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安全快適な旅とは
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「お母様、、、ご旅行に行かれるって、本当ですか?」
居間で寛いでいると、ヴィアヴェルがポツリと呟いた。
「え?」
突然の問いかけに、思わず間の抜けた返事を返してしまう。
驚いてヴィアヴェルの方を見るが、俯いてこちらを見ないようにしていた。
なぜヴィアヴェルが知っているのか疑問に思ったが、恐らく私の鉱山への旅行の準備をする侍女の話を聞いてしまったのだろう。
「ヴィアベル、、、」
名前を呼んで柔らかな栗色の髪をそっと撫でると、ヴィアベルが私のお腹に抱きついてその顔を埋めた。
縋り付くようなその様子に、私は未だ癒えていないヴィアベルの心を見たような気がした。
私がアマーリエとして覚醒してそれ程の月日は経っておらず、それまでアマーリエはヴィアベルに愛情を示してこなかった。母親に冷たく接しられ続けたヴィアベルはさぞ傷付いただろう。
しかし、以前も今もヴィアベルがアマーリエを嫌うような素振りを見せた事はなく、いつも満面の笑みをこちらに向けてくれた。
嫌われても仕方のない事をしていたのに。
あのまま続けていたら、いつかヴィアベルの笑顔を失っていたのかも知れない。その考えに思わずぞっとする。
そこまで考えて、私は意を決した。
「ヴィアベル?」
もう一度名前を呼び、その円らで無垢な瞳がこちらを見てくれるのを静かに待つ。
「お母様?」
ヴィアベルがおずおずと顔を上げる。
「ヴィアベル、あなたも一緒に行きましょう!どうかしら?」
そう私が笑顔で告げると、ヴィアベルの瞳が溢れそうなほど見開かれる。
「、、、ぼ、僕もですか?」
「ええ!きっと楽しい旅になるわ!」
「は、はい!!僕、お母様と一緒に行きたいです!」
嬉しそうな元気一杯の声が返ってきた。
よし!そうと決まればやらなければならないことは大量にある。
先ずは、、、家長であるクリストハルト様の許しを得なければならない。
私一人ならば、ちょっと行って参りますで済ませるが、ヴィアベルが一緒だとそうはいかない。母親とはいえ、フラクスブルベ家の子息を連れ出すのだから、きちんと話を通さなければならない。
ここはルーヘンに口添えをお願いするのが良いだろう。
迷惑そうな我が家の家令の顔が頭に浮かぶが、彼ならばクリストハルト様を説得してくれるはずだ。よろしくルーヘン!他力本願でごめんね!
後は、、、これが一番大事なことだが、"安全の確保"を徹底しなければならない。
移動手段は馬しかなく、当然馬車を使用する事になるだろう。車と違い馬車は鈍い。本当に!だから片道十日も掛かるのだ。
新幹線が恋しい、、、飛行機でもいいけど、、、飛行機、、、飛ぶ手段ならどうにかなるかな?いや、ヴィアベルがいるのにそのような危険を冒す訳にはいかない。やるとしても確実に安全だという保証がなければ乗せられない。
まあ、いずれ考えるにしても、今回は馬車で行くのが無難だろう。
「奥様、、、?」
考え込んでいると、ベルタの控えめな声が掛けられた。
「何かしら?」
「ヴィアベル様が、、、」
目線を落とすと、ヴィアベルが私には抱きついたまま眠ってしまっていた。
「あら、、、」
その可愛らしい寝顔に思わず笑みが漏れる。
可愛い大切なヴィアベル。連れて行くと決めたのだからこの子の安全は私の命に代えても絶対に守ります!
