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4 推し
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「だ、大丈夫れふ…」
あふれ出そうになる鼻血を必死に抑える為に、推しから目を逸らしながら答える。
その動作に、オリバーがはっとした顔になると、まるで可愛い小動物を驚かせてしまったかのような気の毒な顔を浮かべた。
「あ、すみません。急に手を差し伸べたらびっくりしますよね」
大変申し訳なさそうにオリバーの手が離れていく。
名残惜しい。と思うより早く、気が付いた時にはオリバーの手に自分の手を重ねていた。
手袋越しにオリバーの体温が伝わってきて、体中の血が沸騰している気がする。
「いいえ!そんな事ありません。助かりました」
オリバーの手を借りて立ち上がる。
(困っている人を助けずにはいられない。そんなあなたに私は何回も救われてきました。
病める時も、健やかな時も、あなたは私の希望であり、生きる糧でした)
言葉にはできないけれど、あなたは私にとって太陽なんです。と祈りを込めてオリバーを見つめる。
私の目を見てオリバーは微笑んだ。
今まで見てきたどんなスチルよりも美しく、私の胸を打った。
(オタク人生に一生の悔いなし)
もうここで死んで良いとすら思ったけれど、私には推し活があるのだ。
「顔色は悪くは無いですね。
急に地面に蹲られたから驚きました。本当にどこも悪くないのですね?」
「ご迷惑をおかけしてすみません。すごくその…緊張してしまって」
あなたに会うのに。と裏で付け加える。
「そうでしたか、では、緊張をほぐすおまじないを教えてあげますね」
くすりと笑って、オリバーは私の手のひらの上で指で文字を作る。
「さあ、呑み込んで」
その言葉に導かれるように。私はオリバーが書いてくれた文字を呑み込んだ。
なんてことない。ただのプラシーボ効果だ。
でも、オリバーがしてくれたと思うだけで不治の病すら治す秘薬のように思える。
心がすっと落ち着いていくのを感じた。
「落ち着きましたか?」
オリバーが悪戯っぽく笑う。
「はい、お陰様で」
オリバーに微笑みかける。
なんて不思議な人なんだろう。本当に緊張が解れてしまった。
「ああ、そうだ。申し遅れました。僕は王国騎士団の団員で、オリバー・レバンスと言います」
「初めまして、エリザベス・カリディウスです」
「カリディウス侯爵令嬢でしたか。ここで出会ったのも何かの縁ですから、会場までエスコートさせてください」
「ええ、喜んで」
今度は自然にオリバーの手を取る事が出来た。
そして一歩足を前に踏み出す。耳にようやく周囲の喧騒が戻ってきて、ああ、こんなにも騒がしかったのかと気が付いた。
重なる指を眺める。大きくて、優しい暖かな手。
(大丈夫。あなたは私が守るから)
大きなアーチ状の門を通り、広い庭園を抜けていく。
オリバーはその道中も様々な話を私にしてくれた。
庭園に咲く花の種類や、友達の失敗話。
どれもが面白くて、飽きが来ない。
あっという間に城前へと辿り着いてしまった。
あふれ出そうになる鼻血を必死に抑える為に、推しから目を逸らしながら答える。
その動作に、オリバーがはっとした顔になると、まるで可愛い小動物を驚かせてしまったかのような気の毒な顔を浮かべた。
「あ、すみません。急に手を差し伸べたらびっくりしますよね」
大変申し訳なさそうにオリバーの手が離れていく。
名残惜しい。と思うより早く、気が付いた時にはオリバーの手に自分の手を重ねていた。
手袋越しにオリバーの体温が伝わってきて、体中の血が沸騰している気がする。
「いいえ!そんな事ありません。助かりました」
オリバーの手を借りて立ち上がる。
(困っている人を助けずにはいられない。そんなあなたに私は何回も救われてきました。
病める時も、健やかな時も、あなたは私の希望であり、生きる糧でした)
言葉にはできないけれど、あなたは私にとって太陽なんです。と祈りを込めてオリバーを見つめる。
私の目を見てオリバーは微笑んだ。
今まで見てきたどんなスチルよりも美しく、私の胸を打った。
(オタク人生に一生の悔いなし)
もうここで死んで良いとすら思ったけれど、私には推し活があるのだ。
「顔色は悪くは無いですね。
急に地面に蹲られたから驚きました。本当にどこも悪くないのですね?」
「ご迷惑をおかけしてすみません。すごくその…緊張してしまって」
あなたに会うのに。と裏で付け加える。
「そうでしたか、では、緊張をほぐすおまじないを教えてあげますね」
くすりと笑って、オリバーは私の手のひらの上で指で文字を作る。
「さあ、呑み込んで」
その言葉に導かれるように。私はオリバーが書いてくれた文字を呑み込んだ。
なんてことない。ただのプラシーボ効果だ。
でも、オリバーがしてくれたと思うだけで不治の病すら治す秘薬のように思える。
心がすっと落ち着いていくのを感じた。
「落ち着きましたか?」
オリバーが悪戯っぽく笑う。
「はい、お陰様で」
オリバーに微笑みかける。
なんて不思議な人なんだろう。本当に緊張が解れてしまった。
「ああ、そうだ。申し遅れました。僕は王国騎士団の団員で、オリバー・レバンスと言います」
「初めまして、エリザベス・カリディウスです」
「カリディウス侯爵令嬢でしたか。ここで出会ったのも何かの縁ですから、会場までエスコートさせてください」
「ええ、喜んで」
今度は自然にオリバーの手を取る事が出来た。
そして一歩足を前に踏み出す。耳にようやく周囲の喧騒が戻ってきて、ああ、こんなにも騒がしかったのかと気が付いた。
重なる指を眺める。大きくて、優しい暖かな手。
(大丈夫。あなたは私が守るから)
大きなアーチ状の門を通り、広い庭園を抜けていく。
オリバーはその道中も様々な話を私にしてくれた。
庭園に咲く花の種類や、友達の失敗話。
どれもが面白くて、飽きが来ない。
あっという間に城前へと辿り着いてしまった。
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