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第1章
お出かけ。
しおりを挟む私にはこの異世界の言葉が理解できるようだ。
おそらく、前世の記憶はあるが、転生してこの世界の生命体になったからだろう。
妖精のレンが生まれてすぐに話せるように私も話せてしまう。
人間として転生したなら無理だろうが、悲しいかな私は人間ではない「木の実」だ。
意識だけでも存在できてしまうので、精霊のような立ち位置なのだろう。
そう、なので少年(仮名トム)の呆然とした言葉も理解できてしまう。
「うお、お、黄金の実???」
私(黄金の実)がプカプカと木のそばで浮かぶのを見て、トムが口をパクパクさせながら指をさす。
先程、毛玉が飛んできたが、私は無事だった。
心の中では襲われた悲劇のヒロイン(木の実)気分だったが、実際にはそれ程の跳躍力も破壊力もなかったのだ。
『そうです、私が黄金の実です』
私は偉そうに言ってみたが、トムには聞こえない。
普通の人間に念話の能力はないのだろう。
しかも、誰も木の実と意思疎通ができるとは思わない。
異世界人生初の人間を観察していると、突然木をよじ登り始めた。
必死の形相でグングンと登ってくる。
顔が怖いよ!少年!
どうも彼の目的は私(黄金の実)のようだ。
世界に一本しかない木に実るとてもとても希少な(神の言)果実。
効果効能もさぞかし希少なのだろう。
さて、どうしようか?
逃げるのは簡単だ。
でも、このままでは一生森の中で過ごすことになりそうだ。
移動はできるが、ものがプカプカ浮いていたら不自然だろう。
トムはきっと多分おそらく私を村か街に連れて(持って)行くはず!!
この場で食べないよね?
いや、とてもとても希少な黄金の実なので、高確率で持ち帰るはずだ。
万が一食べられても、ここから出ればいい。
よし!!異世界探訪だ!!
ワクワク。
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