ヴィアベルを部屋に運んでもらい、その寝顔を暫く見つめてから私も自室に戻った。
ベルタに書くものを用意してもらい、思い付くままに書き出していく。
"馬車の改良"
先ずはこれについて考えてみよう。
魔物や盗賊が襲ってきた場合、馬車の強化も大事だが、"馬の強化"も重要になってくるだろう。出来るなら、"踏み潰すか蹴飛ばす"かしてくれれば良いのだけれど、、、
"盾と攻撃力の強化"、、、後は、、、
「奥様、、、」
「え?何かしら?」
背後を振り返ると、呆れたようなベルタと目が合った。
「奥様、馬に攻撃力を求めるのは如何なものかと、、、元来馬は臆病な動物ですし、、、」
私がつらつらと考えた案を書き出しているのを見てしまったようで、ベルタがやんわりと反対意見を述べる。
そっか、馬車の馬にそこまで求めたら気の毒だよね~仕方がないので、"極厚の盾"で我慢しようかな。"目から光線"、、、いや、危ないか。
ベルタの呆れた目が冷たい目に変わりそうなので、馬の強化案はこれくらいにしておこう。
次は"馬車をいかに快適で安全にするか"を考えてみよう。
色々考えを巡らせてみるが、アレの活用の可能性を考えてみるのがいいのかも知れない。
そう、一度は恐ろし過ぎて二度とやるまいと思ったアレだ。
"次元結界"
次元空間を開いてその中に入るというものだ。
互助組合長にさり気無く聞いてみたところ、氷魔法どころではない希少魔法である事が判明した。
自分の使える魔法を公にしない人間も多いので定かではないが、報告されている者の中にはこの魔法を操る者はいないらしい。
そう説明した後、互助組合長はこちらをジトッと見て「まさか、、、」と呟いていたが、精神衛生上聞きたくなかったらしく、それ以上何も言われなかった。互助組合長が胃の辺りを抑えて「イタタタタ、、、」と呻いていたが、私の所為ではありません。よね?
そんな事があり、私なりに本で調べたり魔法を試したりした結果、次元空間の中自体に危険はないだろうという結論に達した。
危険があるとすれば出られなくなる事だが、私がいればそんな事もないだろう。
という訳で、"馬車の入り口を次元空間に繋げる"事にする。
今、背後で深い深い溜息が聞こえのは多分気のせいだろう。
では、さくさくと話を前に進めよう。
不自然ではないように、"使う空間は馬車の中と同じくらいの大きさ"にしておこう。ただ座席を作って座ると、片道十日間もの旅はヴィアベルにかなりの負担を強いるだろう。
ならば、平安時代の牛車のような仕様でどうだろう。
つまり、"座席を置かず地べたに座る"のだ。
フカフカの絨毯を敷き、沢山のクッションを置く。クッションにもたれて座る事が出来、疲れたら寝転ぶことも出来る。
次元空間の中なので勿論揺れたりもしないし、暑くも寒くもない。
そうそう、旅行で外を見たくなるのは子供の常なので、窓の部分から外の様子が分かるようにする事も忘れてはならない。
そうなると、煩くない程度に外の音も聞こえた方がいいのか、、、中々難しいな、、、まあ、細かい事は後で考えよう。
快適さは確保できたので、次は"安全面の強化"だ。
次元空間の中にいるのである意味とても安全なのだが、それ以外にもやはり対策は必要だろう。
どうしたらいいのか、、、ん~、、、そっか、"見えなければいい"のか、、、
馬車が見えなければ襲われないのだ。
では、見えなくするにはどうすればいいのか?ふむ。
では、見るとはどういう現象なのか?
完全な闇の中では人は物を見ることができない。人は光が物体に反射する事で物の形や色を見る事が出来る、と習ったように思う。
ということは、光を反射しないようにすれば物は見えなくなるのか?
取り敢えず、実験してみた。
諦めの境地に達したのか、ベルタが淡々と協力してくれた。
実験結果としては、無理という結論でした。
光の当たる状況で景色の中の一部分だけ光を反射しない物があると、何かは分からないが黒い物体がある事は分かり、見えなくなりはしなかったのだ。
では、人の目に完全に映らないようにするにはどうすればいいのか?いろいろ考えてみたが、見えなくなるには透明になるしかなく、透明になっても音や気配はするので存在には気付かれる。
そもそもこの世界には人よりも目も感覚も鋭い獣人などがいるし、魔物や魔獣もいる。
音や気配を消せばいいのかも知れないが、それを自分だけでなく全ての物や人にやるとなると、色々な不都合が出てくるように思う。
では、どうすればいいのか?
やはり、直接的な方法は諦めて、間接的な方法を試す方がいいのかも知れない。
つまり、"見えているが見えいない状態にする"のだ。人は興味のないものには意識を向けないので、記憶にも残らない。人の無意識に働きかけ、認知されにくくするのだ。
「今、何か通った?」「え?気付かなかった」的な感じだ。
どうだろう?これがベストではなかろうか?
