我儘女に転生したよ

B.Branch

文字の大きさ
34 / 50

宝石が採れた

しおりを挟む
「奥様、報告書でございます」

「ありがとう」

ベルタから分厚い紙の束を受け取る。

そこにはアマーリエが所有する鉱山の日々の産出の記録が事細かに記載されていた。
言わずと知れた便利過ぎるスキルで発見した鉱山だ。

以前からアマーリエは報告書を細部まで読み、誤魔化して横領、不正などが行われていないかを確認していた。
それは自身の利益のためともう一つ、労働者が不当な扱いを受けていないかや正当な賃金が支払われているかなどの確認でもあった。

アマーリエのスキルがあれば、紙の上からでもそれらを正確に知ることができ、不正があれば正してきた。
その意味では、顔を合わせない人間にはアマーリエはひどく公正だったと言えるだろう。

過重労働で知られる鉱山では珍しく休みもきちんと取っているため作業効率も良く、自然と産出量も多くなり事故も少なかった。
そのため、人々が集まる人気の職場となり、近くの街も発展途上にあるようだ。

報告書を読み進めていくと、興味深い事が書かれていた。

「色の変わる宝石?」

昼間の太陽の下では青緑色で、夜蝋燭ろうそくの光をかざすと赤色になるらしい。
かなり大きなものが採掘されたようで、報告書からも採掘現場の興奮が読み取れる。

「ベルタ、光で色が変わる宝石ってどんなものかしら?」

報告書から顔を上げ、ベルタに聞いてみる。

「色が変わる宝石、でございますか?、、、もしやあの・・宝石の事でしょうか?」

「知っているの?」

「はい、奥様もご覧になった事がございますよ」

ん?そんな宝石見たことあったかな?
見てたら覚えていそうだけど、、、

「王冠の中央に飾られている宝石ですわ。私は年に一度の建国祭の折に遠目でしか見たことはございませんが、色の変わる希少な宝石だと聞き及んでおります」

王冠は建国祭などの式典や他国の賓客を招く時ぐらいしか被られないので、見る機会は少ない。
でも、あの宝石って国宝だったような?
それに採掘されたものは原石なので加工後の大きさははっきりしないが、王冠に付いているものより大きい可能性がある。

「伝承では力を秘めた輝石きせきと云われています。その力を発現させて建国に力を貸したそうです」

あ~なんだか面倒なものを見つけちゃった感じがしますね~見なかったことにして埋めちゃう?
よし、そうしよう!正解!

「そう、、、」

「奥様、まさか鉱山で色の変わる宝石が採掘されたのですか!?」

私が頭の中で"闇から闇計画"を練っていると、話の流れで勘付いたベルタが問いかけてきた。

「え!?ん、ん~」

「、、、奥様、不穏な事をお考えではありませんよね?」

う、勘がよすぎる。ベルタが読心のスキル持ちでも全く驚かないです。
それとも、私が単純なのか?まさかね?

「ベルタ、でも、よく考えてみて、もし、もしよ?そんな"伝承の輝石"が見つかったとしたらどんな騒ぎが起こるか。大騒ぎどころの話じゃないわ。その宝石に大きな力があるなら私個人の問題では済まなくなるでしょう。公にしてしまうのは危険だと思うの」

私の言葉に、ベルタが考えるように眉根を寄せる。

まあ、まだ見つかった宝石が"伝承の輝石"とは限らない。多分違うよ!うん、そうだよ!厄介事の予感が凄くするのは気のせいだと思う!だよね!?

闇から闇に葬るのは冗談にしても(九割くらい本気だったけど)きちんと調べなければならないだろう。
それには実際に見なければ始まらない。

私のスキルは便利なようで不便なので、鑑定は出来ない。
その宝石を見ても"伝承の輝石"かどうかは分からない。そもそも調べるとしたら王冠のものと比べるしかなく、大事おおごとになるのは必至だ。

しかし、光り方で良いものか悪いものかの判別は出来るだろう。もし、光って見えなければ、大したものではないので、万事解決だ。寧ろそうであって欲しい!本気マジで!!光っていませんように!

