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14 謎多き青年
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日が暮れ、本格的に嵐がやって来た。
ごうごうと風の音が鳴り、雨は激しく壁を叩いている。
轟く稲光がまるで閃光の様に一瞬だけ光る。
ああ、私の大切な作物たち・・・。
きっと駄目になってしまうわ。
吹き飛んでいくなら父の下着にして。
全部無くなっても別に構わないから。父がちょっと困るだけで。
「嵐なんて、一瞬でいなくなっちゃえばいいのに」
リビングで足を抱えながら、一人ごちる。
ジャスミンの香りが腕から香る。良い匂いだ。
「リリィ。今日は一緒に寝る?」
ネルが枕を片手に尋ねてくる。
「寝ないわよ」
冗談じゃない。嵐を口実に一緒に寝ようとしないで。
下心があるのが見え見えよ。
冷たくネルを突き放す。
しかし、彼は気にした様子も無く、私の隣に座った。
枕を置き、指先を絡め、肩を寄せる。
それから、首筋、頬へと優しく口付ける。
もうこれぐらいでは私は驚かない・・・・のは嘘だ。
本当は心臓が今にも飛び出して歩き出しそうなくらい、ドキドキしてる。
すりっとネルにすり寄り返すと、静かに、嬉しそうに笑うネルの微かな音が聞こえる。
「好き?」
ネルが尋ねる。何を?とは言わなかった。
言わなくても何を指しているのかはすぐに分かったから。
「多分ね」
視線を逸らしながら小さく呟く。
きっと、多分では無く確実に好き。
今なら素直になれる気がした。
「ネル、私ね___」
次の瞬間、激しく揺れていた窓が、ピタリとその動きを止めた。
雨の音も、消えている。勿論雷の音だって。
結界は”何か”が起きた時に強くその効力を発揮する。
おかしい!何かあったんだわ!
「リリィ、外は危ないぞ!」
「ちょっと見てくるだけだから!」
たまたま通りがかった父が私を引き留める。が、その手を振り払い私は玄関へと走った。
気のせいであって欲しい。どうか気のせいで・・・。
願いながら勢いよく玄関の戸を開ける。
静まり返った結界の向こうで、ゆらりと柱の様に渦を巻く竜巻が、果樹園の木を根こそぎ奪っていくのが見えた。
激しい雨と風、赤く光る雲がまるで戦場のようだった。
「大変!!」
嵐で今年の分は駄目になったとしても、また来年頑張ればいい。でも、この竜巻はその来年すら奪っていってしまう。
そうなれば、極貧生活に逆戻りだ。
「諦めるんだ!リリィ!」
父の叫ぶ声を聞きながら、どうしても我慢できずに竜巻の方へ走っていく。
植木を一つでも持ち帰りたい。その一心だった。
「ネル!」
振り返ることなくその名を呼ぶ。
すると、しゅっと音を立ててネルが私の隣に瞬間移動してきた。
この場にいるのであればその力、是非とも借りたい。
「この風どうにかならない?・・・ネル?」
思わず足を止める。
ネルがじっと竜巻の方を見ている。
青い瞳に赤黒い光線が映り込む。
「____思い出した・・・」
零れる雫の様にぽつりと、でもはっきりとネルはそう言った。
そして、思い切り腕を振り上げる!
ぐわあぁぁぁぁ
まるで獣の断末魔の様な音を立てて地面が揺れる。
天まで届く竜巻が苦しそうに息をしたかと思うと、しゅるしゅると何かに吸い込まれていく。
吸引力の変わらない唯一の掃除機!?と思わず叫びたくなる。
しゅぽん
最後は、拍子抜けするような音を立てて竜巻が消える。
嵐も何もかも、吸い取られてしまって、空には煌々と星が輝いている。
三日月がにたりと不吉な笑みを浮かべていた。
「ネル、あなた・・・」
何者なの?