この魔法の"影響する範囲を半径五十メートル程に設定"する。
実際には見えているので接触事故等にはならないが、その存在はすぐに意識の外に出てしまう。これなら狙われる確率も減るだろう。
もし、遠距離攻撃を仕掛けられた時の為に、"馬車にも盾の魔法"を掛けておくことを忘れてはならないだろう。
後、いくら一応は見えていると言っても人通りの多い街中ではこの魔法は切った方がいいので、"オンオフスイッチ"を付けておいた方がいいだろう。人身事故を起こしたら大変だ。
その他にも認知されないと困る場面もあるだろう。無視されまくったら悲し過ぎるしね。
もしもの時の為に"攻撃魔法の練習"も必要だろうか?
馬達による攻撃はベルタに却下されたので、自分でどうにかするしかない。
まあ、護衛の人間は連れて行くので、私の出番はないと思うが、、、
手近なものはやはり"血液シャリシャリ魔法"だろうか。"体内の血液をシャーベット状にする"というある意味情け容赦ない攻撃だ。
でも、ヴィアベルがそんな光景を見たら心に傷が残るのではなかろうか?いや、この世界は平和過ぎる以前の世界とは違うので、大丈夫なのかも知れないが、、、
まあ、血液をシャーベットにしても見た目には分からないので、人が突然倒れるだけだ。苦しみも少ないだろう。まあ、でも、もう少し穏当な攻撃魔法も覚えた方がいいのかも?
う~ん、と唸りながら色々案を出していると、カチャリと目の前に新しいお茶が置かれた。
「あら、ありがとう」
「いえ」
お礼を言うと、ベルタから力無い返事が返ってきた。
あれ?いつも元気なガミガミベルタさんがお疲れですか?
部屋に戻った時は元気そうだったのに、いつの間にそんなに精魂尽き果てましたみたいな状態になったのだろう。不思議だね?なぜに?
「ベルタ、元気がないけれど、大丈夫?」
「、、、はい、大丈夫ですわ。ご心配には及びません」
否定の言葉とは裏腹に、なぜかベルタの責めるような視線を感じる。
私の所為?いや、私何もしてないよね?
大人しく机に座って書き物をしているだけだし。ちょっと実験もしたが、それだけだ。
うん、私は関係ないと言う事で!ベルタさんには何か美味しいお菓子でもあげときましょう。
何となく罪悪感が湧いてくるのは多分気の所為だ。そう思おう!気付いてはいけない事も世の中にはあるのだ!空気なんて読みませんよ!ビバ鈍感力!
さて、まあ、何にしても安全確保の為に備える事は大切だが、ヴィアベルがいるので基本何も起こらない方がいい。
色々試行錯誤をして最善の方法を考えましょう!ヴィアベルとの楽しい旅行の為に!
居間で寛いでいると、ヴィアヴェルがポツリと呟いた。
「え?」
突然の問いかけに、思わず間の抜けた返事を返してしまう。
驚いてヴィアヴェルの方を見るが、俯いてこちらを見ないようにしていた。
なぜヴィアヴェルが知っているのか疑問に思ったが、恐らく私の鉱山への旅行の準備をする侍女の話を聞いてしまったのだろう。
「ヴィアベル、、、」
名前を呼んで柔らかな栗色の髪をそっと撫でると、ヴィアベルが私のお腹に抱きついてその顔を埋めた。
縋り付くようなその様子に、私は未だ癒えていないヴィアベルの心を見たような気がした。
私がアマーリエとして覚醒してそれ程の月日は経っておらず、それまでアマーリエはヴィアベルに愛情を示してこなかった。母親に冷たく接しられ続けたヴィアベルはさぞ傷付いただろう。
しかし、以前も今もヴィアベルがアマーリエを嫌うような素振りを見せた事はなく、いつも満面の笑みをこちらに向けてくれた。
嫌われても仕方のない事をしていたのに。
あのまま続けていたら、いつかヴィアベルの笑顔を失っていたのかも知れない。その考えに思わずぞっとする。
そこまで考えて、私は意を決した。
「ヴィアベル?」
もう一度名前を呼び、その円らで無垢な瞳がこちらを見てくれるのを静かに待つ。
「お母様?」
ヴィアベルがおずおずと顔を上げる。
「ヴィアベル、あなたも一緒に行きましょう!どうかしら?」
そう私が笑顔で告げると、ヴィアベルの瞳が溢れそうなほど見開かれる。
「、、、ぼ、僕もですか?」
「ええ!きっと楽しい旅になるわ!」
「は、はい!!僕、お母様と一緒に行きたいです!」
嬉しそうな元気一杯の声が返ってきた。
よし!そうと決まればやらなければならないことは大量にある。
先ずは、、、家長であるクリストハルト様の許しを得なければならない。
私一人ならば、ちょっと行って参りますで済ませるが、ヴィアベルが一緒だとそうはいかない。母親とはいえ、フラクスブルベ家の子息を連れ出すのだから、きちんと話を通さなければならない。
ここはルーヘンに口添えをお願いするのが良いだろう。
迷惑そうな我が家の家令の顔が頭に浮かぶが、彼ならばクリストハルト様を説得してくれるはずだ。よろしくルーヘン!他力本願でごめんね!
後は、、、これが一番大事なことだが、"安全の確保"を徹底しなければならない。
移動手段は馬しかなく、当然馬車を使用する事になるだろう。車と違い馬車は鈍い。本当に!だから片道十日も掛かるのだ。
新幹線が恋しい、、、飛行機でもいいけど、、、飛行機、、、飛ぶ手段ならどうにかなるかな?いや、ヴィアベルがいるのにそのような危険を冒す訳にはいかない。やるとしても確実に安全だという保証がなければ乗せられない。
まあ、いずれ考えるにしても、今回は馬車で行くのが無難だろう。
「奥様、、、?」
考え込んでいると、ベルタの控えめな声が掛けられた。
「何かしら?」
「ヴィアベル様が、、、」
目線を落とすと、ヴィアベルが私には抱きついたまま眠ってしまっていた。
「あら、、、」
その可愛らしい寝顔に思わず笑みが漏れる。
可愛い大切なヴィアベル。連れて行くと決めたのだからこの子の安全は私の命に代えても絶対に守ります!
ヴィアベルを部屋に運んでもらい、その寝顔を暫く見つめてから私も自室に戻った。
ベルタに書くものを用意してもらい、思い付くままに書き出していく。
"馬車の改良"
先ずはこれについて考えてみよう。
魔物や盗賊が襲ってきた場合、馬車の強化も大事だが、"馬の強化"も重要になってくるだろう。出来るなら、"踏み潰すか蹴飛ばす"かしてくれれば良いのだけれど、、、
"盾と攻撃力の強化"、、、後は、、、
「奥様、、、」
「え?何かしら?」
背後を振り返ると、呆れたようなベルタと目が合った。
「奥様、馬に攻撃力を求めるのは如何なものかと、、、元来馬は臆病な動物ですし、、、」
私がつらつらと考えた案を書き出しているのを見てしまったようで、ベルタがやんわりと反対意見を述べる。
そっか、馬車の馬にそこまで求めたら気の毒だよね~仕方がないので、"極厚の盾"で我慢しようかな。"目から光線"、、、いや、危ないか。
ベルタの呆れた目が冷たい目に変わりそうなので、馬の強化案はこれくらいにしておこう。
次は"馬車をいかに快適で安全にするか"を考えてみよう。
色々考えを巡らせてみるが、アレの活用の可能性を考えてみるのがいいのかも知れない。
そう、一度は恐ろし過ぎて二度とやるまいと思ったアレだ。
"次元結界"
次元空間を開いてその中に入るというものだ。
互助組合長にさり気無く聞いてみたところ、氷魔法どころではない希少魔法である事が判明した。
自分の使える魔法を公にしない人間も多いので定かではないが、報告されている者の中にはこの魔法を操る者はいないらしい。
そう説明した後、互助組合長はこちらをジトッと見て「まさか、、、」と呟いていたが、精神衛生上聞きたくなかったらしく、それ以上何も言われなかった。互助組合長が胃の辺りを抑えて「イタタタタ、、、」と呻いていたが、私の所為ではありません。よね?
そんな事があり、私なりに本で調べたり魔法を試したりした結果、次元空間の中自体に危険はないだろうという結論に達した。
危険があるとすれば出られなくなる事だが、私がいればそんな事もないだろう。
という訳で、"馬車の入り口を次元空間に繋げる"事にする。
今、背後で深い深い溜息が聞こえのは多分気のせいだろう。
では、さくさくと話を前に進めよう。
不自然ではないように、"使う空間は馬車の中と同じくらいの大きさ"にしておこう。ただ座席を作って座ると、片道十日間もの旅はヴィアベルにかなりの負担を強いるだろう。
ならば、平安時代の牛車のような仕様でどうだろう。
つまり、"座席を置かず地べたに座る"のだ。
フカフカの絨毯を敷き、沢山のクッションを置く。クッションにもたれて座る事が出来、疲れたら寝転ぶことも出来る。
次元空間の中なので勿論揺れたりもしないし、暑くも寒くもない。
そうそう、旅行で外を見たくなるのは子供の常なので、窓の部分から外の様子が分かるようにする事も忘れてはならない。
そうなると、煩くない程度に外の音も聞こえた方がいいのか、、、中々難しいな、、、まあ、細かい事は後で考えよう。
快適さは確保できたので、次は"安全面の強化"だ。
次元空間の中にいるのである意味とても安全なのだが、それ以外にもやはり対策は必要だろう。
どうしたらいいのか、、、ん~、、、そっか、"見えなければいい"のか、、、
馬車が見えなければ襲われないのだ。
では、見えなくするにはどうすればいいのか?ふむ。
では、見るとはどういう現象なのか?
