イーヴィル・アビス

ノレクス

文字の大きさ
4 / 18
第0章 エターナル・オリジン

旧き戦争よ永遠なれ

しおりを挟む
 その日もまた、絶望の淵に堕ちた人間を嗤う。最高傑作だ。全てを捨てて戦う人間もいれば、夢敗れて死にゆく者たちもいる。誇りを捨てきれずに自害する者たちだっている。果てに待つのは死か夢か。ほかの選択肢は一切ない。
 あぁ......見ているだけで良いんだ。いや、見ているのが良いんだ......。
 人間の惨めな姿を見る時の興奮と疼きをいつまでも噛み締めていたい......!
 そんな僕の思いはこの戦争が続く限り叶い続ける。これからも退屈する予定はない。
 それにしても人間というのは儚い生き物だね。少しのチャンスと大きなアドバンテージさえあればそれを動力に動くこと自体はできる。だけどやがて、体は欲望についていけなくなる。そして結局、強欲に耐えかねた身体は滅びるんだ。
 人間なんて、これの繰り返しだろう?だからせめて生きてるうちに、人間らしい生き方をさせてやろうと思ったのさ。
 ......粋な計らいに感謝します神様ってくらい崇め奉られても誰も文句言わない働きをしたと思うんだけど。どうかな?
 たった数回の願いのために、最後の一人に生き残るため潰しあうさまは、いつの時代も僕を楽しませてくれる。
 だけど君たちの中には争いの火種は僕にあると言うけれど、結局奪い合おうと考えたのは君たち自身じゃないかい?自業自得って言うんだぞ。そういうのは。それに、これを僕のせいにされても僕にはどうしようもない。仮に僕に責任があったとしても、僕はその責任を背負う気なんてないんだけど。
 なんてったって僕には、千の顔がある。責任を逃れるのは朝飯前さ。そりゃあ少女に化けては魔術師を騙したり、自分の化身を世に誕生させるためのアーティファクトに細工して戦争の火種を作ったり、はたまたその戦争を見て楽しんでる。なんてこともあった。それは認めよう。
 でも今は、ただ外から見てるだけなんだからいいじゃないか。
 人間たちには僕たち神の理解を超えた感情がいくつも備わっている。ならその"感情"をフルに使ってから死んで欲しいんだ。精魂尽き果てる感じで。
 なんでって?だってそっちの方が、ただ死なれるより死に際が面白いからね。
 あぁでも勘違いしないでくれよ。僕は神々の魂たる存在さ。その僕が望んでいるこの戦争はすなわち、神々も本能的に望んでいた戦争さ。
 君たち人間は神を信仰するだろう。困った時に助けてもらうために。その神が望んで行ったことを間違いだと、本当に言い切れるのかい?
 つまり、人間が神を信じている限り、戦争が起きるのは神々の決定事項にすぎなかった。それをいつ始めようが、我々神の勝手だろう?
 故に人間たちよ、僕が成すことは全て神の恵みなのだよ。
 人間ごときがこの恵みに感謝して信仰するどころか、拒絶するだなんて信じられない。
 ──信じない。
 人間ごときが僕の生み出す芸術を穢すような横暴をはたらき、冒涜することなど許されない。
 ──許さない。
 そのはずだった。人間たちは僕ら神々の御心のままに奉仕する下等な種族のはずだった。
 わざわざそんな下等種族を模倣し、演じて、今に至るまで人間の欲望が生み出す争いを観察してきた。そして戦争の火種を継ぎ足しながら醜く争わせ続けた。
 でも、始まったものにはいつか終わりが来るものだろう?だから僕は、最初に戦争の火種を落とす時に、地球が滅ぶまでこの星から無くならないものを戦争の火種にして仕舞えばいいと考えた。
 ──それが「欲望」。
 最近では世界的な戦争は無くなってしまった。でも、ある水面下ではまだ戦争が続いていた。まるで戦争することが伝統のような種族がちょうどよくいたみたい。
 ──それが召喚士。
 でも僕は、どんな形であってもこの戦争さえ続けば、それで良かった。どんなに小さくなっても、僕が作ったものを奪い合って争ってくれるならそれでよかった。
 なのにその召喚士の一人が、戦争を終わらせようとしてるせいで、どうやら見ているだけではいけなくなった。
 ──また、唆さなきゃ。
 欲望まみれのくせに、欲望が支配する戦争を終わらせようとする召喚士を僕は哀れんだ。僕はその愚かな召喚士と遊んでやることにした。生涯をかけて僕のおもちゃになってくれる彼には感謝しているよ。
 永遠に終わらないこの戦争で、人間の終わりを見るのが僕の楽しみ。だからせめて、狂気に染まり、足掻いて死んでくれ。そして永遠に終わらない戦争を見せてくれ。
 期待してるよ......。疾くん。

 ......と言った流れなんだよ、理解できた?この0章の語り部は全部僕だったのさ。どう?疾くんの演技、上手かったでしょ?
 本物の疾くんが見れるのは本編からってね。え、本編ってなんのことかって?やだなぁ、わかってるくせに。
 これから巻き起こるであろう戦争の全貌さ。主催者の僕と一緒にこの永遠なるエンターテイメントを楽しもうじゃないか!
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...