震える声で尋ねたが、私の言葉は今のネルには届かなかった。
ごうごうと風の音が鳴り、雨は激しく壁を叩いている。
轟く稲光がまるで閃光の様に一瞬だけ光る。
ああ、私の大切な作物たち・・・。
きっと駄目になってしまうわ。
吹き飛んでいくなら父の下着にして。
全部無くなっても別に構わないから。父がちょっと困るだけで。
「嵐なんて、一瞬でいなくなっちゃえばいいのに」
リビングで足を抱えながら、一人ごちる。
ジャスミンの香りが腕から香る。良い匂いだ。
「リリィ。今日は一緒に寝る?」
ネルが枕を片手に尋ねてくる。
「寝ないわよ」
冗談じゃない。嵐を口実に一緒に寝ようとしないで。
下心があるのが見え見えよ。
冷たくネルを突き放す。
しかし、彼は気にした様子も無く、私の隣に座った。
枕を置き、指先を絡め、肩を寄せる。
それから、首筋、頬へと優しく口付ける。
もうこれぐらいでは私は驚かない・・・・のは嘘だ。
本当は心臓が今にも飛び出して歩き出しそうなくらい、ドキドキしてる。
すりっとネルにすり寄り返すと、静かに、嬉しそうに笑うネルの微かな音が聞こえる。
「好き?」
ネルが尋ねる。何を?とは言わなかった。
言わなくても何を指しているのかはすぐに分かったから。
「多分ね」
視線を逸らしながら小さく呟く。
きっと、多分では無く確実に好き。
今なら素直になれる気がした。
「ネル、私ね___」
次の瞬間、激しく揺れていた窓が、ピタリとその動きを止めた。
雨の音も、消えている。勿論雷の音だって。
結界は”何か”が起きた時に強くその効力を発揮する。
おかしい!何かあったんだわ!
「リリィ、外は危ないぞ!」
「ちょっと見てくるだけだから!」
たまたま通りがかった父が私を引き留める。が、その手を振り払い私は玄関へと走った。
気のせいであって欲しい。どうか気のせいで・・・。
願いながら勢いよく玄関の戸を開ける。
静まり返った結界の向こうで、ゆらりと柱の様に渦を巻く竜巻が、果樹園の木を根こそぎ奪っていくのが見えた。
激しい雨と風、赤く光る雲がまるで戦場のようだった。
「大変!!」
嵐で今年の分は駄目になったとしても、また来年頑張ればいい。でも、この竜巻はその来年すら奪っていってしまう。
そうなれば、極貧生活に逆戻りだ。
「諦めるんだ!リリィ!」
父の叫ぶ声を聞きながら、どうしても我慢できずに竜巻の方へ走っていく。
植木を一つでも持ち帰りたい。その一心だった。
「ネル!」
振り返ることなくその名を呼ぶ。
すると、しゅっと音を立ててネルが私の隣に瞬間移動してきた。
この場にいるのであればその力、是非とも借りたい。
「この風どうにかならない?・・・ネル?」
思わず足を止める。
ネルがじっと竜巻の方を見ている。
青い瞳に赤黒い光線が映り込む。
「____思い出した・・・」
零れる雫の様にぽつりと、でもはっきりとネルはそう言った。
そして、思い切り腕を振り上げる!
ぐわあぁぁぁぁ
まるで獣の断末魔の様な音を立てて地面が揺れる。
天まで届く竜巻が苦しそうに息をしたかと思うと、しゅるしゅると何かに吸い込まれていく。
吸引力の変わらない唯一の掃除機!?と思わず叫びたくなる。
しゅぽん
最後は、拍子抜けするような音を立てて竜巻が消える。
嵐も何もかも、吸い取られてしまって、空には煌々と星が輝いている。
三日月がにたりと不吉な笑みを浮かべていた。
「ネル、あなた・・・」
何者なの?
震える声で尋ねたが、私の言葉は今のネルには届かなかった。
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