イーヴィル・アビス

ノレクス

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第1章 欲望の目

死霊を醒す唄

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 俺は唸る獣がたどったルートを追いかけながら、「結局あのモヤはなんだったのか」と屋上で見たあの仄暗い霧のようなものについて考えていた。
「あいつ......速すぎるだろ......ハァ、ハァ......追いつけない......。」
 俺は、何かを探すように辺りを見渡しながら高速で走る毛むくじゃらを全力で追う。だが、俺にも体力の限界が近づいていた。
「グルルガウア!!ググゥ......!」
 当の毛むくじゃらはまだまだ活力旺盛で、このまま純粋に追いかけていてはこれ以上近づくことができないだろう。だが、考えることが整理しきれていないせいで、奴を不意打ちで捕まえる術など考えている暇はなかった。
 予定変更。怪物がB棟へ走っていったところを見るに、B棟には必ず何かがあると断定していい。なら、追いかけるよりもB棟で俺も術者や陣を探せばいい。
 B棟は何故か、およそ半数の教室が男子禁制なのである。4階まである教室の2階までは男女問わず入れるのだが、3階からは男子が入れないようになっている。
「チッ。結局どんなに推測出来ても3、4階は見て回れないじゃねえか!!」
 俺はとりあえずB棟の入れる範囲であの毛むくじゃらを歩いて探した。多分だがニャルラトホテプが言っていた「今日ここで起きる戦い」っていうのはあの毛むくじゃらとあの霧の怪異の戦闘で間違いないだろう。
 B棟の各階講義室にはピアノが設置されているのだが、これは人が弾くものではない。ある一定の時間になると一斉に違う音が鳴る。その音が重なりあうことで、一つの曲が完成する。
 曲名は確か......ん?ド忘れしてしまった。だが、どこかの宗教で主が復活する日をイースターと呼び、それに用いられる曲だったはず。入学式の時に聞いた話で直近までおぼえていたのだが。
 というか、毎日朝、昼、夕の3回学内全体に聞こえるほどの爆音で流れている。毎日聞いていても曲名を忘れたのだが。
 俺はB棟の全て(こっそり男子禁制の方にも入って)見回りを終えたが結局、術者や陣どころかあの怪物すら見つからなかった。
「特に争った形式もない......と。いったいどこにいるんだよ。」
 俺は全ての教室をまわったが、それでなお見つからないので少し焦っていた。もし、講義終わりの不特定多数が散乱する時間帯にあんなのが暴れたら、そう考えただけでゾッとする。
 俺は一旦B棟の外に出ると、また学内マップを見に走った。すると遠くから"あの音楽"が聞こえてくる。
「あぁ、もう昼かよ。霧宮には午前中に帰るって言っちまったし。起こってるだろうな......」
 俺は家に残してきた霧宮のことを不安に思いながら掲示板に向かった。
 それにしても、おかしい。何故、昼なのにだれもいないんだ。B棟にも確かに人がいなかった。
 俺は護啓の講義のあるA棟の4階へと足を運んだ。階段を登りきり、廊下を右に曲がった時。そこで俺は校舎を徘徊する半透明な、"人間ではない何か"を見てしまった。それはみる限り「幽霊」と言っても差し支えのない容姿だった。
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