5 / 18
第1章 欲望の目
仮面の召喚士
しおりを挟む
春先の宵。
月明かりに照らされた桜並木が幻想的に煌めいていた。最近できた"いつもの"帰り道。
「変なこと聞くようだけど......あなた、本当に召喚士なの?」
目元が隠れ口の見える、白黒で月と太陽が描かれた仮面。紺や黒、灰色の布がつぎはぎになっているローブで体全体を纏っていて、顔の全貌と体の線は見えなかったが、おそらく俺より少し幼い年の女の子の声だった。
「いや、召喚士の家系で生まれ育ったほとんど術の使えない一般人だ。どうか見逃してくれよ。」
俺はコンビニで温めてもらった弁当と500mlの烏龍茶の入ったレジ袋を地べたに置くと、両手を挙げた。お腹すいた......。
彼女は術の展開のために伸ばした手を降ろしたて、こちらへと近づいてくる。
「お、おい。なんで近づいて来るんだよ......?だから俺は戦うつもりは......」
「黙ってて。今考えてるの!」
彼女はその低い背丈をぐーんと伸ばして俺の顔を見ていた。仮面の目のくり抜き穴からでも目の色が分かる。それほどに彼女の目は純白で、輝いていた。まるで今日の月を嵌め込んだみたいだ。
やがて何かに納得した様子の少女は、ため息をついた。
「あなた、どこの流派?」
──カルト。俺たち召喚士が呼び寄せる怪異や怪物、現象などの系統の総称を指す言葉だ。だが、召喚士の基礎をマスターした程度で止まっている俺には、カルトなどなかった。
「流派?......ない。」
「はぁ!?ないわけないでしょうよ。いいから教えなさいよ!」
「だからないんだって。流派。俺ができる召喚術はせいぜい見覚えあるものを手に引き寄せる基礎だけ。」
俺が地べたに置いておいたレジ袋から、弁当を手に手繰り寄せて見せると、彼女は呆然と立ち尽くしていた。「基礎の基礎じゃない......。」と、そういいながらこちらを見つめていた。
俺が今、生きるためには命乞いをするしかないのだ。──俺は彼女をどうにか説得しようと、頭の中で考えを巡らせた。
だが彼女は戦意喪失したらしく、小声で何か言っていた。
「言いたいことがあるならハッキリ言ってもらえるか?俺、早く帰りたいんだ。」
そう言うと彼女は声を張り上げ、仮面を被っているとは思えないほど大きな声を出した。──守ってやるから名前を教えろ。
「満咲だ。でも守ってやるって言われても、お前になんの利が......」
「うるさい黙れ。それより下の名前。」
疾だ、と名乗ると、彼女も霧宮 悠とだけ返して喋らなくなった。──その数秒後。彼女の気持ちを代弁すべく、彼女のお腹が大きな音を立てて唸った。
「まぁ俺の家来い。飯食わせてやるから。」
「疾。今、お腹が鳴ったことは速やかに忘れろ。でなければ即刻殺す。」
恥ずかしそうに俯きながら話す彼女を見て安心したが、守るって言ってみたり殺すって言ってみたり忙しいやつだ。
「わかった。で、家には来るのか?来ないのか?」
「お呼ばれしてあげる。」
たしかに召喚術では敵いはしないが、年上にその態度はこれからの生活できっと災いを呼ぶぞ。と、そう思いながら手に持った弁当を地べたに置いたレジ袋にしまって歩き始めた。
「──んで、本当に俺を守ってくれんのかよ?」
「仕方ないわね。ただ、敵になるようなら即刻殺すから。」
そう言った彼女の表情は仮面でわからなかったが、どことなくにっこりと微笑んでいたように感じた。
月明かりに照らされた桜並木が幻想的に煌めいていた。最近できた"いつもの"帰り道。
「変なこと聞くようだけど......あなた、本当に召喚士なの?」
目元が隠れ口の見える、白黒で月と太陽が描かれた仮面。紺や黒、灰色の布がつぎはぎになっているローブで体全体を纏っていて、顔の全貌と体の線は見えなかったが、おそらく俺より少し幼い年の女の子の声だった。
「いや、召喚士の家系で生まれ育ったほとんど術の使えない一般人だ。どうか見逃してくれよ。」
俺はコンビニで温めてもらった弁当と500mlの烏龍茶の入ったレジ袋を地べたに置くと、両手を挙げた。お腹すいた......。
彼女は術の展開のために伸ばした手を降ろしたて、こちらへと近づいてくる。
「お、おい。なんで近づいて来るんだよ......?だから俺は戦うつもりは......」
「黙ってて。今考えてるの!」
彼女はその低い背丈をぐーんと伸ばして俺の顔を見ていた。仮面の目のくり抜き穴からでも目の色が分かる。それほどに彼女の目は純白で、輝いていた。まるで今日の月を嵌め込んだみたいだ。
やがて何かに納得した様子の少女は、ため息をついた。
「あなた、どこの流派?」
──カルト。俺たち召喚士が呼び寄せる怪異や怪物、現象などの系統の総称を指す言葉だ。だが、召喚士の基礎をマスターした程度で止まっている俺には、カルトなどなかった。
「流派?......ない。」
「はぁ!?ないわけないでしょうよ。いいから教えなさいよ!」
「だからないんだって。流派。俺ができる召喚術はせいぜい見覚えあるものを手に引き寄せる基礎だけ。」
俺が地べたに置いておいたレジ袋から、弁当を手に手繰り寄せて見せると、彼女は呆然と立ち尽くしていた。「基礎の基礎じゃない......。」と、そういいながらこちらを見つめていた。
俺が今、生きるためには命乞いをするしかないのだ。──俺は彼女をどうにか説得しようと、頭の中で考えを巡らせた。
だが彼女は戦意喪失したらしく、小声で何か言っていた。
「言いたいことがあるならハッキリ言ってもらえるか?俺、早く帰りたいんだ。」
そう言うと彼女は声を張り上げ、仮面を被っているとは思えないほど大きな声を出した。──守ってやるから名前を教えろ。
「満咲だ。でも守ってやるって言われても、お前になんの利が......」
「うるさい黙れ。それより下の名前。」
疾だ、と名乗ると、彼女も霧宮 悠とだけ返して喋らなくなった。──その数秒後。彼女の気持ちを代弁すべく、彼女のお腹が大きな音を立てて唸った。
「まぁ俺の家来い。飯食わせてやるから。」
「疾。今、お腹が鳴ったことは速やかに忘れろ。でなければ即刻殺す。」
恥ずかしそうに俯きながら話す彼女を見て安心したが、守るって言ってみたり殺すって言ってみたり忙しいやつだ。
「わかった。で、家には来るのか?来ないのか?」
「お呼ばれしてあげる。」
たしかに召喚術では敵いはしないが、年上にその態度はこれからの生活できっと災いを呼ぶぞ。と、そう思いながら手に持った弁当を地べたに置いたレジ袋にしまって歩き始めた。
「──んで、本当に俺を守ってくれんのかよ?」
「仕方ないわね。ただ、敵になるようなら即刻殺すから。」
そう言った彼女の表情は仮面でわからなかったが、どことなくにっこりと微笑んでいたように感じた。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる