婚約破棄された男爵令嬢、ボロ雑巾を拾ったと思ったら、大魔法使いでした!~番だと言われて溺愛されたんですが!?~

水中 沈

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17 大国からの使者

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朝食を食べ終え、リビングにて家族皆でのんびりと過ごしていると、突然ドンドンドン!と乱暴に玄関の扉が叩かれる音が聞こえた。

「何かしら?」

ぞろぞろと四人並んで玄関へ向かうと、軍服を着た人たちが私の家を包囲していた。
しん、と静まり返った彼らはピクリとも動かない。

お茶が出てくるのを待っているのかしら?出さないわよ!

明らかに私達より高位の貴族だ。そう簡単には追い出せない。
仕方なく玄関を開けると、靴のまま無遠慮に中に入って来た。

泥くらい落としてから来て欲しいわ!貴族でしょ!


「失礼」

失礼するなら、帰って頂戴!

キッと強く睨みつける。
ネルが私を庇う様に前に出た。

ネルさん、やっておしまい!
この貴族たちに一泡吹かせてやるのよ!

と心の中で応援する。

彼らの中でもとりわけ豪華な、幾つもの勲章を付けた男が一歩前に出る。
後ろで手を組み、ネルを見据えて良く通る声で言った。

「アルヴィス・ルクレール、貴殿の帰国を命令する」

アルヴィス。聞き慣れない名前だ。

けれど、それがネルの本当の名前なのね。

本当はネル本人の口から聞きたかったのだけれど。

それに、なによ、アルヴィスって。ネルの方がよっぽど似合ってるじゃない。

軍服の男に目を合わせる。
詰まるところ、彼らはネルを取り返しに来た何処かの大きな国の貴族達って事ね。

あれだけ派手に魔法を使ったのだから、遠からずバレてしまうとは思っていた。
こんなにも早いとは思っていなかったけれど。

「絶対嫌。無理」

断固拒否!という感じでネルが男の要求を突っぱねる。
当然だ。ネルはずっと帰りたくないと私にしがみ付いていたのだから。

「この土地を焼け野原にしたくは無いでしょう?」

諦めの悪い男がネルを脅す。

しつこい男は嫌われるわよ!まあ、もう既に嫌いだけども。
あんたなんか嫌い!つーん!!

しかし、彼らは大魔法使いと言う生ける最強兵器を取り戻すためなら何でもするつもりだ。

まるでネル以外は話す価値すらないという雰囲気の男。

父と目を合わせ、二人で頷いて仁王立ちで前に出る。

「ちょっと、私達を忘れてない?」

バーン!と父と二人でネルの前に立つ。

私だって、守られてばかりじゃないんだから!

ね!っと言いながら隣を見たら、お父さんの足がガクガクと震えている。顔面は蒼白で今にも倒れそうだ。

もう、お父さん!!小心者の癖に出しゃばるからよ。

父を下がらせ、私だけでネルの前に立ち、軍服の男を睨みつける。

そこで、ようやく、彼が目で私を認識し、「ああ」と呟いた。

「・・・彼を救ってくれた事には感謝いたしますが、この件にはもう口を挟まない方が良いかと」

冷たくそう言って、もう話す事は無い。とばかりに視線をネルに移す。

「出来る訳無いじゃない!ネル、アルヴィスは私たちの大切な家族よ!」

尚も、私は食い下がる。

後ろで震えてる父とは違うのよ!ネルは私が守るんだから!

もし、この土地を燃やされても、また新しい場所を開拓していけばいい。
でもネルは、私の番は一人しかいないのだから。

「俺は行かない。リリィと一緒にいる」

私の隣に来たネルが私の手に自分の手を絡めそう言い切る。
ネルの鼓動が聞こえてくる気がして安心する。

すりっと私にすり寄り甘えるネル。
ちょっとここでは恥ずかしいわ。

「そうよ!ネルから私を取ったら、泡になって消えちゃうかもしれないんだから!」

その様子を見た男は、お揃いのブレスレットが光る絡んだ手を見つめ、「なるほど、そういう事ですか」と言った。

そして、諦めたかのように肩を竦め、背を向けた。

やーいー、やーい!戦う相手を間違えたわね!この間抜け!おとといきがれー!とその背中に心の中で罵声を浴びせる。

しかし、彼は少し振り返りながらとんでもないことを言い始めたのである。

「では、私たちはここで待たせてもらいます。・・・あなたの決意が変わるまで」

そう言って、男は近くにいた別の男に声をかける。

「は!!」

と喋りかけられた軍人が敬礼したかと思うと、私の家の隣で野営をする準備を始めた。

な、なんでですって!用事はもう済んだでしょ!早く帰りなさいよ!あったかハイムが待っているわよ!
それとも、バーベキューにでも誘ってくれるのかしら?

「俺は絶対行かない。お前たちのいう事はもう聞かないよ」

絡んだ手にぎゅっと力が込められる。

軍人の男はそれを見て、にやりと不吉に笑った。

「そうでしょうか?・・・きっと、その選択を後悔する日が来ますよ」

なによ、このジャガイモ男!本当は困って困って仕方がないんでしょ!

負け犬の遠吠えはやめなさい。惨めだから!

と思いながらも、どこか嫌な予感がする。嵐が来る前の日みたいな気分だ。

ネルは、去って行く男を見据えて言った。

「後悔なんてしない。するはずがない」
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