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第1章 欲望の目
欲が叶えば
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──どこだ。
俺はひたすらに上下左右を見回し、術者を探す。
「人間の肉眼なんかに頼ってる内はまだまだだよ。疾くん。」
目の前には少女の姿をしたニャルラトホテプ。奴は逆光に照らされていて姿をしっかり捉えることは出来なかったが、鮮やかな装飾品だけが光り輝いていた。
さっきの『後でね』って言葉に引っかかっていたが、こういうことか。
つまりこいつはこの事態について何か知っていて、その事態に気づかない俺を嘲笑ってたのか。
「お前、なんでさっき『後でね』なんて言ったんだ?」
俺は自分の推測が正しいかの判断も兼ねて彼女に問う。
「あとあとアドバイザーが必要になるかと思ってね。なんせ今日ここで、召喚士たちが戦うことを僕は知っていたから。もちろん今日戦うのは君じゃないよ。」
加えて「それを生で見物しにね。」と言った彼女は、俺からの返事を待つようにして黙った。
「おい待てよ。召喚士は世界中に散らばってんだぞ!?日本に、それもこんな学校一つにそんなに集まるかよ!」
俺は昨日から不思議でならなかった。世界各国に散らばっている流派の使者がこうも日本に集まるなんて。
しかもこの学校の近辺には、俺を含め5人もの召喚士がいることになる。
「知ってるかい?僕のダイスを振った時に術者が立っていた地点は宇宙と一時的に繋がるんだ。その地点に出来る非常な歪み。言うなれば亜空間。それが──」
「──旧き深淵、だろ。」
ニャルラトホテプは言いたいことを取られて少し不満そうな顔をしていたが逆光でよく見えなかった。俺は奴から目線を1秒たりとも目線を離さずに奴の言葉を待つ。
「──勉強熱心で何よりだね。でも、その深淵が何を成すのか。それを君は知らない。もっとも、知る事などないだろうけどね。」
奴はそういうと、砂埃を立てて消えてしまった。......消え方、多種多様すぎるだろ。
旧き深淵については文献がなく知識は名前止まりだが、何か伏せなければならない理由でもあるのだろうか。
「何にせよ、今日起こるであろう戦いに一般人は巻き込めないな。せめてどこで戦うか分かればなぁ......。」
俺は遠い目をして独り言を吐くと、パンパンと顔をはたき気合いを入れ直した。
今は過去の感傷に浸っている暇はない。多大な犠牲を払って守ってもらったこの命に大きな責任を感じながらまずは心残りを片付けることにした。
俺は走った。このままじゃきっと後悔するから。俺が食堂に着くと、彼はまだそこにいた。
「──すまなかった護啓!俺、自分ばっかり見てた。別れが辛いのは俺だけじゃない『友達』や『家族』なら当然だ!」
俺は食堂の角で座る護啓に駆け寄り、腰を曲げ深々と頭を下げた。
「あぁ、だから?」
「......え?」
奴は冷たく俺をあしらい、アイスコーヒーを一口飲む。その様子を見て俺はもう一度頭を下げようとした、その時。俺の頭は下がらなかった。護啓が俺の頭を押さえたのだ。
「それがどうしたんだよ。頭を下げずに、目を合わせて言ってみろ。」
彼の口調や雰囲気は非情にもどんどん冷徹なものになっていく。
俺は心のつっかえになっていた言葉を素直に吐き出す。
「俺と......友達になってくれ。」
俺は自分から友達になろうと提案するのは初めてで、声が震えていた。
彼は俺の頭を押さえつけていた手を俺の髪にまで伸ばした。そして髪をわしゃわしゃと撫でる。
「おう!よろしくな!」
彼はいつも通り満面の笑顔をこっちに向けて、明るい声で返事をした。
──きっとこれが彼の"当たり前"なのだろう。
俺は恥ずかしさと嬉しさのあまり、年甲斐もなく泣き崩れてしまった。
そんな俺を見て護啓は「冷たくしてごめん!ごめんて!まさかそんなに辛いとは思わなくて!」
いや、違うんだ。これは辛かったからの涙なんかじゃない。きっと今まで強がって、誰にも伝えられなかった──
「──ありがとう」
「うん。どういたしまして。」