完全な闇の中では人は物を見ることができない。人は光が物体に反射する事で物の形や色を見る事が出来る、と習ったように思う。
ということは、光を反射しないようにすれば物は見えなくなるのか?
取り敢えず、実験してみた。
諦めの境地に達したのか、ベルタが淡々と協力してくれた。
実験結果としては、無理という結論でした。
光の当たる状況で景色の中の一部分だけ光を反射しない物があると、何かは分からないが黒い物体がある事は分かり、見えなくなりはしなかったのだ。
では、人の目に完全に映らないようにするにはどうすればいいのか?いろいろ考えてみたが、見えなくなるには透明になるしかなく、透明になっても音や気配はするので存在には気付かれる。
そもそもこの世界には人よりも目も感覚も鋭い獣人などがいるし、魔物や魔獣もいる。
音や気配を消せばいいのかも知れないが、それを自分だけでなく全ての物や人にやるとなると、色々な不都合が出てくるように思う。
では、どうすればいいのか?
やはり、直接的な方法は諦めて、間接的な方法を試す方がいいのかも知れない。
つまり、"見えているが見えいない状態にする"のだ。人は興味のないものには意識を向けないので、記憶にも残らない。人の無意識に働きかけ、認知されにくくするのだ。
「今、何か通った?」「え?気付かなかった」的な感じだ。
どうだろう?これがベストではなかろうか?
この魔法の"影響する範囲を半径五十メートル程に設定"する。
実際には見えているので接触事故等にはならないが、その存在はすぐに意識の外に出てしまう。これなら狙われる確率も減るだろう。
もし、遠距離攻撃を仕掛けられた時の為に、"馬車にも盾の魔法"を掛けておくことを忘れてはならないだろう。
後、いくら一応は見えていると言っても人通りの多い街中ではこの魔法は切った方がいいので、"オンオフスイッチ"を付けておいた方がいいだろう。人身事故を起こしたら大変だ。
その他にも認知されないと困る場面もあるだろう。無視されまくったら悲し過ぎるしね。
もしもの時の為に"攻撃魔法の練習"も必要だろうか?
馬達による攻撃はベルタに却下されたので、自分でどうにかするしかない。
まあ、護衛の人間は連れて行くので、私の出番はないと思うが、、、
手近なものはやはり"血液シャリシャリ魔法"だろうか。"体内の血液をシャーベット状にする"というある意味情け容赦ない攻撃だ。
でも、ヴィアベルがそんな光景を見たら心に傷が残るのではなかろうか?いや、この世界は平和過ぎる以前の世界とは違うので、大丈夫なのかも知れないが、、、
まあ、血液をシャーベットにしても見た目には分からないので、人が突然倒れるだけだ。苦しみも少ないだろう。まあ、でも、もう少し穏当な攻撃魔法も覚えた方がいいのかも?
う~ん、と唸りながら色々案を出していると、カチャリと目の前に新しいお茶が置かれた。
「あら、ありがとう」
「いえ」
お礼を言うと、ベルタから力無い返事が返ってきた。
あれ?いつも元気なガミガミベルタさんがお疲れですか?
部屋に戻った時は元気そうだったのに、いつの間にそんなに精魂尽き果てましたみたいな状態になったのだろう。不思議だね?なぜに?
「ベルタ、元気がないけれど、大丈夫?」
「、、、はい、大丈夫ですわ。ご心配には及びません」
否定の言葉とは裏腹に、なぜかベルタの責めるような視線を感じる。
私の所為?いや、私何もしてないよね?
大人しく机に座って書き物をしているだけだし。ちょっと実験もしたが、それだけだ。
うん、私は関係ないと言う事で!ベルタさんには何か美味しいお菓子でもあげときましょう。
何となく罪悪感が湧いてくるのは多分気の所為だ。そう思おう!気付いてはいけない事も世の中にはあるのだ!空気なんて読みませんよ!ビバ鈍感力!
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