イーヴィル・アビス

ノレクス

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第1章 欲望の目

月に吠える夜の化身

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 しかし、久しぶりにテレビをつけた。いつもなら暇で寝てしまっている午後10時。この時間帯のテレビは一部の層が喜びそうな、準メジャーな番組が多い。
「──こんなの誰が買うんだよ!」
「──これ美味いっすね!」
「──私ぃこういう飾り好きじゃなくてぇ」
 ピッピッと番組をコロコロ変えて面白そうな番組を探すが、なんだかどれにも興味を惹かれない。
俺は大きなため息をつきながら、かいていたあぐらを解き、足を伸ばして腕を頭の下に敷いて寝転がった。
 それにしてもダオロス、ノーデンスの流派を持つ奴等の戦いは凄まじかった。怪我なく事なきを得てほっとしているとある情景が蘇った。
 ──怪我。そうだ、彼女の指にはあの仮面でつけた傷がある。
 俺は急いで飛び起きると、お風呂上がりにすぐ治療できるようにキッチン近くにあるタンスから小さい救急箱を取り出した。
 中身が全て入っていることを確認した俺は、仮面の血を拭き取る物も必要だよなと思い立ちウェットティッシュのある玄関まで足を運んだ。
 さて、これで一通り彼女が帰ってきた後の処置は出来るだろう。
俺はリビングに戻ろうと振り向くと、得体の知れない人物が、そこにはいた。見たところ悠と同年代くらいか、それより少し上の、蒼く輝く目と毛先に入った赤色が特徴的な少女だった。
「だ、誰だお前!どうやって入った!」
 彼女は自慢げな顔をしながら腕を組む。
「やぁやぁ。直接会うのは初めてかな!?こんばんは疾くん!──」
 俺の名前を知っている。誰だ。こいつも召喚士か?素早く腰を下げて身構える。だが、交戦できる状況でも場所でもない。
「──そう構えるなよ。僕はちょっと自己紹介しにきただけさ。
改めてこんばんは!僕の名前はニャルラトホテプ。この戦争の根源にして監視者さ。」
 俺は奴の一人称と正体に驚きを隠せなかった。こいつが──
「──お前が......俺の大切なものを奪ったのか!!」
 俺は冷や汗をかき、震えていた。噴き出すような衝動に抑えが効かなかったのだ。
「おいおい。よしてくれよ。僕は願いを叶えるダイスを人間にくれてやっただけ。それを奪い合ったのは人間じゃないの。」
 あくまでこの戦争は自分のものではないと言い張る奴に俺はさらに激情した。俺が掴みかかろうと手を前に出すと奴は俺を嘲り「面白くなりそう」とだけ俺の耳に囁くと体を光の粉のようにして消えてしまった。
 俺は掴みかかろうとした勢いが止められず、体の重心を支えきれなかった。
 ──その時。
「何事よ。こんな夜中にセールスでも......」
 俺はいきなりドアを開けて出てくる彼女に、しかもよりによって胸に、勢いあまってに飛び込んだ。風呂上がりで火照った温度をバスタオル越しで感じるが、それを差し引いてもこの殺気によって感じる寒気は人智を超えていた。
「あんたねぇ......!?」
 歯軋りしながら苛立つ彼女の体から、比較的速やかに遠ざかり弁解をはかる。
「あ、あの......霧宮さん?わざとじゃな......うぐっ!」
 俺の脳天にかなりの勢いで振り下ろされたグー。しかも、手の甲の骨を頭蓋骨に食い込ませるようなグー。俺は意識が薄れゆくなか、彼女の怒号を聞いたのだった......。
 ちらっとだけ見えた仮面の内側はとても子供らしく、それでいてとても可憐だった。ような気がする。
 ──そうして俺は気を失った。
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