俺は俺を友達と呼んでくれた友達を、彼を守るために強くなろうと心に誓ったのだ。
俺はひたすらに上下左右を見回し、術者を探す。
「人間の肉眼なんかに頼ってる内はまだまだだよ。疾くん。」
目の前には少女の姿をしたニャルラトホテプ。奴は逆光に照らされていて姿をしっかり捉えることは出来なかったが、鮮やかな装飾品だけが光り輝いていた。
さっきの『後でね』って言葉に引っかかっていたが、こういうことか。
つまりこいつはこの事態について何か知っていて、その事態に気づかない俺を嘲笑ってたのか。
「お前、なんでさっき『後でね』なんて言ったんだ?」
俺は自分の推測が正しいかの判断も兼ねて彼女に問う。
「あとあとアドバイザーが必要になるかと思ってね。なんせ今日ここで、召喚士たちが戦うことを僕は知っていたから。もちろん今日戦うのは君じゃないよ。」
加えて「それを生で見物しにね。」と言った彼女は、俺からの返事を待つようにして黙った。
「おい待てよ。召喚士は世界中に散らばってんだぞ!?日本に、それもこんな学校一つにそんなに集まるかよ!」
俺は昨日から不思議でならなかった。世界各国に散らばっている流派の使者がこうも日本に集まるなんて。
しかもこの学校の近辺には、俺を含め5人もの召喚士がいることになる。
「知ってるかい?僕のダイスを振った時に術者が立っていた地点は宇宙と一時的に繋がるんだ。その地点に出来る非常な歪み。言うなれば亜空間。それが──」
「──旧き深淵、だろ。」
ニャルラトホテプは言いたいことを取られて少し不満そうな顔をしていたが逆光でよく見えなかった。俺は奴から目線を1秒たりとも目線を離さずに奴の言葉を待つ。
「──勉強熱心で何よりだね。でも、その深淵が何を成すのか。それを君は知らない。もっとも、知る事などないだろうけどね。」
奴はそういうと、砂埃を立てて消えてしまった。......消え方、多種多様すぎるだろ。
旧き深淵については文献がなく知識は名前止まりだが、何か伏せなければならない理由でもあるのだろうか。
「何にせよ、今日起こるであろう戦いに一般人は巻き込めないな。せめてどこで戦うか分かればなぁ......。」
俺は遠い目をして独り言を吐くと、パンパンと顔をはたき気合いを入れ直した。
今は過去の感傷に浸っている暇はない。多大な犠牲を払って守ってもらったこの命に大きな責任を感じながらまずは心残りを片付けることにした。
俺は走った。このままじゃきっと後悔するから。俺が食堂に着くと、彼はまだそこにいた。
「──すまなかった護啓!俺、自分ばっかり見てた。別れが辛いのは俺だけじゃない『友達』や『家族』なら当然だ!」
俺は食堂の角で座る護啓に駆け寄り、腰を曲げ深々と頭を下げた。
「あぁ、だから?」
「......え?」
奴は冷たく俺をあしらい、アイスコーヒーを一口飲む。その様子を見て俺はもう一度頭を下げようとした、その時。俺の頭は下がらなかった。護啓が俺の頭を押さえたのだ。
「それがどうしたんだよ。頭を下げずに、目を合わせて言ってみろ。」
彼の口調や雰囲気は非情にもどんどん冷徹なものになっていく。
俺は心のつっかえになっていた言葉を素直に吐き出す。
「俺と......友達になってくれ。」
俺は自分から友達になろうと提案するのは初めてで、声が震えていた。
彼は俺の頭を押さえつけていた手を俺の髪にまで伸ばした。そして髪をわしゃわしゃと撫でる。
「おう!よろしくな!」
彼はいつも通り満面の笑顔をこっちに向けて、明るい声で返事をした。
──きっとこれが彼の"当たり前"なのだろう。
俺は恥ずかしさと嬉しさのあまり、年甲斐もなく泣き崩れてしまった。
そんな俺を見て護啓は「冷たくしてごめん!ごめんて!まさかそんなに辛いとは思わなくて!」
いや、違うんだ。これは辛かったからの涙なんかじゃない。きっと今まで強がって、誰にも伝えられなかった──
「──ありがとう」
「うん。どういたしまして。」
俺は俺を友達と呼んでくれた友達を、彼を守るために強くなろうと心に誓ったのだ。
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