よし、じゃあ、屋敷に届けてもらうように連絡しよう。あと、あまり騒がないように口止めもしておかなくてはならない。噂が一人歩きしてしまい大事になる事はよくある。

ペラペラと書類をめくり、報告書を最後まで読んでみる。

、、、はい、無理~
運べない!!大き過ぎるわ!!

なんと、縦横が小柄な男性くらいあり、重量も力自慢の人間が十人がかりでやっと持ち上がるレベルらしい。
無理矢理運べなくはないだろうが、この世界の道は舗装された道の方が少ない。荷馬車も踏み抜きそうな荷物を長距離運ぶのは至難の技だろう。
っていうかこれって本当に宝石?あり得ない大きさなんですけど。
どうする?やっぱりもう一度埋める?その方が無難かな~

鉱山付近ってどうなってるんだっけ?
鉱山効果で賑わって発展してるらしいけど、、、警備の人間も派遣しているので治安も悪くないはず。
鉱山からの収入を近隣の整備にも充てていたので、街も中規模くらいには発展しているだろう。

アマーリエはなぜそんなにあの鉱山に力を注いでいたのだろう?
当時の記憶は、、、そう、答えは超超超光ったからだ。
何があるの!?ってくらい地図が光った。

、、、何がある?って、まさか、あの宝石の所為?
あ~~~~最悪。厄介事さんがズンズンこちらに向かって行進して来る音がするよ。ハァ。

「ベルタ、、、旅の用意をしてもらう事になると思うわ」

「鉱山へ足を運ばれるのですか!?」

溜息交じりに力なくお願いすると、ベルタが少し驚いたように聞いて来る。
まさか私が態々出向くとまでは考えていなかったようだ。

「ええ、片道十日はかかるわよね、、、最悪」

おっと、思わず本音が口からはみ出たよ。
だって、ヴィアベル!!私の可愛い可愛いヴィアベルと一ヶ月近く会えないって事だよ!?
これを最悪と言わず何と言うのか!もう!

項垂れながらも気分転換に次の書類を手に取る。

パンダか、、、

それはベッカーからのグッズ販売の意見書だった。
寄付の件をベッカーにすると、最初は乗り気ではなさそうにしていたが、ベッカーにも確実に利になる話をすると納得してくれた。

私の"寄付"がお店の宣伝と評判に繋がるという説は、ベッカーには新鮮な驚きだったようで、最後にはとても嬉しそうにニヤリと笑った。
子供達や算学を学ぶ人々への寄付の話をしているのに、なぜか悪巧みをしているような雰囲気に、、、やっぱり、"心無い商人"?いやいや、違うよね?

「木彫りのパンダ、、、」

ベッカーの意見書を読み進めると、グッズとして木でパンダをかたどった人形を作成してはどうかと書かれていた。

微妙~可愛く作ればそれなりに悪くないかも知れないが、どうしても鮭を咥えた熊の置物を連想してしまう。まあ、安価には作れるけど、、、庶民にも手に取りやすくていいのかな?

でも、やっぱりパンダはあのモフモフがなければ可愛さ半減だろう。
って事は、"ぬいぐるみ"だよね?
この世界にはないので、ベッカーに提案してみようかな。アンネリース様が気に入ってくれそうだ。ヴィアベルはどうかな?しっかりしていても三歳児だし、気に入るでしょう!パンダは無敵なはずだ!

「さあ、そろそろヴィアベルが戻る時間だわ。お茶に向かいましょう」

今日のお菓子は、揚げパンに生クリームを入れて粉砂糖をまぶしたものだ。
そう、某ドーナツ屋の定番の品だ。私はアレが大好きだったので、再現してみたのだ。

料理長はパン生地を揚げるという発想がなかったようで、また大袈裟に感動していた。
もう、いつもの事なのでスルーしました。
見習いのクルトとダミアンでさえ放置を学んだようで、ダミアンは「そっすね~」とかなり適当な相槌をうっていた。
料理長の威厳は何処へ、、、いや、尊敬されていない訳ではないだろうけど、、、

さ!気が滅入る案件もあったけど、久々の揚げパンをヴィアベルと一緒に楽しもっと!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...