ一般庶民から見ればいい印象を持たれない事もあるだろう。
しかし、子供達の為にお金を使う事で印象を良くし、商会のイメージを上げる事が出来る。
延いては、ベッカー商会の更なる購買層の拡大にも繋がるだろう。
印象や評判の良い店から品物を買いたくなるのは人の常なのだから。
裏表があり悪どくも思えるが、これは当然の事であり誰も損しない良い方法だと思います。
「じゃあ、そろそろ帰りますか?」
少し離れて止まっている馬車を横目に見ながら、エミとヨーナスに話し掛けた。
馬車にはベルタが乗っている。
私を迎えに来てくれたのだが、パンダを見に行きたかったので、待っていてもらったのだ。
「うん、俺達、"雪の華"印の店に行ってみようと思うんだけど、イーナさんも行く?珍しい物がいっぱいあるらしいよ」
、、、"雪の華"印?
もしかして、もしかしなくてもアレでしょうね、、、
華に似せ、雪の結晶を模した私の商品のロゴマーク。
ヨーナス達にも知られているとは、ベッカーは着々と商品を売り出しているようですね。
「申し訳ありませんが、私は用がありますので、もう帰りますね」
お店を見てみたい気もしますが、すでにいつもより遅くなっているので、ヴィアベルが心配するといけない。早く帰らないと!
「え~残念!イーナさんも行けたら良かったのに!でも、用があるなら仕方ないですね~今度また一緒に行きましょうね!今日はパンダも、あと、氷魔法も見れて楽しかったです!」
エミが名残惜しそうにした後、今日の事を思い出して楽しそうな笑顔を見せる。
ああ、氷魔法ね。
互助組合長に魔法の自主練習の成果を問われて、氷魔法が使えた事を報告したのだ。
私のやらかした中で一番当たり障りがなかったので言ってみたが、かなり皆に驚かれた。
やはり氷魔法の使い手はベルタの言う通り珍しいようだ。
しかも、氷魔法を見てみたいというエミ達のリクエストに答えてシャーベットを作ると、皆目を丸くしていた。
互助組合長は呆れたような深い深い溜息をついていた。
やはり氷魔法を使う用途としシャーベットは一般的ではないようだ。
見せてほしいと言ったエミ達も、何か攻撃魔法や守備魔法のようなものを想像していたのだろう。
まさか、飲み物を凍らす為に使用するとは思わなかったようだ。
けれど、シャーベットは皆にとても好評だった。
凍らせたものは水だったので味はしないはずだが、皆美味しそうに食べていた。
シャクシャクとした食感と冷たさが珍しかったのだろう。
皆にクッキーと一緒にシャーベットを配っていると、例によって互助組合長も列に並んでいたので振る舞うと、「これは!」と言いながら、喜んで食べていたので気に入ってくれたのだろう。
戦い等には一切役に立たない魔法だが、互助組合長も認めてくれたようだった。
帰り際に思い付いたので、「体内の血液を全てシャリシャリにしたらどうでしょう?」と言ってみると、互助組合長は顔を引きつらせてどん引きしていました。
なぜかな?不思議ですね。戦いに役立てる方法考えたのにね!
さあ、では帰るとしましょうかね!
エミ達と別れてこっそりと馬車に近付くと、ベルタが出迎えてくれた。
「奥様、お疲れ様です。今日はいかがでございましたか?」
「また何かやらかしていませんよね?」というようにベルタの視線がこちらを見る。
失礼な!何もしてないよ!、、、多分。
ちょっとシャーベットを振る舞うくらい大した事ないよね?だよね?
そっと目をそらせると、ベルタの目が細められる。
「奥様?」
「早く帰りましょう。ヴィアベルが待っているわ」
「畏まりました」
従順に了承するベルタの目がギラリと光る。
後で洗いざらい吐かされるんだろうな、、、
仕方ないか、ハァ。
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